わたしと王女様は目と目で通じ合う仲なのよ!

 わたしはもう7歳になった。顔立ちも少しずつ幼さが抜けつつある。


 ちゃんと普通に大人の階段を登っているのね。体の成長が「10倍」ではなくてよかったわ。


 いろいろと思いに耽っていると、トントンとノックする音が鳴った。


「どうぞ」

「メリアお嬢様、失礼いたします」


 セリアが手紙を持ってわたしの部屋に入ってきた。


「メリアお嬢様、セシル王女様から招待状が届いております」


 わたしは、セリアから招待状を受け取った。

 セシルが7歳になり、王宮で3日後にお披露目式が行われるのだ。


「ありがとう、セリア。王女様のお披露目式が楽しみですわ」


 

 3日後の朝、わたしは王宮へ行くためのお着替えをしている。

 あくまでも、主役はセシル。優雅さはあれど、目立ちすぎない気遣いも必要だ。


 しばらくすると、お母さまがわたしの部屋へやってきた。


「メリア、支度は大丈夫?」

「はい、この通りお着替えも終わりましたわ」


 お母さまのチェックが終わるとすぐに出発となった。

 玄関口に馬車がもう控えていた。わたしはお父さまに抱き上げられ馬車に乗る。お父さまとお母さまも乗り込み出発だ。


『ブルセージ様、セルビア様、メリア様。いってらっしゃいませ』


 使用人たちに見送られながらわたし達は屋敷を後にした。


 今日は、前回と違って正門から入っていく。馬車は正門の手前で降りて王宮へ向かうことになった。すでに多くの貴族達が王宮へ向かっていた。


 お披露目式は王の間で行われる。わたしたちは玉座に一番近いところへ係りの者に案内される。


 まだ国王様も、セシルも顔を出していない。式の参加者が揃うのを待っているようだ。


 式の参加者が揃うと、玉座の間の扉が閉められた。いよいよお披露目式が始まる。


『サイネリア王国、国王陛下のご出座でございます!』


 一人の騎士が、国王様が来られる合図をする。わたしたちは跪き頭を下げる。


 その間に国王様は玉座についた。


 騎士の合図でわたしたちは頭を上げ立ち上がる。


「皆のもの、よくぞ参られた。本日は我が娘、第1王女のセシル・フォン・サイネリアの披露目の儀式を行う」


 国王様の一言が終わると、セシルが登場してくる。

 頭には金色のティアラに白と青で彩られた素敵なドレスを装い、わたしたちの前に姿を現した。7歳とも思えない佇まい、優雅さ、王女としての威厳が感じれた。


「皆様、初めまして。サイネリア王国、第1王女のセシル・フォン・サイネリアでございます。わたくしのお披露目の儀式にお越しくださり、誠にありがとうございます」


 セシルの挨拶が終わると、神官たちが出てきてお披露目の儀式が始まった。


 神様の祝福を賜り、セシルのお披露目を祝うかのように白い光の粒がたくさん降りてきたように見えた。


 儀式が終わって、セシルが顔を見せると、わたしと目が合った。目と目で「また後でね」「わかったわ」と会話した。


 わたしとセシルは目と目で通じ合ってるのよ。うふふ。


 お披露目の儀式が終わると、パーティー会場に移る。いわるゆ二次会というものだ。


 貴族達は順番に国王様と王女様に挨拶をしていく。

 アルストール公爵家は2番目だ。


 ……ということは、お父さまはサイネリア王国のナンバー3ということ!?


 最初に挨拶をするのは宰相閣下のボルジワール家の者達だった。


 以前に王宮ですれ違った時の違和感みたいなものを感じた。

 なぜ感じるのか、それが何を意味するのか今のわたしにはわからなかった。


 特に、宰相閣下がすれ違う時、お父さまを見る目がものすごく怖く感じた。


 宰相閣下に気を取られていたわたしは、お父さまから「メリア、順番だよ」と呟き背中を軽く叩かれた。


「国王陛下、王女様、本日はおめでとうございます」


「おお、ブルセージ。祝いの言葉をありがとう。其方達のお陰で娘は立派に育ったぞ。そちらが噂の娘か」


「はい、私の娘のメリア・アルストールでございます。ほら、メアリ。ご挨拶を」


「お初にお目にかかります。国王陛下、ブルセージ・アルストール公爵家の娘、メリア・アルストールと申します。以後、お見知りおきを……」


「おお、まだ7歳なのにしっかりしておるのぅ。いつも娘が世話になっておる。ありがとう」


 わたしが想像していた以上に、国王陛下は腰が低いお方だった。


「メリア、今日はお祝いに来てくれてありがとう。とても嬉しいわ」


「セシル様の晴れ舞台ですもの。当然でございますわ」


 わたしとセシルの目が合うと、お互い笑い合う。


「ほっほっほ、本当に仲が良いのじゃな。これからも娘を頼むぞ」

「はい、かしこまりました。国王陛下」


 仲睦まじいやりとりを終えて、わたしたちは下がっていった。


 パーティーは立食形式だ。わたしたち家族が食事をしていると、グロッサム男爵家の家族達も国王陛下と王女様との挨拶を終えてやってきた。もちろんノエルも一緒だ。


「メリア様、ごきげんよう」

「ノエル、ごきげんよう」


 わたしとノエルはにっこりとした笑顔で挨拶を交わした。


「メリア様。王女様はとても素敵な方でございましたわ。わたくしと同じ7歳とは思えませんでしたわ。メリア様もですけれど」


「ありがとう、ノエル」


 貴族達の挨拶の行列がなくなると、セシルがわたしたちの所へやってきた。もちろん、護衛にフィーリア騎士団長がついている。


「メリア、おまたせ。やっと終わったわ」


「セシル、わかりますわ。わたしも先日同じ目に合いましたわ」


 ノエルはわたしとセシルとの会話にものすごく驚いている様子だ。わからなくもない。


「あのぅ、メリア様。王女様とはどのような間柄でございますの?」


「わたくしとセシルはお友達ですわ。セシル、ご紹介しますわ。こちら、わたくしのお友達のノエルです」


「そうでしたの。ノエル、これからよろしくね」


「は、はい。セシル様。こちらこそよろしくお願いしましゅ、ます」


 ノエルが噛んだ。ノエルも萌度を上げてきましたわね。


「メリア、ごめんね。まだ、いろいろとご挨拶に伺わないといけないもので」


 セシルは慌ただしそうな雰囲気で別の貴族の所へ向かって行った。


「メリア様、本当にびっくりしましたわ。もう胸がドキドキですわ」


 ……わたしは違う意味で胸がドキドキですけどね。


「ノエル。貴族学校へ入学したら、セシルと一緒になることは多くなると思うわ。心の準備はちゃんとしておくのですよ」


「は、はい。わかりました。頑張りましゅ」


 ……ノエルもなかなかやりますわね。


 ノエルの心の準備もだけど、お勉強や剣や魔法のお稽古もきっちりと準備させてもらうわ。わたしの心の声がノエルに伝わったのか、少し不安気な表情を見せた。


 数刻するとパーティーは終了となった。

 わたしたちは、国王陛下とセシルを会場からお見送りしてから解散となる。


 最後にセシルと目が合い「またね」と合図を送りあった。

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