サイネリア王国武術大会、最強は誰だ?
サイネリア王国が再建されて王国の民の生活も安定してきた。そこで、王国の民に娯楽を提供するということでサイネリア王国主催の武術大会を開催することになった。
企画の発案は私だ。大会は、各部門で1対1のトーナメント形式で行う。
王国で大会に使用するコロシアムを建設することになった。収容人数は5万人ほどを想定している。今、まさに私主催の王国会議をしているところだ。
「観客の導入にチケット制を導入いたしましょう」
私が提案すると、他の人たちは一様に首をかしげる。
「メリア執務官、『チケット』とはどういうものなのだ?」
ブルセージ宰相が私に質問する。
「こちらがサンプルの『チケット』というものです。念の為、偽造ができないように魔法工学の技術を使って特殊加工をしております」
私はサンプルのチケットを会議の参加者全員に配った。みんな物珍しそうにサンプルのチケットを凝視している。
装飾もかなり凝ったものにして豪華さもアピールしている。
「おお、これが『チケット』というものじゃな。これをどうするのじゃ?」
国王陛下も会議に参加している。理由は面白いことを開催するのに仲間はずれはするなということだった。
「はい、この『チケット』を各街の商店に置いてもらい販売するのでございます。武術大会当日に『チケット』を持っている者だけがコロシアムに入場できるということにいたします」
会議の参加者から「なるほど」という言葉が飛び交った。
「あと、こちらに『チケット』が本物か偽物かを判別する魔道具をカーナの魔法工学研究所に作らせました」
私は本物のチケットと偽物のチケットを用意してデモンストレーションをする。
「右手の『チケット』は本物でございます。左手の『チケット』は偽物でございます。こちらの魔道具を『チケット』にこうやって向けてかざします」
本物のチケットに魔道具をかざすと魔道具に付いている魔石が青く光り、偽物のチケットに魔道具をかざすと魔石が赤く光った。
「メリア執務官、これは素晴らしい。これならば不正にコロシアムに入ろうとする者を防ぐことができよう」
「ブルセージ宰相閣下、ありがとうございます。大会当日の警備体制は騎士団に一任ということでよろしいでしょうか」
「はい、かしこまりました。私ども騎士団にお任せくださいませ」
フィーリア騎士団長は快く承諾してくれた。今回の会議で話すことは以上となった。
「それでは、これで武術大会の会議は終わりとなります」
会議は解散となり、明日からチケットを販売することとなった。開催日はコロシアムが完成する2ヶ月後だ。
数日後、嬉しいことに販売したチケット5万枚が完売してしまった。こんなに反響が大きいとは予想以上だ。中にはチケットを買えなくてがっかりしている人もいるらしい。
私はもっとたくさんの王国の民に楽しんでもらえる方法を考えた。
音声を送る王国放送という仕組みはすでに出来上がっている。映像も送ることができる魔法があるか、私は賢者様の書物を読んで調べた。
すると、賢者様が創成した魔法が存在した。魔法名は『テレビジョーン』だった……。賢者様のネーミングセンスもなかなかですわね。
私は数日かけて『テレビジョーン』を扱えるように修練をした。『テレビジョーン』を習得すると、私はカーナと『テレビジョーン』の魔法を使って魔道具に反映できないか相談することにした。
サイネリア号の建造は順調に進んでいて、カーナたちは王宮に戻っていた。
ちなみに、サイネリア王国の壱番艦の名前は王国の名前を使いサイネリア号となった。私が考えた名前は全て却下されてしまった。
無念でございますわ。
「カーナ、ごきげんよう」
「メリア執務官、ごきげんよう」
私とカーナが挨拶を交わすと、すぐに本題に入った。
「カーナ、私の魔法をお見せするので新しい魔道具を開発をお願いできますでしょうか」
カーナは星のように目をキラキラ輝かして私を見る。私は『テレビジョーン』の魔法を見せて、王国放送のようにできないか相談した。
「かしこまりました。試作品が出来ましたら、メリア執務官のお力が必要でございます。その際はお呼びさせていただきます」
「ええ、結構ですわ。楽しみにしておりますわね」
私とカーナで何度も試行を重ねて、王国放送の装置を更にバージョンアップさせた装置が出来上がった。
ただし、音声を送るだけと違って欠点がある。それはかなりの魔力が必要ということだ。
