第5話 メスガキの妹

俺が振り返ると、ポニーテールの女の子が俺を睨みつけていた。

ブロンドの髪に、胸にリボンがついた制服を着ている。

身体は小学生ぐらいだけど、生意気そうな顔をしている。


「こんにちは。綾瀬川高校の影川と言います」


とりあえず、自己紹介しておくか。


「はあ?人の家に勝手に上がり込んできて何言ってんの?警察呼ぶわよ!」


女の子はスマホを取り出して、本当に警察を呼ぼうとした。


「待ってくれ!俺はこの家に招待されたのです」

「招待?誰に?」

「天流亜美さんに」

「嘘つかないで!あんたみたいなダッサい雑魚をお姉ちゃんが呼ぶわけないでしょ!」


お姉ちゃん……どうやらこの子は天流さんの妹らしい。

だが、清楚なお嬢様のお姉さんと違って、かなり口が悪いようだ。


「嘘じゃないよ。本当に天流さんに呼ばれたんだ」

「お姉ちゃんと何する気よ?」

「えーと……」


オフコラボすると言っても大丈夫かな……

天流さんはVであることを隠しているかもしれない。


「やっぱり……お姉ちゃんのストーカーでしょ!また来たのね。家に忍び込んでパンツを盗むつもりね。マジキモいわ。死ね!」


「ごめんなさい!遅くなってしまって……」


やっと天流さんが帰って来てくれた。

ふう……助かった。


「お姉ちゃん!ストーカーの下着泥棒がいたよ!早く警察を呼ぼう!」

「違うわ。彼はクラスメイトの影川くん。私が招待したの」

「えー!お姉ちゃんが男を家に連れ込むなんて……しかもこんな陰キャ丸出しの男を……信じられない」

「影川くんは陰キャじゃない!すっごい才能がある人なんだから!」

「どこをどう見ても、ただの無能にしか見えないけど?」


妹さんは俺の全身をジロジロと見た。


「ごめんなさい……妹はいつも口が悪いの」

「全然気にしてないよ。やっぱり妹さんだったんだ」


ストーカーと下着泥棒を除いて、だいたい本当のことだからな……


「ほら、影川くんに自己紹介しなさい」

「妹の未音(みおん)でーす。よろしくー」


未音はふてくされた顔で、やる気のない声を出した。


「で、お姉ちゃんはこの影薄(かげうす)と何するの?」


さりげなく、影川じゃなくて影薄と呼ばれている……


「影川くんは私とオフコラボするんだよ」

「えええ!影薄ってVなんだ!お姉ちゃんは男性Vとコラボしたことないのに……」


未音は疑いの目を向けてきた。


「そうなの!すっごく楽しみだから、絶対に邪魔しないでね!」

「影薄と部屋で二人きりになるんだ……おい影薄!お姉ちゃんに変なことすんなよ!もしお姉ちゃんを襲ったらあたしがぶっ殺すから!」

「あり得ないよ。影川くんは紳士だから」


学校一の美少女の部屋で、二人きりになる。

非モテの俺は、女の子の部屋に上がったことさえなかった。

はたして無事にコラボできるのか……


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