貴族学校卒業、そして幸せの終わり?

 私は、セシル、ノエル、ミリーナ、アリス、カーナ、ダリアと6年間と仲良く幸せな日々を過ごし、とうとう12歳になった。


 明日は私の貴族学校の卒業式である。


 今夜は久しぶりに家族全員で夕食をとっている。


「メリア、明日は卒業式だね。父として立派に育ってくれて嬉しいよ」


 お父様の過保護ぶりは健在である。泣いて喜んでいる。

 明日はどうなってしまうのやら。


「メリア、6年間も首席を守り抜くなんてとても名誉なことだわ」


「そうだな。メリアは、アルストール家の誇りだ。うぅぅ」


 お母様がなだめても今回はなかなか治らないみたいだ。


 12歳になった私は家族全員が食事が終わるまで一緒にいる。


 幼い頃は「もう大人の時間よ」とばかりに退席させられていた。

 

 最近は、お父様の仕事が忙しいらしく一緒に食事を取れる機会が少ない。


 お父様のお体が心配ですわ。


 食事が終わると、私の部屋に戻る。


 セリアが待機していてくれて私の着替えをしてくれる。


「メリアお嬢様、久しぶりの家族揃ってのお食事はいかがでしたでしょうか」


「ええ、少しお父様が心配でしたが、とても楽しい夕食となりましたわ」


「それはようございました」


 セリアはずっと私の専属使用人として仕えてくれている。

 とても感謝している。だけど……。


「セリアには素敵な殿方はいないの?」


「いいえ、私は一生メリアお嬢様にお仕えすると心に誓っております。ご心配はご不要でございますよ」


「セリア……。ありがとう」


 セリアにとっての幸せは、私に仕えることのようだ。


 こちらの世界は結婚イコール幸せとはならないのが現実らしい。

 前世の世界でもあまり変わらないかな……。


 着替えが終わりベッドに入ると、セリアが優しく布団をかけてくれた。


「それでは、メリアお嬢様。おやすみなさいませ」


「おやすみ、セリア」


 セリアは部屋の灯りを消して、部屋を出て行った。



 翌朝、朝食を済ませ出発の時間となった。


 お父様とお母様も一緒に馬車で学校へ向かう。入学式以来だ。


 春を彩る王都の景色を眺めながら馬車は進む。


 貴族学校に到着すると、お父様とお母様とは別れ教室へ向かう。



「セシル、ごきげんよう。卒業おめでとう」


「ごきげんよう、メリア。とうとう一度も首席を取れませんでしたわ」


 私とセシルが顔を合わせて笑い合う。

 

 セシルはとても美しい女性に育ちましたわ。

 殿方が放ってはおきませんわね。


 実は、セシルには婚約者がいるらしい。

 ザンネーム王国の第2王子がお相手のようだ。

 宰相が激推しの政略結婚だ。


 サイネリア王国には王子が生まれていない。

 王位第1継承権はセシルで、女王として国を治めることになる。

 王妃様は継承権を放棄しているらしい。


「セシル様、メリア様、ごきげんよう」


 ノエルがやってきて挨拶をする。ミリーナたちも続々とやってきた。


 『ごきげんよう』とお互いに挨拶をする。全員晴々しい顔をしている。


「とうとう卒業式でございますね。まさか私が3位で卒業できるとは思いませんでしたわ」


「私もですわ。メリア様にはお世話になりっぱなしでしたわ。感謝しかございません」


 6年間の成績上位4位までは不動だった。

 首席は私、2位はセシル、3位はノエル、4位はミリーナのままだった。

 5位から7位は凌ぎ合いだった。

 最終的にダリアが5位、カーナが6位、アリスが7位だった。


「うぅぅ、最後にダリアに抜かれましたわ。悔しいですぅ」


「最後は死ぬ気で勉強と稽古をしましたわ。うふふ」


 ダリアはカーナに対して勝ち誇っている。

 二人の仲の良さっぷりは癒されますわ。


「私は剣一筋ですから」


 アリスはいつもマイペースですわね。


 卒業式の準備が整ったので、順次式場へ向かう。

 Sクラスは最後のようだ。


 在校生や親たちで会場はぎっしり埋まっていた。

 私たちが席に着くと、全ての扉が閉められ卒業式が始まる。


 一人ずつ卒業証書が学長から手渡される。


『卒業証書授与。Sクラス、メリア・アルストール』


「はい!」


 首席卒業の私が一番最初だ。

 セシル、ノエル……と続いていく。


 全員の授与が終わると代表挨拶になる。


『卒業生答辞。代表、Sクラス、メリア・アルストール』


 私は壇上へ上がり会場全体を見渡す。

 全ての視線が私に向けられている。お父様は大洪水だ。


「春の訪れを感じる今日、私たちは6年間の学校生活を終え、卒業を迎えることとなりました。諸先生方、ご指導をしていただきありがとうございました。在校生の皆さんも貴族として誇りを持って文武共に励んでください。6年間、本当にありがとうございました。代表、Sクラス、メリア・アルストール」


 答辞が終わると会場中が盛大な拍手に包まれた。

 またお父様の姿が目に映ってしまって笑ってしまった。


 こうして、無事に私たちは貴族学校を卒業をした。



 これからは各々の与えられた部署で見習いとして王宮に勤めていくことになる。


 セシルは王女として外交活動に忙しくなるようだ。


 私とノエルはお父様の部署へ配属となった。


 ミリーナは王宮植物研究所へ配属となり、植物や農業に関しての研究をする。


 カーナは魔法工学研究所へ配属になり、魔道具の開発をしていくことになる。

 

 アリスとダリアは騎士団所属となり、フィーリア騎士団長からみっちり鍛えられているらしい。



 しかし、私が初めて王宮に出勤すると異常事態が発生していた…………。


第1章 完


□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□□


第1章を最後までお読みいただき、ありがとうございます。


次回からは第2章となります。


引き続き、よろしくお願いいたします

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る