はじめてのお友達は王女様!?
お勉強やお稽古でわかったこと……。
自重と手加減を覚えることよ!
お勉強はもう手遅れでしょう、ガンガン進むしかないわ。
剣の鍛錬は、デク人形を壊さないようにする練習をするしかないわね。
魔法の鍛錬は、ミリア先生が教えてくれた魔力コントロールの練習をするしかないわね。
悪目立ちしないで生活できるようにすることが当面の課題よ。
頑張らなきゃ。
今後のことについて考えていると、トントンとノックの音が鳴る。
「メリアお嬢様、よろしいでしょうか」
「どうぞ」
セリアがわたしの部屋にやってきた。
「メリアお嬢様にご報告がございます。本日、数刻後に第1王女のセシル・フォン・サイネリア様がお見えになられます」
セシル・フォン・サイネリア様は、ここサイネリア王国の第1王女様である。
「セリア、第1王女様がどのようなご用件でお越しになられるのですか?」
セリアは少し困った顔を見せる。
「申し訳ございません。理由など詳細は存じ上げておりません」
そのせいで今日は屋敷中が慌ただしかったのね。
「ブルセージ様は王宮に行っていらっしゃるので、セルビア様とメリア様で御面会をしていただくことになっております」
「わかりました。セリア、王女様にお会いするに相応しいお洋服に着替えさせていただけますか」
「かしこまりました」
セリアだけでなく数人の使用人がわたしの部屋に入ってきた。
王女様をお迎えする準備が始まった。
お着替えが終わる頃、お母さまがわたしの部屋にやってきた。
「メリア、準備は整っているかしら?」
「お母さま、大丈夫ですわ。セリアたちにお手伝いいただいて準備は整っております」
お母さまはさっとわたしを見回して「問題ないわね」と呟いた。
数刻すると、馬車の音が近づいてくるのが分かったと使用人が知らせてくれた。
わたしとお母さまは屋敷の玄関口で王女様がお越しになるのを待っている。
馬車が到着し玄関口につけると、赤髪のロングストレートの美少女が降りてきた。
年齢的には、わたしと同じくらいでしょうか。
オーラというか優雅さが素敵で見惚れてしまった。
「お初にお目にかかります。セシル・フォン・サイネリア第1王女様。私は、ブルセージ・アルストール公爵の妻、セルビア・アルストールと申します。こちらは娘のメリア・アルストールです」
「ご挨拶を」とお母さまから目線で合図が送られた。
「お初にお目にかかります。セシル・フォン・サイネリア第1王女様。私は、メリア・アルストールと申します。以後、お見知りおきを」
わたしとお母さまは、スカートの裾を軽く上げ優雅に挨拶をした。
「初めまして。私は、セシル・フォン・サイネリアです。本日は非公式の訪問ですので、それほどかしこまらなくてもいいですわよ」
王女様も優雅に挨拶を返してくれた。
そして、護衛の女性騎士が事情を説明してくれた。
「急で申し訳ございません。王女様はアルストール公爵家の令嬢と同じ歳なのです。交友をしたいというお望みで来させていただきました。ブルセージ様もご承知でございます」
なんと、王女様の希望で遊びにきたということらしい。
また、王様とお父様とは親しい間柄であることも理由の一つらしい。
「ですので、セルビア様はゆっくりなさってください。私がお二人の護衛をさせていただきます」
「かしこまりました。担当の使用人がおりますので、何かあったらお申し付けください」
これから、わたしと王女様でお茶会をすることになった。
「王女様、こちらにお掛けになってくださいませ」
わたしは、テーブルまで王女様を案内する。
女性騎士は、王女様の斜め後ろに控えている。
「では、わたくしも失礼いたしますわ」
わたしと王女様がテーブルにつくと、ちょうどいいタイミングでセリアがお茶のセットを乗せたワゴンを引いて部屋に入ってきた。
このタイミングの良さ、セリアは素晴らしいわ。
「王女様、それではお茶にいたしましょう」
わたしはお茶とお菓子を一口ずつ食べてみせ、王女様に勧める。
王女様はいきなりびっくりした顔をした。なにか間違ったのかしら?
「王女様、これは貴族のマナーでございます。お茶やお菓子に毒がないことを示してから客人におすすめするのが基本となっております」
女性騎士が、小さい声で王女様の耳元でささやいた。
王女様が「なるほど」と頷いた。
「失礼いたしましたわ。わたくしもまだ社交界へ出ておりませんので不慣れでしたわ」
王女様はそう言って、お茶とお菓子を口にする。
お菓子が美味しかったのか、王女様の顔が和んだのがわかった。
「美味しいお菓子だわ。ねぇ、あなたを『メリア』って呼んでもいいかしら? もちろん、わたくしも非公式の場では『セシル』と呼んでいただいて構わないわ。話し方も少しくだけて欲しいわ」
「わかったわ、セシル」
わたしが「セシル」と発すると、セシルがとても無垢な顔で微笑んだ。
惚れてしまうって。
はじめてのお友達が、王女様のセシルだなんて想像もしてませんでしたわ。
でも、国王様とお父さまも親しい仲と聞いているので、いずれそうなっていてもおかしくないわね。
こうして、王女様ことセシルとの一日が始まるのであった。
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