第5話
■■■はアメリアの胸に刺した剣を引き抜いた。普通だったら、五秒もしないで生き返るものだがアメリアの体は白い光を発したまま動かない。
「少し遅かったかもな·····」
アメリアの今までを見てきたら、後少し早くこうするべきだったかもしれないと■■■は思った。
「まあ、後はなるようになるのを待つだけか。しっかり導いてやってくれよ" "」
■■■はある人物の呼称を呟いた。
▼▽▼▽▼▽
アメリアはどことも知れない場所に居た。周りは真っ白で自分が浮いているのか立っているのかも分からない。
ただただ、白い空間が広がっている。
(どこまで行けば····)
そう思いながら歩いていたアメリアだったが、突然視界が狭まったかと思うと白い空間から闇が溢れ、玉座の形を象ったかと思うと、闇は玉座を包み込み花のように開いた。
玉座には一人の女性が静かに座っていた。
アメリアは息を呑む。座っている女性があまりにも、この世のものとは思えない程美しかったからだ。
風も吹いていないのに、その空色の長い艶やかな髪は宙を舞っている。憂い気に伏せられた瞳は全てを見透かすかのような稲穂色。
その砂時計のような身体に纏っているのは、一つの穢れも許さないと言わんばかりの純白の衣。
おまけに、その女性の周りの空気は常人が息をするのを憚られる程神々しい。
『死』を司る神『ソルアテク』。
その美貌の神は、玉座を立つとアメリアの目の前まで音も立てずに歩いてきた。
アメリアは瞬きもせずに、自分に向かって歩いてくる全ての美の体現を見つめる。自然と、膝は床に着いていた。
「貴方が近代の不死の聖女ね」
桜色の唇から漏れ出たのは聞くのも烏滸がましい程、どこまでも透き通った天上の美声。
「そうですが」
アメリアは床に膝を着いたまま答える。
「跪かなくてもいいわ。立ちなさい」
「はい」
アメリアの肩から重圧のようなものが消え、軽くなる。稲穂色の瞳がアメリアを見つめた。
「■■■から聞いていたけれど······ふーん、こうする方が手っ取り早そうね」
「え?」
ソルアテクはそう言うと、手を上にあげ、下に向かって振り下ろした。
瞬間、白い煙のようなものが辺りに満ち、アメリアを包んだ。
煙が消えた後にソルアテクはおらず、代わりに居たのは―――――
「·······おかあ、さん?」
アメリアの家族だった。
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