第12話 今更付き合いたいと言われても、もう遅い

「女の子から見ていいところがひとつもない」 


そう俺に言った幼馴染の遥が、なぜか俺に話があるらしい。

今更俺に、どんな話があるんだろう?


俺は遥に引っ張られて、屋上へ連れて行かれた。


「なんだよ。話って?」

「……全部あんたのせいよ」

「はあ?」


遥はスマホを俺の顔に突きつけた。

クラスのグループラインだ。


≪遥って最低だよね≫

≪好きにさせといて振るとか、マジキメぇ≫

≪悪役令嬢は断罪しようw≫


遥へのディスが流れていた。


「なんであたしがディスられなきゃいけないのよ?」

「なんでって俺に聞かれても……」

「あの配信の後よ。それからあたしへのディスが始まって……」


どうやら天流さんとの配信の後、クラスのグループラインで「遥叩き」が始まったらしい。

ぼっちの俺は、グループラインの通知をオフにしていたから気づかなかった。


「すまん。全然知らなかったわ」

「知らないじゃ済まない!」

「でも、俺のせいじゃねえし……」


マジで理不尽すぎる。

遥は普段からいろんな奴にマウントとりまくっていたから、ヘイトを溜めていた奴がたくさんいるんだろう。

自業自得じゃないか。


「責任取ってよ!」

「責任って……どうすれば?」

「あたしと付き合って」

「はあ?」

「翔と付き合えば、あたしへのディスもなくなるし。翔はあたしのこと好きなんでしょ?」


なんでまだ俺が、遥を好きなのが前提なんだ?

俺を弄んでいたくせに……


「今更、もう遅い」

「え?」

「何もかも、もう遅すぎる。遥とは付き合えない」

「……聞こえなかった。もう一度言って」


聞こえない?

はっきり言ったはずなんだけど……


「俺は遥と付き合えない」

「……聞こえない。聞こえない。聞こえない」


ヤバい……

遥の聞こえないループが始まった。

小さい頃から、自分に都合の悪いことがあると、聞こえないフリをする。

こうなると面倒だな。


「ごめん。遥。もうすぐ授業が始まるから——」


ちゅ!

遥は俺にキスをした。

俺は遥のを引き剥がそうとしたが、肩をしっかりと掴まれて離れない。


うお!舌が入ってきた!

生温かい唾液が流れ込んでくる……


「ぷっは!あたしにキスしてほしかったんでしょ?翔なんかとキスしてやったんだから、あたしと付き合いなさい!」


どういう思考回路なんだ?

もうわけがわからん。

それに……天流さんとのキスみたいに、ドキドキしなかった。

遥とのキスは、キスじゃない。

ただの唾液交換だ。


「キスは嬉しいけど、遥とは付き合えない。俺はもう好きな人がいるから」


正直、遥にキスされても全然嬉しくなかった。

気を遣って「嬉しい」と言っただけだ。


遥は呆然とした顔で俺を見ていた。


「……俺は教室に戻るぜ。じゃあな」


立ち尽くす遥を後にして、俺は教室へ戻った。

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