第17話
魔物はある少女を見ていた。白銀の剣を持ち、輝くような白髪を乱しながら剣を振る少女を。
あれは獲物だ。他の者に取られてはいけない極上の獲物。本能でそう思った。
意志が無いはずの頭に、本能なんて可笑しいかもしれない。しかし、魔物はこの時確かに"思った”のだ。
同胞を次々と切り裂く白薔薇のような少女を、この手で奪いたいと。
そう思ってからの行動は速かった。多くの同胞と戦っている少女の背後を狙い、額に持つ角を使って少女の胸に穴を空けようとした。
同胞と戦っている少女はそれに気付かず、そして――――
グサッ
真白の聖職衣に血が滲む。少女は他の魔物と戦う手を止め、何の感情も浮かばない瞳をこちらに向けてきた。
「....がはっ」
少女の口から血が溢れる。その血は、魔物が今までで見たどの血よりも美しかった。殺した人間や同胞のものよりも。ルビーレッドのようにどこまでも紅く輝いている。
少女は血を吐き、膝から崩れ落ちた。
その時、魔物は確かに自分の"意志”で、この少女を「食べたい」と思った。
倒れた少女に近づき、手を伸ばす。その歪な口元に笑みが浮かぼうとた、が――――
「....がぁ!?」
魔物は自身の胸に違和感がある事に気づいた。胸を見る。そこには、白銀に輝く刃が深々と突き刺さっていた。
倒れていた少女が顔を上げる。その瞳は、少女の血と同じように、どこまでも紅く輝いていた。
―――魔物が覚えているのはそこまでだった。
********
「ふぅ...」
アメリアは魔物に刺さった剣を抜き、血を払う。少しばかり油断をしてしまったと反省した。
「1回目...」
小さく呟く。これで今日、死んだ回数は0ではなくなった。アメリアは■■■からなるべく死なないように言い含めらているのだ。
何故だかは分からない。不死の聖女とはそういうものであるはずだ。なのに、■■■は死ぬなと言う。
アメリアはいつも不思議に思っていた。
(....今は戦闘に集中しなくては)
そうだ。まだ、戦闘は終わっていない。■■■からは騎士達に見つかりそうになったら、退却と伝えられていた。周辺に騎士の姿は見えない。戦闘は続行すべきだと、アメリアは判断する。
しかし、先程の戦いで周りにいた魔物はあらかた倒してしまった。これ以上となると騎士達のいる方向へ行くことになる。
(流石に、それはマズイ)
そう考えたアメリアは、早々に■■■の元へ戻ることにした。
ここは騎士達がいる場所よりは遠いが、見えないという訳では無い。
だから、アメリアは気付かなかった。
何名かの騎士がアメリアの方を見て、
「鮮血の乙女....」と呟いことに。
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