第9話

ロストの話が終わり、部屋に戻ったアメリア。殲滅戦まで後1週間だ。正直に言ってやることが無い。


アメリアには基本、何も無い日が今までほとんどなかったので、こういう時何をすればいいのか分からないのだ。

無論、教会にいた頃も休みはあった。しかし、アメリアの師匠がアメリアを引き回していたのだ。戦闘力が高いのもそれが原因だ。騎士団に入る前から魔物と戦わせたり、ひたすら模擬試合をしたりとそれはそれは大変だった。


そのおかげで、今では誰にも負けないような戦闘力を身につけたアメリアだが、その代わり一般人が持っているようなものが欠如している。

それは、趣味を楽しむ感覚やアメリアの年頃だったら興味があるような事への関心だ。


今この時も、アメリアの頭に浮かんだ暇の潰し方は「訓練」一択だった。


(殲滅戦に備えて訓練でもしますか....)


騎士団といっても、別に外に出ては行けない訳では無い。休日に街に出掛ける者も普通にいる。教会でも役目がない日は外に出てもいい。

ただ、アメリアがそういうことに関心が無かっただけで....


そういう訳で、演習場に向かおうとするアメリア。演習場に続く道を歩く。すると、


「あ!アメリアだ!!久しぶり〜」


と、金髪ショートで綺麗な紫紺の瞳を持った美少女がアメリアのいる方まで走って来た。


「ララ...」


アメリアはそのダイヤモンドような瞳を瞬かせる。走ってくるのはアメリアの数少ない友人である「ララ」だった。


「この前入ってきたのってアメリアだったんだ〜。凄い綺麗な子が入ってきたって聞いてたからもしかして、て思ってたけど

また会えて嬉しいよ!!分からないことがあったらなんでも聞いて!!」

「はい、私も会えて嬉しいと思っています」


珍しく口元を綻ばせるアメリア。一見、性格が反対に見える2人だが、アメリアとララの付き合いは結構長い。それこそ、アメリアが教会に来た時からずっとだ。

ララはアメリアのことをよく気にかけ、声を掛けていた。しかし、教会に来た時のアメリアは誰とも口を聞こうとしなかった。

そのため、最初のうちは無視され続けていたのだが、ある日を境にアメリアは少しずつだが、言葉を交わしてくれるようになったのだ。

そして、今ではアメリアの数少ない友人の1人となっている。

因みに、ララの方がアメリアより若干年上だ。



「私これから街に出掛けようかと思ってるんだけど、アメリアも一緒にどう?」

「....そうですね。これから訓練をしに行こうと思っていたのですが、それ以外にやることが思いつかなかったので丁度いいかもしれません」

「よし!じゃあ決定〜。アメリアのことだからその聖職衣以外、服ないでしょ?服買いに行こ!」

「.......確かにその通りですが」


ララの言う通りだ。アメリアは今着ている聖職衣何着か以外、服を持っていない。強いていうなら、寝る時に着る寝着もあるが、あれは普段着るものではない。聖職衣以外持っていないのは、アメリア自身がそれ以外必要ないだろうと思っているからだ。



「この服以外必要なのですか?」

「....まあ、いるか要らないかで言ったら、無くても困らないんでしょうけど。アメリアにも服を着るってのが楽しいって知ってもらいたいの!!」

「はあ...分かりました。では、行きましょうか」


ララは世話焼きだ。アメリアのような子を見ていると何かしてあげたいと思ってしまう。だが、


(前からアメリアのこと着飾ってみたかったのよね)


若干、自分の欲に忠実なところがあるのだ。アメリアもそこは見抜いているが、そこもララの個性だと割り切っている。


こうして、アメリアは友人と服を買いに行くという初めての体験をするのだった。


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