第11話
「誰かと一緒にいるといのも悪くありませんね」
誰もいない部屋で1人呟く。今日はとても有意義だったとアメリアは感じた。ララの事をアメリアはとっくに友人だと思っていたが、こうして友情を確認できる時間というものがこれ程、素晴らしいものだとは思っていなかった。
こうして友人との買い物、という初めての体験をしたアメリアはその夜、ぐっすり眠った。
▽▼▽▼▽▼
――― 殲滅戦まで後6日 ―――
「アメリア!もうちょっと手加減して!!」
「本気で来てと言ったのはそちらでは?」
買い物の翌日、アメリアは演習場でララと訓練をしていた。
アメリアからララを訓練に誘ったのだ。
『アメリア、成長したわね〜』
『.........行きましょう』
アメリアから誘ってきたという事実にララは感無量だった。
そして、今はどちらかが負けたら街で1番人気のスイーツを奢るという勝負の最中だ。
アメリアは基本的に勝負事をしない。では何故、勝負しているのかというと、
『アメリア、勝負しない?』
『しません』
『私に勝てたら街で1番人気のスイーツ奢ってあげ―――』
『やりましょう』
と、いうわけだ。甘い物に目がないアメリアはすぐに乗った。
口の勝負ではララの圧勝だった。
しかし、戦闘となるとララはアメリアに勝った試しがない。それなのに、勝負を仕掛けたのはアメリアが本気を出してくれないからだ。
アメリアは無意識でやっているようだが、ララにはアメリアが友人相手に剣を振るうのを躊躇しているように見えたのだ。
だから、スイーツを餌にアメリアの本気を引き出そうとしたのだが、
(ちょっ!今までのはなんだったの!?)
そう思うくらいには容赦が無くなっている。アメリアはどうしても、人気スイーツを食べたいのだろう。スイーツの力を舐め過ぎたララだった。
ビュッ!!!
木剣がララの頬を掠める。真剣ではないはずなのに当たったら死ぬと思うのは何故だろう。
瞬間、アメリアがララの視界から消えた。
気づけば、ララが持っていた木剣は宙を舞っていて、カランカランと地面に落ちる音が響いた。
「―――!!?」
「私の勝ちですね」
アメリアが勝利宣言をする。ララはただただ呆然としていた。
(えっ?今、どうやって!?)
全く分からない。ララは確かにアメリアから目を離していなかったはずだ。なのに、気づけば木剣はララの手を離れていた。
不死の聖女とほ他の聖女とで戦闘力が違うとは理解していたが、ここまでとは思わなかった。
自分もそこそこ強いと思っていたララだったが、アメリアを前にすれば、そんな自信は木っ端微塵に砕けてしまった。
「ここまで、圧倒的に負けるなんて.....」
「訓練に掛けた時間が違います。気にすることはありません」
「慰めになってないよ」
勝負をしなくてもスイーツは奢ろうと思っていたララだったが、次からは必ず勝負に負けたら奢ろうと誓う。
「負けちゃったな〜。よし、アメリア!殲滅戦終わったら、連れてってあげる!!」
「ありがとうございます」
ほんのり笑うアメリア。無表情がデフォルトのアメリアにしてはとても珍しい表情変化だ。余程嬉しいのだろう。
(まあ、いっか)
さっき誓ったことを早くも撤回しそうになるくらいには、ララはアメリアのことを可愛く思った。
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