ミリタイア帝国軍事連合の脅威
シャルラハロート王国との同盟
シャルラハロート王国の第1王女、ヴィオーラ・フォン・シャルラハロートが特命全権大使としてサイネリア王国に訪問し、国王の間でヴィオーラが国王陛下との謁見を許可された。
私は今、国王陛下の隣でセシルと一緒に待機をしている。
反対側にはお父様も待機している。
ヴィオーラ王女は国王陛下の前で跪くいてあいさつをする。
「サイネリア王国、国王陛下。謁見のお許しをいただき、誠にありがとう存じます。私、シャルラハロート王国の第1王女、ヴィオーラ・フォン・シャルラハロートと申します。以後お見知りおきを」
ヴィオーラ王女はとてもおおらかな雰囲気で清楚感が溢れていてとても美しい方だった。
「ヴィオーラ王女、よくぞまいられた。して、今回の訪問の目的を聞かせてもらえるだろうか」
「はい、今回はサイネリア王国と我が王国、シャルラハロート王国との同盟の締結をお願いにまいりました」
シャルラハロート王国は大きな川を挟んだ反対岸にある大国だ。
サイネリア王国はそれほど大きな国ではない。
どういった目的で同盟を結ぶのかはまだわからない。
「うむ。目的は理解した。ただ、ここで話し込む内容ではないので場所を移そう」
国王陛下のはからいで、応接室で話し合おうということになった。
私たちは応接室へ移動し、一番奥の椅子に国王陛下、左側に私とお父様とセシル、右側にヴィオーラ王女とお連れの文官の方々が席に着く。
「それではヴィオーラ王女、詳しいお話を聞かせていただこうか」
「はい、かしこまりました。シャルラハロート王国は、サイネリア王国とザンネーム王国との一戦を目の当たりいたしました。サイネリア王国の旗艦の攻撃力に対してはとても驚かされました……」
ヴィオーラ王女の説明によると、サイネリア王国がザンネーム王国に勝利したこと。
サイネリア号の攻撃力を見せつけられたことによりミリタリア帝国が何かしら行動を起こしてくると懸念してる。
サイネリア王国をシャルラハロート王国の庇護下におきたいという理由もあるようだ。
「うむ、ミリタリア帝国の良くない噂は我々も耳にしている。今まさに防衛体制を新たに計画しているところじゃ」
「それでは、国王陛下はミリタイア帝国軍事連合はご存じでしょうか?」
「ミリタイア帝国軍事連合じゃと? 数々の小国を併合して国土を拡大しているとしか知らなかったな」
ミリタイア帝国軍事連合の総攻撃が起きたら、サイネリア王国だけで応戦できるのだろうか。
やってやれないことはないけれど、味方にシャルラハロート王国が付いてくれるのはありがたい申し出だ。
「はい、ミリタイア帝国は数々の国を懐柔して軍事力を高めております。最終目的は我が王国、シャルラハロート王国の侵略でしょう」
現状は、シャルラハロート王国同盟とミリタイア帝国軍事連合が睨み合っている状態のようだ。
シャルラハロート王国は平和路線を目的にしていて同盟国をいかに守っていくかを考えているようだ。
「わかった。サイネリア王国はシャルラハロート王国との同盟を締結しよう」
「本当でございますか? 我が王国の要望をお聞きいただいてありがとう存じます」
特に話し合うこともなく、国王陛下の一存でサイネリア王国はシャルラハロート王国との同盟を締結することになった。
私たちの意見も国王陛下と同じで異論はない。
「同盟の締結式はシャルラハロート王国で行うこととなりますが問題はございませんでしょうか?」
「そちらにお任せする。代理でセシル王女に行かせようと思うが問題はないか?」
「はい、結構でございます」
最終的に同盟の締結式にはセシルが出席することで話は固まった。
私の同行も問題ないようだ。
シャルラハロート王国がどのような大国なのかを知るのも楽しみだ。
「それでは、話し合いは終わりにしよう。セシル、ヴィオーラ王女とお茶でもしなさい。堅苦しい話ばかりでお疲れであろう」
「はい、お父様。ヴィオーラ王女殿下、ご一緒に私のお部屋へご案内いたします」
「ご配慮、ありがとう存じます。セシル王女殿下、よろしくお願いいたします」
私とセシルはヴィオーラ王女をセシルの部屋まで案内する。
部屋に着く頃には、使用人たちが先回りしていてお茶の準備は整っていた。
「ヴィオーラ王女殿下、こちらにお掛けになってください」
セシルはテーブルまでヴィオーラ王女を案内する。
「はい、ありがとうございます」
ヴィオーラ王女が席につくと、私たちも席につく。
「自己紹介がまだでございましたね。私、第1王女のセシル・フォン・サイネリアと申します」
「私、執務官をしております、メリル・アルストールと申します。以後お見知りおきを」
「あら、ご丁寧にありがとうございます。女性同士のお茶の席です。あまりかしこまらないようにいたしましょう」
ヴィオーラ王女はとても奥ゆかしい方だ。
私が男性なら一目惚れしてしまいそうですわ。
「セシル様はご婚約されたと聞いておりますが、どのようなお方でしょうか」
セシルは少し恥ずかしがりながら私に目線を送った。
「隣にいるメリアでございますわ」
「あら、そうでございましたの。セシル様、メリア様、ご婚約おめでとうございます」
『ありがとうございます』
私とセシルはハモってしまった。
その様子を見たヴィオーラ王女は「うふふ」と綺麗な笑顔を見せた。
「相思相愛って感じで羨ましいですわ」
……なんでセシルはそこでしおらしくなるのよ。反則ですわ。
「あらあら、メリア様がセシル様を引っ張っていかれる感じかしら。うふふ」
「ええ、メリアから『セシルの幸せは私が守るって決めているのですわ!』と言われた時は心臓のドキドキ止まりませんでしたわ」
「セシル様、羨ましいですわ。私も素敵な方にそう言われたいですわ」
……セシルの私との惚気話が止まりませんわ。とても恥ずかしいですわよ。
ヴィオーラ王女のお付きの文官が「お時間でございます」とヴィオーラ王女の耳元で呟いたのが聞こえた。
そろそろヴィオーラ王女は帰国されるようだ。
私としてはちょうど良いタイミングでホッとした。
「あらあら、もうこんなお時間なのですね。申し訳ございません、私はこれで失礼させていただきます」
「いいえ、こちらこそ有意義なお時間を過ごせて嬉しかったですわ。またシャルラハロート王国にお伺いした時はぜひ」
私たちは優雅にあいさつを交わして、ヴィオーラ王女は帰国の途についた。
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