第13話 だからお前とは付き合えないって

「おい!天流さんとはどこまで行ったんだよ?」

「ココロナナシの中の人、どんな奴だった?」

「影川くん!あたしとライン交換して♡」


いつも違う休み時間。

ぼっちの俺は休み時間は机で寝ているだけだったが、今日は全然寝れない。

クラスメイトたちに質問攻めにされて、もうヘトヘトだった。

はあ……早く昼休みにならないかなー


「みんな散って!翔が疲れてるでしょ!」


遥がクラスメイトを追い返そうとする。


「遥……何の用?」


さっきまで一人でしょぼんとしていたのに、急にどうしたんだ?


「なんだよ遥!ウゼエんだよ!」

「遥、邪魔!あたしたちは影川くんと話したいの!」

「お前がどっか行け!」


クラスメイトたちの激しいブーイング。

しかし、遥は負けなかった。


「あたしは翔の彼女なの!翔はあたしのものなんだから、あんたたちこそどっか行きなさい!」


か、彼女……?

何を言っているんだ?


「おいおい。さっき付き合えないって——」

「さっき翔とキスしたから!」

「え?」


騒がしかった教室が、一瞬で静かになった。


「マジで?遥と影川って付き合ってたの?」

「天流さんと二股かよ!」

「あたしも影川くんとキスしたい♡」  


クラスメイトたちがどよめく。


「そうよ!あたしと翔は付き合ってるの!キスもしたしそれ以上も……」

「してないしてない!」


俺は必死に叫んだ。


「キスしたでしょ!あたしとキスして嬉しいって言ったじゃない!」

「いや、それは……」

「あたしと翔は幼馴染でしょ。子どもの頃からあたしのこと好きだって。あたしにベタ惚れだからねー」

「全然惚れてないんだが」

「ひどい……あたしのこと弄んでいたのね!」


遥は泣き出した。

子どもの頃から、嘘泣きが上手かった。


「陰キャのくせに二股かよ。キメえ」

「女の子泣かしてひどい……ファンやめる」

「影川死ねよ」


ヤバい……遥の嘘をみんな信じ始めている。


「俺は天流さんとも遥とも付き合ってない。キスはしたけど、あれは遥に無理矢理されただけで……」

「ひどい!翔から強引にキスしてきたのに。あたしとどうしてもしたいって」

「違う違う!嘘つくな!」

「幼馴染を嘘つき呼ばわり?最低!」


クラスメイトが俺を見る目が、どんどん冷たくなってくる。

クソ!また遥にハメられた!

あのキスは罠だったのか。

俺はなんてバカなんだ……


チャイムが鳴った。

……助かったぜ。


せっかく陰キャ卒業かと思ったのにな。

遥の奴……勝ち誇った顔してやがる。


次はやっと昼休みだ。

天流さんになんて言おう……




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