第3話 トップVとコラボだと?

 俺は家に帰って、自分の部屋のパソコンを立ち上げた。

 俺のVtuberチャンネル「最強勇者アルス」は、剣を持ったアライグマのガワを使って、俺が「最強」だと思ったことをやっている。


 やってることは他のVと変わらない。

 ただ、ゲーム配信したり、コーラを一気飲みしたりしてるだけだ。

 最強は、ただ最強と言えばウケるかなと思ったから言ってるだけ。

 バイト代を貯めていい機材を買って、Vを始めたはいいが、3ヶ月でチャンネル登録者数は一人だ。


 いったいこの一人は誰なんだろう?

 アカウント情報は非公開にされているから、正体不明だ。

 毎回、一個だけいいねがつくけど、この謎の人がつけてくれているのかな?


 あれ?……TwitterにDMが来ている。


≪私もVtuberやってます!コラボしませんか?≫


 ……コラボ?

 俺のみたいな底辺Vとコラボしたいのか?

 たぶん、悪質なイタズラだろう。底辺の俺とコラボするメリットはない。

 返信したらURLが送られてきて、怪しいサイトへ誘導されるに違いない。


 でも……フラれた今日は、俺のことを誰も知らない人と話したい気分だった。

 普段の俺なら即ブロックしていたが、俺は返信した。


≪いいですよ。コラボしましょう≫

≪ありがとうございます♡≫


 ♡までついてるよ。

 もしかして、女の子?

 俺は謎のVのTwitterアカウントを見に行った。

 フォロワー数は0。フォロー数は1。

 謎のVは、俺だけをフォローしている。


 ……クラスの誰かがネカマをやつて俺を釣ろうとしている?

 俺のVのTwitterアカウントをリアルで知っているのは遥だけのはずだ。

 陽キャ連中の策略か?

 俺をハメて、またクラスのグループラインに晒すつもりなのか?

 すでにSkypeの番号まで交換してしまったが……

 頭の中で疑念がグルグル回る。


 パソコンのSkypeが鳴った。

 本当にかけてきやがった!


≪最強勇者アルスさん?≫


 この声……聞いたことがある。

 このかわいい声は、まさか……?


≪ココロナナシさん?≫

≪あ、バレちゃいました?≫

≪ええええええええええええええ!≫


 俺は椅子から転げ落ちた。


≪驚かせちゃいましたね。ごめんなさい。私はココロナナシです。ずっと最強勇者アルスさんのファンでした。コラボOKしてもらってとっても嬉しいです。男性のVとコラボするの初めてなんですけど……最強勇者アルスとはどうしても一度コラボしたくて≫


 この声は、紛れもなくココロナナシさんのものだ。本物だ。

 チャンネル登録者数300万人を超えるトップVのココロナナシさんが、底辺Vの俺とコラボしたいだなんて……信じられない。


≪大丈夫ですか?もしかして……私とコラボするの嫌ですか?≫


 声が震えている。

 早く返事しないと!


≪全然嫌じゃないです。でもいいんですか?俺みたいな底辺Vとコラボして。ココロナナシさんにメリットないのに……≫

≪私、最強勇者アルスさんの配信が本当に好きなんです。いつも見てます。元気をもらえるっていうか……すごく、すっごくカッコイイんです!≫


 俺が、カッコいい……?

 この世に生を受けてから17年、俺には縁のない言葉だ。


≪だから、カゲカ……じゃなくてアルスさんには自信持ってほしいっていうか……」


 カゲカ……?


≪あの……今、影川って言おうとしました?≫

≪実は、私とアルスさんは同じ学校なんです≫

≪え?≫

≪今日、ラインで動画が回ってきて、アルスさんが影川くんだってわかりました≫

≪なら、ココロさんはいったい……≫

≪私は……隣のクラスの天流亜美てんりゅうあみです≫

≪えええええええええええええ!≫


 俺はまた椅子から転げ落ちた。

 びっくりしすぎて、壁に頭をぶつけた。

 あの、学校一の美少女と言われる天流さんがココロナナシの中の人だったなんて……


 ブロンドの髪と、小さくてかわいい顔。

 誰にも分け隔てなく優しいから、学校では女神様と呼ばれている。


≪ごめんなさい。逆にコラボしづらくなりました?≫

≪そんなことはないですけど……≫

≪じゃあ、コラボしてくれるんですね?≫


 めっちゃくちゃ嬉しそうな声だ。

 ……ここまで来たら、もう断れない。


≪ココロさんとコラボできて嬉しいです。俺なんかでよければ≫

≪やったあああああ!≫



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【★あとがき】

プロローグ完結です。ありがとうございます。

この後、学校一の美少女とイチャラブし、幼馴染にはざまぁがあります。

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