第7話 神配信part2

「アル様ぁぁぁ♡かわゆぅぅ!」

 

 ちゅ、ちゅ、ちゅ。

 俺の顔面に、天流さんのキスの嵐!


《ペット溺愛で草》

《アル様うらやま》

《ココロちゃんのアヘ顔キタ》


「ちょっと……天、じゃなかった。ココロさん。離して」


 がっしり大きな胸を押しつけられた俺は、なんとか離れようとする。

 もちろん、このまま柔らかいおっぱいに包まれていたかったが、ここはちゃんとVとしてコラボしなければ……!

 

《アライグマがしゃべった!》

《声かわいい♡》

《テン、ってなんだ?》


「だぁめ♡今日はアル様をずーっと愛でるんだから!」

 

 天流さんは俺を離さない。


「見て見て!皆の衆が喜んでいるよ!》


 パソコンの画面を見ると、同時接続は100万を超えていた。


「すげえ……こんなに見られているのか」

 

《ガチのコメントで草》

《素直でかわいい♡》

《俺もアライグマ飼いたい》


「もう!アル様は私のかわいいペットちゃんなんだから、クマクマー!って言いなさい」


 天流さんが俺の頬をぎゅうっとつねった。


《怒られて草》

《クマクマー!www》

《俺もココロちゃんにつねってほしいよお》


「ほら、クマクマー!って言えし!」

「クマ、クマ……」

「もっと大きな声でかわいくぅぅ!」


 正直、めっちゃ恥ずかしかったが、ここでやらないと白けるよな……

 俺だって底辺だけどVなんだ。やってやるぜ。


「クマクマー!」

「はい!よくできました♡ご褒美あげないとね!」


《調教やんw》

《アル様かわいい♡》

《ご褒美期待。じゅるり……》


「あーんして!」


 天流さんはクッキーを俺の顔に突きつけた。


「大きく口を開けて!食べさせてあげる♡」

「あーん……」


 俺は言われたとおり口を大きく開けた。

 天流さんはクッキーを手に取った。

 ……そのまま、俺の口へクッキーを放り込むと思っていた。


 天流さんはクッキーを自分の口に入れた。

 それから口の中でクッキーをぐしゅぐしゅと溶かして……

 俺にキスをした。

  

「うっっ……」


 口の中に、甘い溶けたクッキーが流れ込む。

 すげえおいしい……頭がクラクラする。

 

《口移しでエサやり草》

《もう死にそう。課金するぅ!》

《アル様、愛されすぎやん》


「ご褒美、もっとほしい?」

 

 俺はコクコクと頷いた。


「なら、もっとシテみて」

「クマクマー!クマクマー!」

「かあわいい!もっとあげるね♡」


 天流さんはひとつひとつクッキーを口移しで俺に食べされた。

 10枚のクッキーを全部だ。

 

 どんどんスパチャが投げられる。

 数えきれないほどの¥。

 尊い、てぇてぇ、課金、というコメントが流れていった。


「皆の衆!今日の配信はここまで!バイチャオチャオー!」


 後にこの配信は、伝説の神配信となりV界隈で語り継がれることになった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る