貴族学校に首席入学!?
桜舞い散る今日この頃……。今日はわたくしの入学式ですわ。
この世界に桜はございませんが……。そうだ、植物に詳しい方をお友達にしましょう!
『ブルセージ様、セルビア様、メリアお嬢様、いってらっしゃいませ』
使用人たちに見送られ、わたしは馬車に乗り王都にある貴族学校へ向かう。
入学式に参観する、お父さまとお母さまも一緒だ。
貴族学校では、決められた制服を着用する。
これが結構可愛らしくて、かなりファンタジー要素が詰まっておりますわ。
「メリアの制服姿は、なんて素敵なんだ。絵師を呼んで姿絵を描いてもらおうか」
お父さまは溺愛モードに突入中だ。お母さまにも止められない……。
「ありがとうございます。お父さま」
満面の笑顔で返すと、お父さまは更にエスカレートした。お母さまは首を傾げ右手の指先をおでこに添えて呆れていた。
しばらくすると、馬車から王都の景色が見えてきた。いつ見ても、人の営みを一望できるのは心が動かされますわ。
わたしが見える景色がどんどんと大きくなっていき、貴族の街並みに入っていく。王宮からそれほど離れていない場所に貴族学校が建っている。
貴族学校の門の前で、馬車を降りる。門を歩いてくぐると、案内係の人がいて学生と親たちを別々に誘導していた。
「お父さま、お母さま。いってまいりますね」
わたしはひらっと振り返って両親に挨拶をする。
「いってらっしゃい、メリア」
お母さまは普通に見送ってくれた。お父さまは相変わらずで、涙ぐんでいた。
早く子離れしていただかないと大変ですわね……。
新入学生はクラス分けの確認をして、決められた教室に行く。
わたしは、クラス分けの掲示板に辿り着きクラスを確認する。
そこにはノエルの姿があった。
「ノエル様、ごきげんよう」
「あ、メリア様。ごきげんよう」
わたしとノエルはお嬢様らしく挨拶を交わす。
学校ではお上品でいることが鉄則なのですわ。
「わたくしは、Sクラスですわ。メリア様とご一緒できてとても嬉しいですわ」
ノエルは本当に嬉しそうな笑顔ですわね。癒されますわ……。
無事にSクラスになれてよかったですわ。
貴族学校では、Sクラス、Aクラス、Bクラス……と分かれている。
クラス分けの基準は、入学前の座学試験で決まる。
わたしが直々に教育させていただいた甲斐がありましたわね。
冬の間、長い期間わたしの屋敷にノエルを招き入れお勉強したのですから。
Sクラスでなければ困ります。
セシルも当然、Sクラスですわよね……!?
掲示板にセシルの名前を探していたら、とんでもない事実がわかってしまった。もちろん、セシルもSクラスだ。
そんなことで驚きませんわ。
「メリア、ノエル、ごきげんよう」
わたしが振り返ると、セシルの姿があった。
「セシル様、ごきげんよう」
わたしとノエルは優雅に挨拶を返した。
「やはり、メリアには、かないませんでしたわね。首席入学おめでとう」
セシルはわたしを尊敬な眼差しで見つめる。ありがとうございます。
しかもセシルの制服姿が眩しすぎるわ。我慢よ!
「ありがとう、セシル」
そう、わたしが首席なのだ。2位がセシルで、3位がノエルだった。
しかし心配なのは、ノエルだ。上位の爵位の子供より上にいるというのは面白く思われないと思う。嫌がらせがきっとあるはず。わたしはノエルをずっと守っていくわ。
「セシル様、メリア様、そろそろ教室へまいりましょう」
わたしは、セシルとノエルの3人でSクラスの教室へ向かった。
道中の周りの目線がとても痛かった。
王女様と公爵令嬢が一緒に歩いているのですもの、注目されるのは当然ですわね……。
教室に辿り着き、中に入ると、ざわざわと賑わっていた教室内が一気に静まり返った。
気持ちはわからなくもないが、心臓に悪いわよ!
教室は階段状になっていて、前世の大学を思い出して懐かしさを少し感じた。
「どうしたのですか? メリア様」
懐かしさを感じた柔らかい笑顔が、ノエルには不自然に見えたようだ。
それはそうね。
「いえ、なんでもございませんわ」
わたしたちの席は一番上の席のようだ。
流石に上位の者を見下ろすということは失礼になる。
しかし、ノエルに対しては視線が冷たかった。
秀才のプライドが男爵家の令嬢に負けたのが許せないのかな。
わたしはその考え方が嫌いだ。
わたしたちが席に着くと、教員がやってきてオリエンテーションがはじまった。校内のルールや施設の説明などありきたりなものだった。
しかし、最後に難題がわたしに降りかかってきた。
首席入学のわたしが新入生代表の挨拶をすることになった。
聞いてないよ!
挨拶の言葉を考えていると、学生たちが移動しはじめた。
わたしはぶつぶつと挨拶の言葉を練習しながら入学式の会場へ向かう。
セシルとノエルは温かい目で見守っていてくれた……。
会場に入ると、学生の親と在校生たちで埋め尽くされていた。
Sクラスは最後の入場だった。わしたちは温かな拍手で迎えられた。
学長の長い長いお話が終わると、いよいよ新入生代表の挨拶だ。
わたしは壇上に上がって真ん中まで行き、会場内の人たちに体を向ける。
緊張をほぐすには……じゃがいもよ。じゃがいもと思うのよ!
「暖かな春の訪れとともに、わたくしたちは貴族学校の入学式を迎えることとなりました。本日はこのような立派な入学式を行なっていただき大変感謝しております。貴族としての誇りを持ち、王国のために文武ともに学びに励むことを誓います。皆様方、今後ともご指導のほどよろしくお願い申し上げます。新入生代表、メリア・アストール」
わたしの挨拶が終わると会場内は盛大な拍手で響き渡った。
あ、お父さまが顔がぐちゃぐちゃになって泣いている……。
お父さま、ありがとう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます