第2話
アメリアは教会から出ると、真っ直ぐにある場所を目指した。
歩く途中にあるのは、雑貨や食べ物の露店に怪しい雰囲気を出している占い屋。
アメリアはそれらに一切目を向けることなく歩き続けた。
――数分後――
目の前にあるのは重厚な扉。その端には2人の騎士がいる。アメリア来たのは騎士団がいる場所だ。
「今日、入団する予定の聖女、アメリアと申します。中へ通して頂けますか?」
「「.......」」
「あの?」
声をかけてみるが騎士2人はアメリアを見たまま動かない。その顔は心無しか少し赤い。
「あ、あーすまない!確かに今日聖女が来ると聞いている。証明書は?」
「はい、こちらを」
アメリアは着ていた衣の中から銀色に輝くカードを取りだし、騎士に見せた。
「よし、通っていいぞ」
「ありがとうございます」
アメリアが見せたのは、聖女であることを証明するためのカードだ。そのカードは聖女だけが持っている「聖力」というもので作られており、偽造は出来ないようになっている。
騎士に扉を開けてもらい中へ入る。扉が最後まで開き、中へ入る時、
「アメリア様ですね?ここからは私が案内させていただきます」
と、小柄な金髪の少女が声を掛けてきた。アメリアはそれに従い、少女のあとを付いて行く。
「こちらでございます。それでは失礼します」
連れてこられたのは繊細な彫りがあるドアの前だった。
金髪の少女は頭を下げると、元来た道を戻って行った。
コンコン
2回ノックをする。すると中から、
「入っていいぞ」
アメリアはドアノブを回してドアを開け部屋の中に入った。
「失礼します」
広いだけで特に特徴が無い部屋だった。執務机にソファー、1人用のベッド。入ってきたドアと比べるとなんだかちぐはぐな感じだ。
アメリアは執務机の椅子に座っている男を見る。
長い濃紺の髪をひと房に結んでいる。強い意志を感じさせる銀色の切れ長の瞳に引き締まっ体躯。誰がどう見ても美形だ。
その整った唇から言葉が紡がれる。
「君が新しく来た聖女か」
「はい、アメリアと申します。今日からこの団に入ることになりました。よろしくお願いします」
「アメリアか..分かった。それで、君の能力は?」
アメリアは深呼吸をする。いつだってこの能力を言うのには抵抗があるものだ。アメリアが持っている能力、それは―――
「『不死』です」
「『不死』か、珍しいな」
―――『不死』の能力
アメリアが持っているのは、不死という大変珍しい能力だ。この能力は死んでも生き返れるという、自然の理に反した能力だ。
「はい、ですので囮でも盾でもご自由にお使い下さい」
「......」
切れ長の目が一瞬細められたが、アメリアがそれに気づくことは無かった。
「まあいい、戦闘経験は?」
「徹底的に教育されているのでご安心を」
「そういえば、聖女の殆どは自分で戦えるな」
「教育されますので」
聖女の能力には3種類ある。
――1つ目は、毒を解析しその毒をなかったことにする能力
――2つ目は、できた傷を癒す能力
――3つ目は、アメリアが持っている『不死』の能力
聖女はどの能力を持つ者でも等しく全員、戦闘技術を憶えさせられる。それは、聖女達が戦場で活動することを前提に育てられているからだ。
特に、不死の聖女の戦闘力はこの3種類の能力を持つ聖女の中で一番高い。
毒消しの聖女や癒しの聖女は基本、後方にいることが多い。しかし、死なないということを活かして活動する不死の聖女はその特性上、前線にいることが殆どだ。そのため、足でまといににならない為にも不死の聖女にはとりわけ厳しい戦闘訓練が課せられる。
これが、不死の聖女が他の2種類の聖女より戦闘力が高い理由だ。
「なるほどな。あー、今日はもう疲れただろう。部屋で休んでいいぞ」
「はい」
アメリアは頭を下げて部屋を出た。そして、ここに連れてこられる過程で紹介されていた自分の部屋へ向かった。
ドアを開けて荷物を置く。前もって掃除されていたのか思っていたよりは清潔だった。
部屋の中は広くはないが狭くもない、丁度いい広さだ。書き物をするための机と椅子に白いシーツの掛かったベッド、服を入れるためのクローゼット。最低限は揃っている。
この、騎士団が住む寮には大浴場もあるのだが、女性の入る時間はとっくに終わっている。仕方なく、アメリアは体を濡れた布で拭く程度に留めた。
何もすることがないのでベッドに入ると、疲れていたのかアメリアの意識はすぐに夢の中へ落ちていった。
――――――――――――――――――――
アメリアと聖女のことについてはおいおい書いていきます。
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