私は来賓として大会を観戦するだけなので、大会当日は私が魔力供給することで欠点を補うことができそうだ。
省魔力化は今後のカーナの課題となった。
◇2ヶ月後
王国中の王国放送の装置をバージョンアップさせ、サイネリア王国主催の武術大会の中継も問題なく行えるようになった。
私はカーナに大会の実況中継をしてもらうようにお願いした。
『それでは王国のみなさま、お待たせいたしました。サイネリア王国主催、武術大会の開催を宣言します』
うぉぉぉぉとコロシアム中が歓声で響き渡る。
私は来賓席にいる。国王陛下やセシルも一緒だ。
私は観戦をしながら、カーナが用意した装置を握り魔力を供給する。
ちゃんと映像が届けられているかしら。
『大会を開始致しますので、参加者は競技場にお集まりください』
競技場に冒険者など猛者たちが集まってくる。その中にフィーリア騎士団長、アリス、ダリア、ノエルの姿があった。
予想通り、他の参加者と比べて4人は圧倒的強さだった。観戦者は盛り上がっているので良しとしましょう。
結局、準決勝はフィーリア騎士団長対アリス、ダリア対ノエルとなった。
『それでは、準決勝第1試合。フィーリア選手対アリス選手、試合開始!』
「騎士団長、本日は手加減ご無用ですわ」
「ああ、当たり前だ。全力でいく!」
フィーリア騎士団長はレイピアで柔の剣士で、アリスは両手剣で剛の剣士だ。フィーリア騎士団長の素早い攻撃をアリスは剣で受け止める。
アリスは隙を狙って豪快に剣を振るう。しばらくは一進一退の攻防が続く。
しかし、勝負の終わりは不運にもきてしまう。
フィーリア騎士団長のレイピアが折れる。隙を逃さず、アリスは剣をフィーリア騎士団長の首元に寄せる。
「アリス、私の負けだ」
『勝負あり! アリス選手の勝利です!』
うぉぉぉぉぉぉとコロシアム中の歓声がこれまで以上に響き渡る。
フィーリア騎士団長と、アリスが闘技舞台を降りると、ダリアとノエルが闘技舞台に上がってきた。
『それでは、準決勝第2試合。ダリア選手対ノエル選手、試合開始!』
ダリアの武器は、フィーリア騎士団長と同じでレイピアだ。
ノエルの武器は、鍛冶職人に無理を言って作ってもらった刀だ。ちなみに危ないので刃はなくしてある。
「ノエル、負けませんわ」
「ええ、私もですわ」
ダリアもスピード重視だ。しかし、決着はあっという間だった。
ノエルは流れるような剣さばきでダリアの剣をいなしながら間合いを詰めて一本を取った。
「ノエル、私の負けでございます」
ダリアは負けを認め降参した。
『勝負あり! ノエル選手の勝利です!』
予想外の早い決着で一瞬歓声が止むも、すぐに歓声があがった。ノエルの流れる動きはうっとりしますわ。
そして、休憩時間を挟んだ後、アリスとノエルの決勝戦が始まる。アリスとノエルは闘技舞台に上がっていく。
『最終試合、決勝戦でございます。アリス選手、ノエル選手、試合開始!』
剣聖のアリスが勝つか、私の秘書官のノエルが勝つか面白い対戦カードになりましたわ。
試合開始直後、アリスが仕掛けてくる。ノエルは上手くいなし反撃に出るがアリスに上手く剣で受け止められてしまう。
「ノエル、さすがメリア様の愛弟子。なかなかやりますわね」
「アリスこそ、素晴らしいですわ」
アリスは剣聖として素晴らしい。だが、真っ直ぐすぎる剣技だからこそノエルに上手くいなされてしまう。
アリスは全力を込めて両手剣を振り下ろす。ノエルはアリスの攻撃を下から受けるように刀を振るう。キシンっと金属がぶつかる音がする。
しかし、ノエルの攻撃はそこで終わりではなかった。アリスの斜め後ろにノエルは位置取り、刀をもう一振りしてアリスの後ろ首を捉えて寸止めした。
アリスの顔から汗が滴ったのがわかった。どちらかというと冷や汗に近い汗だ。
「私の負けでございます」
アリスは片膝をつき、降参した。
『勝負あり! ノエル選手の優勝です!』
ノエルは今日一番の大歓声に包まれる。さすが私が鍛えたノエルですわ。
そして、国王陛下の一言を頂き武術大会は無事に終わりを告げた。
今回の大会で騎士団の強化が必要ということになり、私が騎士団の育成メニューを作成した。
しかし、スパルタすぎると騎士団から苦情が来たので、もう少し優しいメニューにしてあげた。
私って、そんなにスパルタなのかしら?
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