第28話 メスガキの妹再び

「2人とも……裸で何してるの?」

「何って……配信だけど」


亜美は何食わぬ顔で言った。


「……なんで裸で配信してるの?」

「うーん……熱いからかな?」

「はあ?何それ?」


未音ちゃんは頭を抱えた。 

まあ、普通は理解できることじゃないよな……


「影薄!おねーちゃんに何したの?変な薬を飲ませたとか?催眠術とか?つーか、早く服着ろ!雑魚の汚いモノ見ちゃったじゃねえか!」

「ごめん!」


俺は慌ててパンツを履いた。


「おねーちゃん、大丈夫?変なことされてない?」

「本当に、翔くんと楽しくコラボしてただけだから」

「でも……裸だったし」

「……未音。これは私と翔くんにとって、普通のことなの。あなたが口を出すことじゃないわ」


亜美はぴしゃりと言った。

真剣な顔をしている。


「絶対、変だよ。2人で裸になって配信して、影薄をペットにして……しかも、くつ下を食べさせるなんて」

「なんでそれを?」


亜美の眼光が鋭く光った。


「ごめん。実は2人が配信しているのを見てたんだ。おねーちゃんも影薄もおかしいよ。普通じゃない」

「普通……」


小さくつぶやいた後、


「普通って何なの?なんで私たちの普通を未音が決めるわけ?これが私たちのやりたいことなの。勝手なことばかり言わないで!」


亜美が怒鳴った。

本気で怒ったところを見たのは初めてだ。


「影薄は、やりたかったことなの?裸になったりくつ下を食べたり……雑魚の意見を言いなよ」

「……俺は、やりたくなかった」


裸になるのは、ドキドキしたから百歩譲っていい。

でも、くつ下を食べさせられたのは、やっぱり受け入れられなかった。

しかも洗ってない、臭いのするくつ下を……


「翔くん……」


亜美は泣きそうな顔で俺を見ていた。


「亜美。俺はもう帰るよ」

「待って。一緒に夕食を食べまょう。お話したいの」

「今日は遠慮しとくよ。じゃ……」


俺は服を着て、亜美の家から出て行った。


◇◇◇


今日の配信で、俺のチャンネル登録者数は、200万人を突破していた。

Twitterのフォロワー数は、30万人だ。

たくさんの応援コメントが来ている。リスナーさんたちは、またココロナナシとのコラボを望んでいるようだ。


社長の黒崎さんからもメールが来ていた。


≪影川くん。今日の配信はすごかったよ。うちの事務所で過去最高の数字が取れたわ。またコラボよろしくね!≫


リスナーさんも事務所も、コラボを求めている。

ただこのままじゃ、ココロナナシとはコラボできない。


俺が悩みながら歩いていると、電話がかかってきた。


……遥からだ。

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