第15話 甘々なランチタイム
俺と天流さんは手を繋いで、屋上へ来た。
本当は屋上は立ち入り禁止だ。
優等生の天流さんが校則を破るなんて意外だった。
「校則違反ですけど……どうしても二人だけの時間を過ごしたくて」
天流さんは満面の笑みを浮かべた。
「あ、その前に」
天流さんはハンカチを取り出して、ゴシゴシと俺の口を拭いた。
「ちょ!どうしたの?」
「毒婦の汚い唾液がついています。きれいにしないといけません」
ニコニコしながら怖いことを言う。
天流さんって、ちょっとヤンデ——
「今、ヤンデレだと思いましたね?」
「いやいや、思ってない思ってない」
焦って否定する俺。
なんでバレたんだ……?
「バレバレです。罰として、私にキスしてください」
「キ、キス?」
学校一の美少女にキスできるのは、罰になっていない。
それに、天流さんとはすでにキスをしている。
Vtuberとしてだけど……
「私とキスして、毒婦の唾液を浄化するのです」
天流さんは目を閉じて、唇をすぼめた。
ピンク色の小さな唇だ。
すっごく、柔らかそう。
「お昼休みはすぐ終わります。早くしてください」
天流さんが俺を急かした。
俺は天流さんの肩を掴んだ。
汗ばんでる……天流さんもドキドキしてるみたいだ
ちゅ……
俺は唇を重ねる。
「もっと、でしょう?」
「え?」
「あの女とは、もっとしてたでしょう?」
「もっとって……」
「……女の子に言わせる気ですか?」
ああ、そういうことか。
天流さんは顔を真っ赤にしている。
か、かわいい……
俺は天流さんの中に、ゆっくり舌を入れた。
「つっ……」
天流さんの舌も俺に入ってくる。
甘くて温かい唾液が流れ込む。
頭がクラクラしてきた。
自然と俺と天流さんは身体が密着する。
ぴったりと、俺たちはくっついている。
ほのかに香る、天流さんの髪の匂い……
シャップーの甘い匂いだ。
「ずっとこうしていたいですけど、そろそろご飯を食べませんと……」
名残惜しそうに、天流さんは俺から離れた。
俺たちは屋上に座る。
今日は雲ひとつない青い空だ。太陽がまぶしい。
二人で並んで、お弁当を食べる。
お嬢様はどんなものを食べてるのかと思って覗いたら、普通の海苔弁だった。意外に庶民的だ。
「これ、自分で作ったんです。ちゃんとお料理できないとダメだと思って」
「すごくおいしそうですね」
「本当?ありがとうございます♡明日から影川くんの分も作りますね!」
「え?いや、そんなの悪いから……」
「お料理の練習のためです。もっともっと上手くなって、影川くんに認めてもらわないと!」
激しく闘志を燃やしている。
これは止められそうにないな。
「あ、影川くんと食べようと思って、デザート作って来たんです」
天流さんはタッパーを取り出した。
「パイナップルを切ってきたんですけど、食べられますか?」
「食べたいです」
「よかったあ!はい!あーん、してください!」
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