第4話

「え?ここで死ねって?」


今日も■■■に連れてこられたアメリアは礼拝堂に来ていた。そこで、■■■に殺すと言われたのだ。

普通に考えたら殺害宣言以外の何ものでもないが、■■■は真剣な目をしており、何かあるのではないかと思われた。

■■■が口を開く。


「ああ、お前はまだ両親の事を引きずっているだろ」


その言葉を聞いた瞬間、アメリアの顔から表情が消えた。


「それが何?」


口から漏れ出たのは凍えるような声。何故、■■■はアメリアの家族の事を知っているのか。


恐らく、教会の人物から聞いたのだろう。アメリアは家族を失ってから教会に引き取られた。■■■がアメリアを弟子にする時、その話を聞いていても可笑しくない。

だが、


「他人の口から私の家族の事を聞きたくない。貴方には関係無いことでしょ」


家族の死しか知らないただの他人が、知ったような口を聞かないで欲しい。この先にどんな言葉を続けるつもりなのか。


「確かに。私はお前の家族の事を何も知らないから、知ったような口を叩かれたら腹立たしく思うだろうな」


アメリアは■■■の次の言葉を待つ。その瞳は鋭く細められており、■■■を視線で射殺せんばかりだ。


「ただ、お前の今の在り方が気になっただけだ」


「私の在り方?」


「お前は無茶しすぎなんだ。大方、"自分だけ生き残ったからその罪を償わなくてはいけない"とか思ってるんだろ?」


「······それが何」


「そんな考えだといつか死ぬだろ。お前の考え方は、使命感の皮を被った自殺願望だ」


「···········」


「私はお前の師匠だ。師匠は弟子を導かなければならない。だから、お前は死なせない」


■■■は真っ直ぐな目をアメリアに向ける。そして、尚も言葉を続ける。


「この礼拝堂は、不死の聖女にとって最も大事な場所だ。不死の聖女になった者は全員、一番最初に死ぬのはここだと決まっている。····まあ、お前は既に何度も死んだみたいだが·······」


■■■は剣を取り出す。■■■はその切っ先を、アメリアの胸元に向けた。


「私がお前をここに連れて来た理由を教えてやろう。この礼拝堂は、『死』を司る神『ソルアテク』に繋がる通路みたいな物だ。不死の聖女がここで死ぬと、ソルアテクの元に導かれる。その後は·········まあ、実際に逝ってみたら分かる」


剣先がアメリアの胸元に微かに埋まる。そこまで口を閉ざしていたアメリアから困惑の声が漏れた。


「どういうこと?」


「ソルアテクに会ったら、家族の事を聞いてみろ。私からはこれだけだ」


そう言うと、■■■はアメリアの胸に剣を深く突き刺した。



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