第10話
街を歩くアメリアとララ。目指すのは、ララが普段よく通っている服屋だ。
アメリアが街に出たのは騎士団に入るため教会から出て来た時以来だ。その時もだったが、やたらと集まってくる視線が多い。
「なんか、凄い見られてるんだけど...」
「目立ちますからね。私達の容姿は」
淡々と言うアメリア。美少女2人が並んで歩いているのだ。目立って当たり前だった。
色とりどりの露店がずらりと並んでいる。食べ物に雑貨が並ぶ棚、あの怪しい占い屋。アメリアが教会を出た時と何も変わらない。
しばらく歩くと、レンガ造りの建物が見えてきた。
「着いた〜!ここが私の行きつけのお店だよ!!」
ララは何度もここに通っているのだろう。教会にいた時から、おしゃれに興味のある人だった。アメリアはそれを覚えている。
「こんにちは〜、いつもお世話になってますララです!今日はこの子に似合う服選んでもらっていいですか?」
「ララちゃんまた来たのね!ありがとう」
そう言って、店の奥から出て来たのは品の良さそうな女性だった。長い金髪を頭の上で纏めている。綺麗な空色の瞳を持った人だっだ。
「アメリアと申します。本日はよろしくお願いします」
「こちらこそよろしくね。私は、『エラ』というの。こんな綺麗なお嬢さんを着飾ることが出来るなんて私としても嬉しいわ」
柔らかい雰囲気を持った人だ。ララもこういところが気に入ってこの店に通っているのだろう。
「じゃあ、早速選ばせてもらおうかしら」
テキパキと服を選んだエラは早速、アメリアに着てもらおうと試着室まで案内した。
「アメリアー、どう?終わった?」
試着室の外からララが声を掛ける。
「もう少しです」
そして、―――
「うっわ」
試着室から出て来たのは目を見張るほどの美少女だった。
編み込みで頭の下あたりに纏められた輝くような白髪、淡い水色で白い花のレースに覆われた5部丈のAラインワンピース。肩の辺りがギリギリ見えない程度に透けていて、なんとも艶かしい。
おまけに、その白髪には花の形を象った金の刺繍の入っている髪飾りが刺さっていて、アメリアの白髪によく映えている。
顔の方も、エラが化粧をしたのかいつものアメリアではないようだ。頬が赤みがかっている。普通に化粧をしてはアメリアの白い肌には主張が強すぎて、合わないが、その点をエラはよく理解している。
唇の方も淡い桃色でよく似合っている。
「....どうでしょうか?」
アメリアが首を傾げる。その仕草だけで気の弱い男が失神するほどの破壊力がある。
「うーわー、着飾れば輝くと思ってたけどここまでとは....」
「私の最高傑作ですね」
エラはとても満足そうだ。やはり美少女を着飾るのは楽しいのだろう。目が輝いている。
「文句なし!アメリア、このまま街に出て男共を悩殺――」
「する必要がありません」
ララの発した言葉をアメリアが即座に遮る。ララは少し不満顔だ。街の人達がアメリアの姿を見て、どうなるか。その様子を見てみたかったのだろう。
「んー、男共がどんな反応するか見たかったのにー」
「碌な事になりません。第一、元の服を着たままでも面倒なことがあったじゃありませんか..」
その面倒なこととは、2人がこの店に着く前に起こった出来事のことだ。
エラの店を目指して歩いていた2人は途中、路地裏に連れ込まれそうになったのだ。どうやら、質の悪いナンパ集団のようで、どこかに連れていかれそうになった。
しかし、相手が悪かった。彼女達は、戦闘力がひょっとしたら騎士よりも高い聖女だ。そんなチンピラに負けるわけが無い。
結局、ナンパ集団はアメリアが出るまでもなく、ララの拳一発で退場していった。
そんな事があったから、アメリアは今着ている服で街に出ることを拒否しているのだ。
「むー、まあしょうがないわね。反応を見れないのが少し残念」
「ララは本当にイイ性格をしています」
「ホント!?ありがとう!」
「褒めていないのですが.....はぁ....」
アメリアは呆れる。ララは元々こういう性格だった。世話焼きで、欲に忠実で少々腹黒い。しかし、明るく優しい、困っている人がいたら迷わず助ける。そんな所をアメリアはとても尊敬している。
「じゃあ、エラさん!この服買っていくね!」
「え?ララが買ってくれるのですか?」
「そうだよ?」
「私もお金は持っています。わざわざ買って頂かなくとも」
「いーの、いーの。入団記念だと思って!それに、服買いに行こうって言ったのは私だからね」
こうなったら、ララは言うことを聞かない。折れる方が得策だ。
「....分かりました。では、お願いします」
「いえいえ、先輩に良いとこ見せてくれてありがとね!」
ここまで言われると、アメリアとしては何も言えない。本当に世話好きな友人だ。
アメリアは聖職衣に着替えると、ララと一緒に店を出た。
「お買い上げありがとうございました。またのご来店をお待ちしております」
エラが礼儀正しく頭を下げる。
「また来るねー!」
「また、来ます」
ララは大きく、アメリアは小さく手を振る。
アメリアは今でも「おしゃれ」というものに関心が持てない。しかし、こうして友人と穏やかな時間を過ごせるのなら、それも悪くないと思うのだった。
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