第3話
『テティルサ』は思ったよりも粘った。アメリアが挑発をして突進させる。そして、疲れたところでとどめを刺す。単純明快な作戦だが、それしか今のアメリアには取る手段が無かった。
もう少し強ければ疲れるのを待たずに倒せるのだろうが、アメリアにはまだ早かった。
空はとっくに夕焼け色に包まれている。『テティルサ』と戦い始めた時はまだ、明るかったはずだが大分時間が過ぎたらしい。
「はぁ.....はぁ.....」
「んー、もうちょっと早く倒す必要があるな」
頭のてっぺんに剣が突き刺さっている『テティルサ』の死骸を見て■■■は呟く。
アメリアは肩で息をしており、疲労困憊という様子だ。
「よし、帰るか。アメリア、背負おうか?」
「一人で...歩ける....」
と、言いつつ本当に一人で歩けるようになるにはまだ休息が必要だろう。
「そうか、じゃあ帰る時になったら言え」
アメリアは首を縦に動かす。息も整ってきており、暫くしたら無言で立ち上がり■■■に向かって視線をやった。
「帰ろう!」
そう言うと、■■■はアメリアを背にして森の出口に向かって歩き出した。
それからというもの、■■■は頻繁にアメリアを誘いその度にアメリアは冷たい反応を見せた。
返す答えも拒否か無言のどちらかだったのだが、最終的には■■■に無理矢理連れていかれるのでそのうち、諦めて■■■が誘ってきた時は無言で準備をするようになった。
そんなある日。
「アメリア、礼拝堂で死んだ事は無いよな?」
「突然何?」
今日も今日とてアメリアを誘いに来た■■■は不思議な事をアメリアに聞いてきた。
「礼拝堂」とは、聖女達が神々に向かって祈りを捧げる場所であり、アメリアも何度か行ったことがある。
「いや、気になっただけだ」
それだけ言うと、■■■は何処かへ行ってしまった。
■■■はいつもより真剣な表情をしていた。礼拝堂で死ぬと何か起こるのだろうか。
ふと、アメリアは思った。
(私、あの人の名前知らない....)
アメリアは■■■の名前を聞いた事が無かった。思い返せば、初対面の時も■■■は名乗らなかった気がする。
どうでもいい。アメリアにとってはそんな事どうでもいいのだ。元から拒絶していた相手だ。名前なんて知らなくたってどうということは無い。
しかし、何故だかその疑問は喉に詰まったようにアメリアの中に残り続けた。
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