ミリーナの昇格と宰相の息子の逆恨み
稽古の時間にアリスとお友達になった。
稽古が終わるとセシルたちに紹介をする。
「みなさま、新しいお友達をご紹介いたしますわ」
「アリス・エルガーディンと申します。みなさまよろしくお願いいたします」
アリスは少し緊張気味な笑顔で挨拶をした。
「よろしくお願いしますわ。『アリス』って呼んでいいかしら?」
「はい、セシル様。『アリス』とお呼びください」
「アリス様、初めまして。わたくし、ノエル・グロッサムと申します。よろしくお願いいたしますわ」
セシルたちは快くアリスを受け入れてくれた。
「あと、Aクラスのミリーナ様ともお友達ですわ。今後ともお会いする機会がございますので、その時にまた改めてご紹介いたしますね」
「は、はい。よろしくお願いいたします」
アリスはきょとんとした顔をした。
次のお泊まり会にアリスも招待して、アリスとミリーナが初顔合わせをした。
アリスは成績向上、ミリーナはSクラス昇格を目標に秋口に行われる試験に向けて猛特訓させた。
◇試験当日。
「ミリーナ、やれることは全部やりましたわ。自信を持ってちょうだい」
「はい、メリア様。無事、Sクラス昇格を勝ち取ってまいりますわ」
みんなでミリーナの応援をして、わたしたちはSクラスの教室へ向かった。
いよいよ、テスト開始だ。
「メリア、今回は負けませんわよ」
最近のセシルは頼もしくなってきましたわ。
「メリア様、わたくしも頑張りましゅ」
ノエルの攻撃力は抜群ですわ。
少し席が離れているアリスとは目と目で合図して健闘をたたえあった。
今回は座学と実技が行われ、総合力で評価が決まる。
だがしかし、わたしだけは実技は免除となってしまった。
せっかく最大の手加減を覚えてきましたのに残念ですわ……。
試験結果発表の日、掲示板に各クラスの順位表が貼り出される。
Sクラスの首席は、わたしだった。
2位はセシル、3位はノエル、4位はアリスと上位を独占した。
「やっぱり、メリアにはかないませんわ。実技免除の時点で負けは確定していましたわ」
「メリア様、わたくしが4位とは信じられません。本当にありがとうございます」
「いえいえ、アリスの努力の賜物ですわよ」
「あのう、メリア様。こちらをご覧ください」
ノエルが指差したのは、Sクラスのワースト3の名前だった。
確か、最初の稽古でノエルを馬鹿にしてきた男子学生だった。
ワースト3はAクラスに降格確定だ。
実力主義ですもの、仕方ないですわね。
ミリーナの順位も気になったので、Aクラスの順位表を見に行った。
ミリーナは、Aクラスの1位だった。Sクラス昇格確定だ。
ちょうどミリーナも試験の結果を見にきた。
「ミリーナ、おめでとう。明日から同じSクラスですわね」
「メリア様、ありがとうございます。なんとお礼をすれば良いのやら……」
「お礼なんていらないわ。ずっと仲良くいられればそれで満足ですわ」
ミリーナの嬉し涙に思わずもらい泣きしてしまった。
セシルたちも同じだった。
翌日、授業が始まる前にSクラスに編入となった3名の学生を紹介された。
ミリーナと、カーナという髪が紫のショートの子とダリアという黒髪ロングの眼鏡っ子だった。
カーナとダリアは見た感じ面白そうな特技というか何かがありそうな気がした。
要チェックでございますわ。
ミリーナのテストの結果はSクラスの5位相当ということだった。
席もわたしたちと同じ列ですわ。
「みなさま、ごきげんよう」
「ミリーナ、待ってたわよ」
みんなで快くミリーナを出迎えた。
ただ、やはりミリーナはハーフエルフということで他の学生からはあまりよく見られていなかった。
大丈夫、全力でミリーナを守るからね。
授業が終わり、帰宅しようと廊下を歩いていると、知らない男子学生がわたしの前で立ちはだかった。
避けて通ろうとしても邪魔をしてくる。
後ろにはノエルをいじめた3人の男子学生もいる。
「おい、お前のせいで俺様がSクラスに上がれなかったではないか」
何のことやらさっぱりですわ。
「どなたでございますの? 紳士の殿方がする行動とは思えませんが」
「俺を知らないのか? 俺様は、ジードール・ボルジワール様だ!」
ボルジワール……宰相の息子だった。
「ジードール様がSクラスに上がれなかったのは、ただの実力不足だからではございませんか?」
「何だと!」
それ以外に何があるというのでしょうか。
「俺様は、宰相の息子だぞ!」
意味がわかりませんわ。
「お前たち、やれ!」
『はい』
自分で来ないのでしょうか。テンプレ的な悪役リーダーですわね。
Aクラスに降格した3人の男子学生が一斉に襲いかかってきた。
しかし、メリアを素通りしてしまい男子学生たちは不思議な顔をしている。
何度も襲いかかってくるが結果は同じである。
「なんで当たらないんだ?」
「お前は幽霊か!?」
前世の漫画を参考に一瞬だけ戦闘力を上げることを覚えましたのよ。
わたしと男子学生がやり合っているところにセシルたちがやってきた。
「貴方たち、何をしているの。許される行為とお思い?」
「お、王女殿下……」
ジードールたちは、セシルの顔を見るなり逃げ出していった。
「メリア、大丈夫? 怪我などはありませんよね」
「ええ、わたくしは平気ですわ。セシル、ありがとう」
セシルが来てくれたお陰で面倒ごとから逃れられた。
ノエルたちも心配そうにわたしを見つめる。
「それにしても、メリア様の動きは何が起きているのかわかりませんでした」
アリスが不思議そうな顔をして話してきた。
わからない方が幸せよ。わたしにとっても……。
「さて、馬車を待たせておりますので、これで失礼しますわ。みなさま、ごきげんよう」
わたしは誤魔化しながら帰っていった。
宰相の息子のジードールに目をつけられてしまいましたわ。
お父さまのお仕事に影響がないと良いのだけど。
心配ですわ……。
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