サイネリア号の初出航と魔動砲!
サイネリア号の完成の報告を受けて、私とノエルとカーナはサーマの港へ向けて馬車を飛ばしている。
「カーナ、絶妙な時期にサイネリア号が完成できて嬉しいですわ」
「はい、非常事態に間に合いましてほっとしております」
「カーナ、どのような船ができたのかしら?」
「ノエル、着いてからのお楽しみですわ」
馬車を数時間飛ばし、私たちはサーマの街へ到着した。
私たちが造船所に到着すると、たくさんの乗組員たちが出迎えてくれた。
すでに廃船になって失業していた優秀な現役乗組委員たちを集めてくれたようだ。
また、魔道具関係の調整として魔法工学研究所の職員も何名か乗り込むようだ。
サイネリア号は白を基調とした美しい船に仕上がっていた。
船の先端には女神様を模した飾りが付けられている。
「メリア様、とても美しい船でございますね。聖女様にふさわしい船でございますわ」
「ノエル、ありがとう。でも、あまり聖女様と言われると恥ずかしいですわ」
船の白さは白い魔鉱石と通常の金属との合金を作ることで実現したようだ。
「カーナの研究成果の結晶のようなものね。素晴らしいですわ」
「メリア様に喜んでいただけて、とても嬉しいですわ」
早速、私たちはサイネリア号に乗り込む。甲板の床も艶のある美しい木材で敷き詰められている。
ミリーナは林業にも活動範囲を広げていて高質な木材を育てている。ミリーナにもお礼を言わなくてはいけませんわね。
「メリア様、まずは私たちが開発した魔動シリーズ『魔動原動機』をご紹介いたします」
私たちはカーナに「魔動原動機」が設置されている部屋まで案内された。
サイネリア号は魔動シリーズ「魔動原動機」で航行することができる仕組みになっているようだ。
「メリア様、こちらの魔石に魔力を込めていただけますでしょうか」
「ええ、わかりましたわ」
サイネリア号を動かせるだけの魔力を供給できるのは私しかいない。
私は「魔動原動機」に取り付けてある魔石に手を当て魔力を込めた。
私が魔力を込めると「魔動原動機」が起動してサイネリア号が航行可能な状態になった。
魔力で動く装置なので、エンジン音のような大きな音がないのが不思議に感じた。
サイネリア号の起動を確認して、私たちは
プロの操舵士たちがもうすでにスタンバイしていた。
「メリア執務官閣下、お待ちしておりました。準備は完了しており、いつでも出港できます」
「メリア様、こちらにおかけください」
しっかりと艦長の席まで用意されていた。私はカーナに誘導され艦長席に座る。
とてもワクワクいたしますわ。
「それでは、メリア様。主砲と副砲の使い方をお教えします。至って簡単でございます」
私たちはカーナに主砲と副砲の使い方を教えてもらった。
使い方は本当にシンプルで、魔鉱石で加工されたタイルのようなものに手を当ててファイヤーボールを打つイメージで魔力を込めるだけだった。
主砲を撃つ役目は艦長の私のようだ。
私のファイヤーボールで何が起きても責任は取れませんわよ。
「メリア様、主砲を撃つ前に『魔動砲発射準備!』と叫んでくださいませ」
「わ、わかりましたわ」
どうやら、主砲や副砲の照準を合わせるのは数人がかりで手動で行うようだ。
あまりにもサイネリア号の造りの良さに世界ギャップを忘れておりましたわ。
「さらに、主砲を撃つ瞬間には『魔動砲発射!』と叫んでくださいませ」
「主砲を撃つときもですか?」
「ええ、乗組員が主砲付近から離れないと危険でございますゆえ」
「乗組員の安全も大切でございますものね。わかりましたわ」
艦内の命令伝達はもちろん魔道具で、船内中に設置してあった。
これは、王国の街に設置した放送装置の縮小版のようなものだ。
「メリア様、出港のご命令をお願いいたします」
どうやら私の命令待ちのようだった。
『サイネリア号、出港用意!』
私が命令を叫ぶと、乗組員たちが「サイネリア号、出港用意」と復唱した。
すると、造船所の港側の大きな扉が開き始めた。
いよいよサイネリア号の初出港の時がきた!
造船所の港側の大きな扉が完全に開くと出港の命令を私が下す。
『サイネリア号、出港!』
乗組員たちも「サイネリア号、出港!」と復唱する。
すると、ゆっくりとサイネリア号が動き始めた。
私の頭の中では何故か昔のアニメの主題歌が流れている。
宇宙には行きませんけれど……。
サイネリア号が港に出ると、サーマの街の港にはたくさんの人たちがサイネリア号の初出港を見届けにきていた。
見にきていた人たちは、見たこともない船の形に驚いている。
そして、港にいる人たちは一斉に跪き祈りを捧げ始めた。
「港にいる人たちは何をされているのかしら?」
「おそらく、サイネリア号のあまりの美しさに聖女様の船と思われているのですわ」
サイネリア号は帆がついていない。
原理を知らない人は聖女様の力で動いていると勘違いしているのかしら。
実質、私の魔力で動いていますものあながち間違いではございませんわね。
しかも、女神様がおふざけで祝福を振り撒いているのは気のせいかしら。
何かキラキラしたものが降ってきているような気がした。
サイネリア号はたくさんの人たちに祈りを捧げられながら川を上り、サイネリア王国とザンネーム王国の国境付近を目指した。
艦長席から見える景色は絶景だ。
ザンネーム王国が侵攻してこなければ優雅な航行となったはずですのに、残念ですわ。
サイネリア号は順調に航行しており、サイネリア王国とザンネーム王国の国境付近にもう少しで到達しそうだ。
「ノエル秘書官、戦況の確認をお願いできるかしら」
「はい、かしこまりました」
ノエルはクックルちゃんを呼び、戦況確認をしてもらう。
数時間経つとクックルちゃんが戻ってきて報告を受ける。
「メリア執務官。戦況がわかりました。ザンネーム王国軍が、あと数刻で国境付近に到達する見込みです」
「ノエル秘書官、報告ありがとう。では、ザンネーム王国軍に向けて威嚇射撃を行いましょう」
狙うのはザンネーム王国の一番近い山だ!
『魔動砲発射準備、標準はザンネーム王国の一番近い山ですわ』
乗組員たちは「魔動砲発射準備、標準はザンネーム王国の一番近い山」と復唱する。
「メリア執務官閣下、準備は整いました。いつでも発射可能でございます」
「ええ、ありがとう。ノエル、標的の山にいる動物たちは大丈夫かしら」
「はい、メリア執務官。問題はございません」
私は主砲の魔鉱石を加工して出来たパネルに手を当てる。
『魔動砲発射!』
私はパネルに『ファイヤーボール』をイメージして魔力を流す。
主砲から魔法陣が浮き出てきてビームのようなものがザンネーム王国の山に向かって飛んでいった。
ズゴォォォォォン、ブオォォォォォォン!
ザンネーム王国の山に魔動砲が直撃するともの凄い音を立てて爆発した。
山を粉砕して岩などの破片が四方八方に飛び散っていく。
爆発の煙が消えると一つの山が無くなっていた。
やりすぎてしまいましたわ……。
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