第19話
「アメリア!こっち、こっちー」
白い壁の下半分に藍色の蔦のような模様が描かれている。入口は水色で、いかにも女性に人気がありそうな雰囲気といった店の前で、ララはアメリアに向かって手を振っていた。
チリン、チリン
ドアの上に付けられたベルが、客が入る度に愉快に鳴る。
「ここが、ララの言っていたお店ですか」
「そーそー。おしゃれでしょ!」
殲滅戦が終わって2日後、アメリアとララはこの街で1番人気のスイーツのお店に来ていた。
因みに、アメリアは、この前ララに買って貰った水色のワンピースを着ている。
「ちゃんと予約したから入ろ!!」
「はい」
ララはドアを開けて店の中に入ると、店員に声を掛けた。
「すみません、今日予約してたララです」
「お待ちしておりました。お席へご案内致します」
2人は席に着くと、メニューを眺め始めた。メニューは文字だけであるが、文字だけでも美味しそうなものは沢山あった。
「私、決めた!アメリアは?」
「では、これを」
アメリアが指さしたのは、この店でも1位、2位に人気があるスイーツだった。
お互いに注文を済ませた2人は、スイーツが来るまでの間、話をしていた。
「ララ、昨日は何かありましたか?」
「....ん?どうして?」
「いえ、雰囲気が少し暗い気がして。それと、予定を引き伸ばしたので何かあったのでは、と」
実は、この店には昨日来るはずだったのだが、ララの都合でキャンセルになり、今日に予約をずらしたのだ。
「あはは、何でもないよ〜。昨日は寝すぎただけだって!暗く見えるのは昨日寝すぎて、今日そんなに寝れなかったからじゃないかな?」
「....そう、ですか」
「くだらない理由で予定ずらしてごめん!心配かけちゃったね」
「何ともないなら良かったです」
そうこうして、話すこと十数分。
「お待たせ致しました」
店員の持ってきたスイーツに、瞳が輝くアメリア、「おお〜!」と声をあげるララ。
「美味しそう!」
ララが頼んだのは、「マルシュ」というしっとりした生地に何層もの甘いクリームと色とりどりのフルーツが挟まれたものだ。
対してアメリアは、サクサクのクッキー生地に甘い香りのする黄色のクレーム、甘酸っぱいフルーツをこれでもかと載せた「イサルシェ」というスイーツだ。
どちらも華やかで目に楽しい。
2人は早速、フォークで切った欠片を口に運ぶ。
「んぅ!美味しい〜」
「―――――!」
ララは幸せそうな顔をしながら、ゆっくりと食べている。アメリアは無言でフォークを動かす手が異様に早い。どちらも満足しているようだ。
「ララ、大変美味でした」
「アメリア食べるの早いねー」
アメリアは早々に食べ終わり、食後の紅茶を飲んでいる。ララはまだ食べ終わっていない。
「はぁ〜、満足満足」
「では、行きますか?」
「うん、そうだね」
食べ終わった2人は会計に向かった。
「また来ますね!」
「ありがとうございます。またのご来店お待ちしております」
店から出た2人は、それからも色々回った。お互いにお揃いの髪飾りを買ったり、可愛い小物を見たりした。そして、空が茜色になる頃には騎士団の寮に戻ってきていた。
「今日は楽しかったよ!また出掛けようね〜」
「はい」
ララは笑顔で手を振る。アメリアもそれに小さく振り返した。
ララの後ろ姿を見るアメリアの口元は本人が気付かない程ではあったが、確かに上を向いていた。
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