第27話 餌はくつ下

「はい!あーんして!」


亜美はくつ下を俺の口に突きつけた。


「え?これは……」


パンっ!

痛てえ!

右頬にビンタが飛んだ。


「クマクマーでしょ?」

「クマクマ……」


≪公開調教キタ━━≫

≪ビンタされるアル様好き≫

≪えっちなお仕置き期待≫


「さあ召し上がれ」


亜美の制服のくつ下だ。

よくあるJKの黒いハイソックス。

少し、つんとする匂いがする。

これは……たぶん洗ってない。


「ク、クマクマぁ……」


俺は目を閉じて、顔を背けた。


≪どうした?アル様≫

≪具合悪いの?≫

≪悪いものでも食った?≫


リスナーさんたちが心配している。

ヤバい……このままじゃ、アル様のキャラが崩壊してしまう。

せっかく神配信になっていたのに、台無しだ。


俺は縋るような目で亜美を見た。

やめてほしいと表情で必死に訴えるが、


「おいしいよ!たーんと召し上がれ♡」


やめるつもりは、まったくないらしい。

亜美のとびっきりのかわいい笑顔に、俺は絶望した。


「クマ、クマ……」


俺の口に、くつ下が押しつけられる。

本当は食べ物ではないから、自然と口が閉じてしまった。

リスナーさんには、この洗ってないくつ下が、甘いクッキーに見えている。

だから喜んで食べないと不自然だ。


≪食欲ないの?≫

≪めっちゃ口と閉じてる≫

≪反抗期www≫


「ほらー!皆の衆が心配してるよ!早く食べなさい!」


亜美はさらに強く俺の口に押しつける。

もう食べるしかない……


「クマクマー!」


俺は口を開いた。


「はーい!よく味わいなさい!」


亜美は俺の口に、くつ下を押し込んだ。


「クマ…クマ…」


なんだか酸っぱい味がする。

口の中に、亜美の足の匂いが広がった。

これも、お仕置きなんだろうか?

亜美は遥とのこと、まだ怒ってるみたいだ。

でも、くつ下まで食わせるのはやり過ぎだよ……


「はーい!いい子だね♡」


亜美は俺を抱き込めた。

頭を優しく撫でてくれる。


≪アル様かわいい♡≫

≪ココロちゃんのペットいいな≫

≪俺も抱いてくれ!≫


リスナーさんは羨ましがっている。

でもみんなは知らないんだ。

俺が口に入れているのは、くつ下なのを。


◇◇◇


「皆の衆!最後までありがとう!バイバイちゃおちゃおー!」


無事、ゲーム配信は終わった。

10時間も続き、同時接続は100万を超えていた。

チャンネル登録者数も、この配信中に50万人も増えた。

切り抜き動画は数え切れないほど作られ、Twitterでも#アル様がトレンド入り。

俺のフォロワー数は、30万人を突破した。


「翔くん!おつかれさま!」


亜美がわしゃわしゃと俺の頭を撫でた。


「今日もかわいかったよ♡」

「うん……ありがとう」

「どーしたの?元気ありませんね?」

「……」


くつ下を口に突っ込まれたから、元気がないんだ。

どうして、あんなことしたんだろう?


俺がしばらく黙っていると、


「お姉ちゃんー!配信終わった……きゃあああ!」


妹の未音ちゃんが入ってきた。


そう。俺たちはまだ裸のままだった。







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