第30話 幼馴染の告白

「離せよ……話辛いだろ」

「い・や・だ。幼馴染の大きな胸で癒されなさい」

「おい……」


遥は俺の頭をガッチリ掴んで離さない。

柔らかい胸に顔が埋まって、めっちゃくちゃ気持ちいいのは本当だ。

少し汗ばんだ遥から、懐かしい匂いがする。

……すげえ落ち着く。


「よちよち。幼馴染に全部話してごらん」


遥は優しく俺の頭を撫でた。

昔は立場が逆だった。

近所の男の子にイジメられて泣いていた遥の頭を、よく俺が撫であげていた。


「……話したくない?無理しなくていいよ」

「うん……」

「ずーと、こうやってあげるから」


心がぐしゃぐしゃになりそうだ。

何もかもぶちまけて、遥の胸の中で泣きたかった。

でも……そこまでヘタレにはなれない。


「……どうしてだよ?」

「え?」

「どうして俺をハメたんだよ。俺は遥が好きだったのに」

「陰キャの翔をハメて動画を撮ろうって、グループの1人だ言い出して。それからどんどんノリでやることになってさ。もしやらなかったら、あたしが仲間はずれにされるから。それが、怖くて……」


なんて酷い理由なんだ。

そんなことで俺を……


「……自分勝手すぎる。お前はクズだよ」

「うん。クズだね。あたしはクズだ。でも、あれからすごく後悔したの。大好きな翔に嫌われちゃったて」

「実際、嫌いになった」

「ごめんね……」


俺の頬が濡れた。

遥が……泣いている。

泣くのを見るのは、小学生以来だ。


だけど、俺は追い打ちをかける。


「俺に優しくしてるのは、俺がVでバズったからだろ。もし俺がただの陰キャだったら、お前は今こうしてない。そうだろ?」

「信じて。あたしはずっと翔が好きだったから」

「信じられない」

「お願い……」


遥の身体が震えた。

さらに強く、俺を抱きしめた。

苦しくなるくらい。


「ごめんなさい。傷つけてごめんなさい。裏切ってごめんなさい……」


遥の大粒の涙が、俺の額に流れてきた。

もしかして本当に、反省してるのかな?


「わかったよ。正直、今は何を言われても信じられないけど、でも……いつか許せるようになるから。だから泣かないでくれ」

「ありがとう。翔って優しいね。昔から変わってない」

「……変わったよ。俺もお前もな」


なんだかんで、遥は幼馴染だ。

昔からずっと一緒にいた。

このまま一生絶対に許さないのも寂しかった。


「ところで、天流さんと何があったかは言えない?」


遥になら話しても大丈夫……かな?

まだ信用はできないけど、誰かに話して楽になりたいと思ってしまう。

……俺は話すことにした。


「……くつ下を、食べさせられたんだ」

「え?」




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