第2話
「ちょっと!降ろして!」
「我慢しろって」
■■■に抱えられたアメリアは教会の近くにある森に来ていた。
「わっ!」
■■■がアメリアを降ろす。アメリアは■■■に警戒するような視線を向けながらも、周囲の確認をしていた。
(森....確かここって、凶暴な獣が出るっていう....)
グオオオオオォォ―――!!!
ビクリと肩が鳴る。鳴き声のした方を見れば、金色の2対の眼がアメリア達のいる方をじっと見つめていた。
アメリアは反射的に起き上がり腰の部分に手を動かす。しかし、そこに剣の柄の感触は無く、ただ手が虚しく空を切っただけだった。
(抱えられた時落としたんだ....)
いくら厳しい訓練を詰んだと言っても、武器が無くては少女のか弱い腕があるだけだ。素早さはあるが、力が無い。アメリアの年齢では当たり前のこと。
(どうしよう....)
アメリアは必死に考える。■■■の事など既に忘却の彼方だ。幸い、木々が生い茂っているのでそれらを利用して逃げることは出来そうだ。
と、考えていたところ
「アメリア、初めての課題だ。この剣を貸すからあれを倒してこい!!」
■■■がアメリアに声を掛けた。そして、真剣を無造作に放って渡す。
アメリアは真剣をキャッチすると、■■■を怪訝な表情で見つめた。
「私があれを倒すの?」
「そうだ!」
「....何故、私が貴方の指示に」
「従わないと剣取り上げるぞ?」
「.........」
それは困る。非常に困る。剣があるのと無いのとでは大分違う。剣があればアメリアはあの獣に勝てるだろう。だが、無ければ永遠とあの獣と鬼ごっこをしなければならないかもしれない。
それはゴメンだった。死んでも生き返るが、生き返った時にあの獣がそばにいれば反撃すら出来ずに何度も殺されることになる。
それに、アメリアには目の前にいる女性が課題を拒否したら、自分を置いて行くような気がした。それくらいはやる気がする。いや、絶対する。そういう眼をしていた。
よって、
「......分かった、凄く不本意だけど」
「それでいい!あれは『テティルサ』というこの森の主だ。体力は多いが、攻撃は突進してくるだけで非常に動きが読みやすい。だから、避け続ければそのうち疲れる。そこを狙え」
「.......知ってるよ」
憎まれ口を叩いたのは、この女性に対する少しの反抗だ。アメリアは魔物だけでなく、森に潜む獣についても勉強していた。
その時にも『テティルサ』は見た事があったが、驚きの連続で忘れていた。
「ほら、こっちを見てる。瞳が青色になった時が突進する合図だ。気を付けろ」
二対の眼はまだ鋭くこちらを窺っている。その金色の眼が緑になり、青になろうとした瞬間
「跳べ!!」
■■■が声を出した。アメリアと■■■は咄嗟に木の上に飛び乗る。『テティルサ』が猛スピードで突進をした。
ぶつかった木が轟音を立てながら倒れる。
「アメリア、この課題を終わらせるまでは教会に帰らせないぞ!」
アメリアはその言葉を聞いて、心底嫌そうな顔をした。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます