カーナの開発した魔動トロッコで環境改善ですわ!

 私たちは王宮へ戻ると、まっすぐに国王陛下の自室へ向かった。


 捕えたザンネーム王国の王子と工作員たちはそのまま牢獄へ連れていかれた。

 

 国王陛下の自室の前に着くと、フィーリア騎士団長がノックをする。


「許可する」


「失礼いたします。セシル王女様とメリア執務官代理をお連れいたしました」


 私とセシルが国王陛下の自室に入っていく。


 ノエルは執務室に戻ることになった。


 室内は国王陛下とセシルとフィーリア騎士団長と私だけになった。


「お父様。私の軽率な行動、本当に申し訳ございませんでした」


「もう良い。セシルが無事であればそれでいい」


 国王陛下は優しい眼差しでセシルと私を見る。


「メリアよ、我が娘を助けてくれてありがとう」


「そんな、国王陛下。頭をお下げにならないでくださいませ」


 私は国王陛下に頭を下げられておどおどしてしまった。


「いや、其方がいなければこの王国も娘もすでになかったかもしれない。礼を言わせてくれ」


 私には国王陛下の感謝を受け取るという選択しかできなかった。


 その後、ザンネーム王国の王子と工作員たちとの一件と、決闘で私とセシルが婚約することになったことを報告した。


 王子と工作員たちは捕虜として拘束して、外交のカードとして使うことになった。


 現在、宰相が失脚したことによって今すぐに事を起こすのは難しい。


 せめてお父様が目覚めてくれればという淡い期待しかない。


「お父様、メリアとの婚約の件は……」


「うむ。今は王国の再建が最優先だ。反対はしない、しばらく保留としてもらえぬだだろうか」


「はい、それはわきまえております」


 セシルが私の方を向いたので、私は「大丈夫よ」と頷く。


 セシルは私の顔を見て安心したようだ。


 私たちのやりとりに国王陛下は優しい笑顔を見せた。


「本当に二人は仲が良いのだな。二人が手を取りあえば、サイネリア王国は世界一幸せな国になるであろう。あとはブルセージが目を覚ましてくれるのを待つばかりじゃ」


 私は賢者様の書物を解析中である。


 この世界にはまだ延命させ続けられる医療技術はない。


 一日も早く解読をして、お父様を目覚めさせなければいけない。


 そうでなければ……。


 こうして、しばらくは私とセシルは、王国再建のために公務にそれぞれ励むことになった。

 


 翌日からは大忙しだ。


 残念王子のせいで無駄になった時間を取り戻さないといけない。


 まずは鉱山の運営からだ。


 採掘士と失業者を募集をして鉱山の採掘所の整備を始める。


 鍛冶工房にレールとトロッコを用意させ、着々と環境を整えていく。


 しかし、普通のトロッコでは効率が悪い。


 ここはカーナに相談ね。


「ノエル、魔法工学研究所に行ってきますわ。カーナに相談がありますの」


「はい、かしこまりました」


 私はノエルに一言声を掛けて魔法工学研究所のカーナのところへ行く。


「カーナ、ごきげんよう」


「メリア様、ごきげんよう。何か御用でしょうか?」


「ええ、カーナに作ってもらいたいものがございますの。魔石を使って自動で動くトロッコを作って欲しいの」


 私の魔力は有り余っている。


 魔道具を動かす魔力提供は喜んでしますわ。


「かしこまりました。その程度なら1日で作れると思います」


「一応、複数台作ってもらうつもりですけど、大丈夫かしら?」


「ええ、問題はございません」


 カーナは自信満々な顔で返事をした。


 頼もしいかぎりだ。



 翌日、本当に5台の魔動トロッコを完成させたと報告が上がってきた。


 カーナは仕事が早いわね。


 魔動トロッコは魔力が尽きたら魔石の交換が可能の便利設計だ。


 しかし、採掘所の整備が終わっていないのでしばらくは倉庫の中に眠らせることになった。


 10日ほど経つと採掘所の整備が終わり採掘作業が可能になった。


 私とカーナは魔動トロッコの設置と取り扱いの説明のために鉱山へ向かう。


 現地に到着すると、兵士や採掘士たちが出迎えてくれた。


「メリア執務官代理、カーナ様、ようこそお越しくださいました。新しいトロッコを用意くださったと聞いております」


 付き添いの職員たちが一生懸命に魔動トロッコを設置していく。


 私が手伝うと「怪力公爵令嬢」とバレてしまうので自重した。


 カーナが採掘士たちに魔動トロッコの使い方を説明する。


「黒いボタンを押すと動きます。赤いボタンを押すと止まります。こちらの魔石の魔力が尽きると動かなくなります。魔力が尽きたら予備の魔石と交換してください」


 カーナは実際に魔動トロッコを動かしてみる。


 採掘士たちは「すげぇもんだなぁ」と感心していた。


 採掘所を管理する兵士に予備の魔石を渡して保管してもらう。


 魔力が尽きた魔石は王宮へ持ってきてもらい補充することになった。


 私たちはしばらく作業がどのようになるのか視察をすることにした。


 思った以上に採掘が捗っているようで安心した。


「メリア執務官代理、本当にありがとうございました。失業者の仕事も与えてもらったばかりか、昼食まで用意していただけるなんて。何度感謝しても足りないくらいです」


 代表者だけではなく、採掘士たち全員から感謝された。


 執務官代理としての当然の責務ですわ。


 採掘作業は住み込みではなく、大きな馬車を作らせて自宅から通えるようにしている。


 昼食は王宮の予算で全員に提供している。


 管理棟もしっかりと建てて、兵士は交代制で日中夜警備をしている。


 後で採掘量の報告を受けたのだが、予想以上の採掘量で金策は大成功だ!



 私たちは採掘所での視察も終わり馬車で王宮へ戻っている。


「カーナ、魔道トロッコを作ってくれてありがとう。採掘士たちは大喜びでしたわ」


「いいえ、メリア様がいろいろと提案やアドバイスをしていただけたお陰ですわ」


「それでは、カーナに次のお願いをしてもよろしいかしら?」


「もちろんでございますわ。どんなものが開発できるのかワクワクいたします」


 私はカーナに作ってもらいたいものを2つお願いした。


「かしこまりました。1つ目のものはそれほど時間がかからず作れると思います。もう一つは大がかりな作業になりますね」


「ええ、セシルにお願いして場所を確保いたしますわ。こちらはそんなに急ぎではないので、1つ目を優先にお願いしますわ」


「はい。お任せください」


 カーナの目がキラキラに輝いている。


 どちらかというと2つ目のお願いに対して興奮しているようだ。


 1つ目のお願いは農業の工作機の開発だ。


 2つ目は王国の再建が果たされた後にお披露目しようと計画をしている。


 王宮に到着すると、カーナと別れて執務室へ戻る。


「ただいま戻りました」


「メリア様、お帰りなさいませ。先ほどミリーナがご報告があるとのことで執務室に来られましたがどういたしましょう?」


「ええ、私が王宮植物研究所にまいりますわ」


「はい、承知いたしました」


 ミリーナの報告ということは、おそらく農産物のことね。


 何ができるようになるのか楽しみですわ……。

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