ダンジョンが出現!? 金策ですわ!
今日もいつものように私は執務室へ入る。
「メリア様、ごきげんよう」
「ノエル、ごきげんよう」
いつも私より早く、ノエルは出勤して私の仕事の準備をしてくれている。
本当にありがたいことだ。
毎朝二人でティータイムを楽しんでから仕事を開始する。
ノエルの入れてくれるお茶は最高だ。
お茶を楽しんでいると、トントンとノックの音が聞こえた。
「どうぞ」
「失礼します」
私が入室の許可を出すと、エルミーナ秘書官が執務室に入ってきた。
「エルミーナ秘書官、お帰りなさいませ」
「メリア様、いえ、執務官代理。此度の件、誠にありがとうございました。無事疑いがはれて釈放となりました」
グワジール元宰相の事情聴取により、エルミーナ秘書官は無罪と証明され釈放されたのだ。
3日間の状況を、私はエルミーナ秘書官に説明をした。
お父様の意識がいまだに戻らないことも。
エルミーナ秘書官からは涙ながらにお詫びと感謝をされた。
エルミーナ秘書官がいなかったらお父様の命すら危うかったわ。
感謝しかございませんわ。
ノエルがエルミーナ秘書官の分のお茶を用意してくれたので、三人でお茶を楽しむことにした。
「執務官代理が、あそこまでグワジール元宰相を追い込むとは驚きました。こういう日のためにご友人をお育てになっていらっしゃったのですね」
……あぁ、いやぁ、学校生活を普通に楽しんでただけなんですけどね。
「いえいえ、私は何も。友人たちの日々の努力の賜物でございますわ」
お茶を楽しんでいるとあっという間で、始業の時間になってしまった。
私たち三人は部下たちがいる部屋へ向かう。
私が部屋に入ると部下が整列をして待っていた。
『メリア執務官代理、おはようございます』
みんなすごく気合いが入っている。
顔色もとても良くなっていた。
「皆様、ごきげんよう。よく休めましたでしょうか」
部下たちからは「もちろんです」など感謝の言葉が飛び交った。
「では、本日の仕事の指示を出します。貧民層と平民街の状況調査と農業など産業の調査をお願いします。必要に応じては医師の手配や食べ物の配給をお願いします。大きい鍋で炊き出しをして配るのもよいかもしれません」
「はい、かしこまりました」
リーダー的存在の人が返事をすると、班を3つに分けて部下たちは行動を開始した。
私たち三人は執務室に戻り、課題表とにらめっこしながら今後の計画を考えていた。
だが、どうしてもグワジール元宰相から押収した資産だけでは予算が足りない。
どうしたものか……。
いろいろと考えているところに、兵士が緊急の報告のために執務室にやってきた。
「メリア執務官代理、ご報告がございます。本日、王国内にダンジョンが発生いたしました。上級の冒険者が調査に行ったところ重傷者を連れて戻ってきたとのことです」
……ダンジョン!?
ファンタジー世界になくてはならない存在の一つですわ。
「緊急に対策を立てねばなりませんね。騎士団と相談して対策を立てましょう。報告ありがとうございます」
「はっ、よろしくお願いいたします。では、失礼いたします」
兵士は敬礼をして、執務室を出ていった。
「しかし、なぜ私に報告がくるのかしら? 騎士団へ直接報告する方がよろしいのでは?」
「いえ、グワジール元宰相が失脚した今、実務の最高責任者は執務官代理になります。先にこちらに報告が上がるのは当然でございます」
お父様が王国のナンバー3でグワジール元宰相が失脚したから、代理の私が王国のナンバー2の代理ってこと!?
責任重大ですわ!?
……ダンジョン、前世でゲームの金策でずっとダンジョンに潜ってたりしてたわね。
金策……これですわ!
「エルミーナ秘書官、騎士団のところへ行ってまいりますわ」
「はい、かしこまりました。行ってらっしゃいませ」
私は騎士団の訓練所に向かった。
ちょうど騎士団の人たちが訓練をしていた。
フィーリア騎士団長が私に気づいてこちらに来てくれた。
「メリア様、何か御用でしょうか?」
「ええ、ダリアとアリスをお借りできないでしょうか?」
「構いませんが、理由をお聞かせください」
「最近発生したダンジョンの調査へ行こうと思いますの」
「ダンジョンですか? 危険では……」
フィーリア騎士団長は私の表情を見て「はぁ」とため息をついた。
「かしこまりました。ダリアとアリスを帯同させましょう」
「フィーリア騎士団長、ありがとうございます」
フィーリア騎士団長は、ダリアとアリスを呼んでくれた。
事情を説明して一緒にダンジョンへ行くことを了承してもらった。
ミリーナとカーナにも声をかけて一旦執務室へ戻る。
執務室へ戻ると、エルミーナ秘書官は驚いた顔で話しかけてきた。
「執務官代理、今から何をされるのでしょうか?」
「今からダンジョンの調査へ行ってきますわ。ノエルも連れていきます」
「か、かしこまりました。お気をつけて行ってらっしゃいませ……」
エルミーナ秘書官は状況が理解できないまま私たちを見送った。
私たち6人は馬車を飛ばし発生したばかりのダンジョンへ向かっている。
「ダンジョン、胸がたかなりますわ!」
アリスは戦闘したくてうずうずしているようだ。
わかりますわ、私もワクワクが止まりませんもの。
「しかし、ダンジョンですか。貴族学校のダンジョン試し以来ですね」
ダリアが懐かしそうな表情で話す。
ダンジョン試しとは、いわゆる肝試しのようなものだ。
学生用に最弱のダンジョンを使って授業の一環としてダンジョン試しは行われている。
「魔鉱石、鉄鉱石や……楽しみでございますね。うふふ」
「不思議なキノコなど生えているかしら」
ミリーナとカーナは研究熱心ですわね。
素材のことから頭が離れないようだ。
問題のダンジョンに到着すると、二人の兵士が入口で門番をしていた。
「誰だ!」
二人の門番が警戒をしている。
「私、メリア・アルストール。執務官代理でございますわ。ダンジョンの調査に来ました」
「私は、ダリア・エルシュミット。副騎士団長だ。騎士団の許可も得ている」
……え、いつダリアが副騎士団長になったの?
「はっ、大変失礼いたしました。お通りください」
兵士に敬礼されながら、私たちはダンジョンに入っていく……。
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