第10話 学校一の美少女と登校

天流さんの家から帰った後、自分のTwitterを見ると、フォロワーが3万人になっていた。


ココロナナシとコラボしたからだ。

数えきれないほど、リプライとDMが来ていた。

好意的な内容が多かったけど、一部の過激なファンはかなりキレた。


≪アル様、かわいい♡≫

≪俺は断じて認めんぞ≫

≪またコラボしてほしい≫

≪アライグマ死ね≫


まさに賛否両論だ。

タイムラインは荒れに荒れ、アル様を認める派と認めない派の間で、激しいレスバトルが行われた。 

今はアル様を認める派が優勢だけど、やっぱり怒っている人もいるんだな……

DMで殺害予告も来たし。


明日、学校へ行って大丈夫かな……?

俺は不安になりながら眠った。


◇◇◇


憂鬱な朝だ。

今日は学校へ行きたくない。

俺が今、ネット絶賛炎上中の「アル様」であることは、クラス中が知っている。

いったい何を言われるかわからない。


暗い気持ちで朝食を食べていると、  


ピンポーン!


家のインターホンが鳴った。


「朝から誰かしら?」


母さんが玄関へ向かった。

たぶんアマゾンの配達だろう。

俺は気に留めず、コーヒーを飲んでいたら、


「翔!お友達よー!」


陰キャの俺に朝から友達……?

ま、まさか……


「影川くーん!天流でーす!一緒に学校行きましょう!」


ブッ!

コーヒーを吹き出しそうになった。


「翔!早くしなさい!」


母さんが俺を急かした。


「ごめん!少し待っててもらって!」


俺は大急ぎで身支度して、玄関へ向かった。


「おはようございます!」


天使のような優しい笑顔で、天流さんは挨拶した。

ブロンドの髪は朝日でキラキラしている。

制服の下から大きな胸のラインがくっきりと見えた。


うん……めっちゃくちゃ可愛いじゃん。


「おはよう。天流さん……」


あり得ない現実に、脳がフリーズしてしまった。


「ほら!もっとシャッキとしなさい!」


母さんに背中を叩かれて、ハッと正気に戻る。


「ごめんなさいね。頼りない子で」

「いえいえ。影川くんはいい人ですから」

「翔にこんな可愛いガールフレンドがいるなんて、ビックリね。亜美ちゃん、翔をよろしくね」

「影川くんは私が全力でお守りします」


おいおい。それは俺のセリフじゃないのか?


「翔に亜美ちゃんみたいなお嫁さんができたらなあ」

「ちょっと、何言って……」

「私、立候補します♡」


なんだかおかしな流れになってるぞ……


「そろそろ行きましょうか。車に乗ってください」

「車……?」


家の前に、リムジンが停まっていた。

リアルリムジン。初めて見たぜ……


「行ってきます!お母様!」

「お、お母様ぁ?」


戸惑う俺を無視して、


「ほら!影川くんもお母様に挨拶しませんと」

「行ってきます……」


天流さんは俺をリムジンに押し込んだ。


リムジンの中は広い。

高級な革張りのシートに、小さな冷蔵庫まである。

俺の家の車とは大違いだ。


「毎日迎えに来ますね」

「そんなの悪いよ」

「私と影川くんはお友達でしょう?お友達と一緒に登校しておかしいですか?」

「おかしくはないけど……」


普通の庶民の家に、毎朝リムジンで迎えに来られるのは恥ずかしい。

でも、可愛い天流さんにお願いされると、俺は断ることができなかった。


「今、私たち二人きりですね」

「たしかに二人きりだ」


運転手さんが前にいるけど、壁で区切られていた。


「ふふ。私たちはお母様公認の仲です。いろいろしてもいいんですよ?」


天流さんが身を乗り出して、顔を近づけてきた。

温かい吐息が俺の鼻にかかる。


「男の子は、朝、そういうことしたくなるんでしょう?」

「いや、でも、いきなりは……」

「じゃあ、いつかはしてくれるんですか?」

「ええっと……」

「かわいい♡耳まで真っ赤です」


クソぅ……童貞ムーブ全開じゃねえか。


「あ、もう着きました」


運転手さんがドアを開けてくれた。

俺は天流さんと一緒にリムジンから降りた。

生徒たちがたくさんいる正門の前で。


「おい!一緒に降りてきた奴、影川じゃないのか?」

「え?マジで?」


生徒たちの驚く声が聞こえた。

……これは面倒なことになりそうだな。

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