シャルラハロート王国での同盟締結式

 数日後、シャルラハロート王国への訪問の日がやってきた。

 

 私は王宮にてセシルと一緒に訪問用の衣装へ着替えさせてもらっている。

 着替えが終わると、国王陛下にご挨拶をする。


「お父様、行ってまいります」


「国王陛下、シャルラハロート王国へ行ってまいります」


「セシル、メリア執務官、任せたぞ」


『はい、かしこまりました』


 国王陛下は私たちの息のぴったり合った返事に上機嫌だ。


 私たちは王宮からサーマの街まで馬車で移動する。

 サーマの港からはサイネリア号で大河を渡ることになっている。


 サーマの港に到着すると、サイネリア号専用格納庫が建設されていた。

 専用格納庫が建設されたのは、造船所に格納していたら新しい船が作れないからだという理由らしい。


 しかし、3隻くらい格納できる大きさですわね。

 どうしてでしょう……。


 サイネリア号専用格納庫の前でカーナが出迎えてくれた。


「お待ちしておりました。セシル王女殿下、メリア執務官」


「久しぶり、カーナ」


「カーナ、専用格納庫の建設を許可したけれどこんなに大きいのね」


「いずれ、船も増えると思いますので大きめに作らせていただきました」


 カーナは何か企んでいるのかしら。

 少し額に汗が滲んでいるような……。


「まあ、そうですわね。今後のことを考えれば何隻も格納できるのが好ましいですわね」


「はい、そうでございましょう。それでは、サイネリア号までご案内いたします」


 私たちはカーナに案内され、格納庫に入っていく。

 何か誤魔化されたような気がしますわ。


「まぁ、とても素敵ですわ。これほど神々しい船が出来上がっていたのですね」


 セシルは初めてサイネリア号を目にして大興奮している。

 私は興奮して固まっているセシルの手を握り、サイネリア号に乗船した。


 艦橋かんきょうの操舵室に入ると、乗組委員たちがスタンバイしていた。


「ささ、メリア執務官こちらへ」


 やはり、私が艦長なのですね。


『サイネリア号、出港用意!』


 私が出港用意の号令をかけると、乗組員たちは「サイネリア号、出港用意!」と復唱した。


 格納庫の港側の扉が少しずつ開いていく。


 扉が完全に開くと私はさらに号令をかける。


『サイネリア号、出港!』


 乗組員たちは「サイネリア号、出港!」と復唱する。

 

 さらにポォー! と音を鳴らして港にサイネリア号が姿を現していく。


 港の沿岸にはたくさんの人たちから、またまた跪いて祈りを捧げられる。

 サイネリア王国の民からは神聖な船と認識されているようだ。



 サイネリア号は大河を渡り、無事にシャルラハロート王国の港に到着する。

 こちらでも、見たこともない純白の船の神々しさに祈りを捧げる者もいた。


「カーナ、サイネリア号の警備を頼むわね」


「はい、かしこまりました!」


 私たちがサイネリア号から降りていくと、ヴィオーラ王女が護衛を率いて私たちを出迎えてくれた。


「お待ちしておりました、セシル王女殿下、メリア執務官閣下。馬車をご用意いたしております」


『ヴィオーラ王女殿下、ごきげんよう』


 私とセシルは優雅にあいさつをした。しかも息がぴったりだった。


「うふふ。お変わりがないようで安心いたしましたわ」


 私たちはシャルラハロート王国が用意した馬車に乗り込み、王宮へ向かう。

 

 サイネリア王国とは違う美しい整った街並みにとても感動した。

 大国というだけあって、人の往来も多くとても賑わっていた


「とても素敵な街並みですわね。石畳がとても綺麗で惚れ惚れしてしまいますわ」


 ……古風なヨーロッパの街にいるような感じですわ。


「あら、お褒めいただけて光栄ですわ」



 馬車の中で雑談をしながら進んでいると、あっという間に王宮に到着してしまった。


 私とセシルは国王の間へ案内され、シャルラハロート国王陛下と謁見をする。


「シャルラハロート国王陛下、お初にお目にかかります。私、サイネリア王国第1王女セシル・フォン・サイネリアと申します」


「シャルラハロート国王陛下、お初にお目にかかります。同じく、執務官のメリア・アルストールと申します」


『以後、お見知りおきを』


「おっほっほっほ。ヴィオーラから聞いていたが本当に相思相愛の二人のようじゃのう」


 ……ヴィオーラ王女からどのような報告を受けているのかしら。


「よくぞ、シャルラハロート王国にまいられた。幸せに暮らす民たちを守るためにはサイネリア王国の協力が不可欠じゃ。我が王国と同盟を承諾してくれたこと、心より感謝する」


 シャルラハロート国王陛下もとても腰の低いお方だった。

 こちらが逆に恐縮してしまう。


「国王陛下、お顔をおあげ下さい。私たちには勿体無いお言葉でございますわ」


「すまんすまん。では、これから同盟の締結式を行うとしよう」


「はい、よろしくお願いいたいします」


 ヴィオーラ王女が別室まで案内してくれるようだ。


「セシル王女殿下、メリア執務官閣下、お立ちください。ご案内いたします」


 私たちは同盟国の代表者が集まる部屋へ移動する。

 案内された部屋は半円のような形になっていた。

 一番奥に、シャルラハロート国王陛下が、中心を囲むように他の同盟国の代表者が座っていた。

 私たちは入口に近い中央の席に案内された。


「これより、サイネリア王国のシャルラハロート王国同盟との締結式を行う。サイネリア王国代表者、セシル王女殿下は前へ」


「はい」


 セシルは立ち上がり、中央の契約書が置かれている机まで進む。


「セシル王女殿下、こちらにサインをお願いいたします」


「はい、かしこまりました」


 セシルが契約にサインを書き終えると、係の者がセシルから契約書を預かり、シャルラハロート国王陛下へ契約書を渡す。


 シャルラハロート国王陛下は契約書の内容とサインを確認した。


「これで、サイネリア王国はシャルラハロート王国同盟の一員となった。今後、民たちの幸せのために尽力していただくことを望む」


 シャルラハロート国王陛下の一言が終わると、他の同盟国の代表者から拍手で迎えられた。


 今後は定期的に同盟会議というものがあるそうだ。

 ミリタイア帝国軍事連合の脅威にどう対処していくか連携を密にしていきたいという方針のようだ。


 私たちは、無事にサイネリア王国はシャルラハロート王国同盟との締結が終わり帰国の途についた。

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