第15話
アメリアは止まらなかった。どれだけ自分が傷を負っても、仲間の騎士達が声をあげても。
動けなくなるような傷を負っても、自らの剣で自分を刺して生き返った。
痛みはある筈なのに自分を刺すことに躊躇いが無い。その姿は、魔物達にとって死神のようだった。
いつの間にかアメリアの周りに魔物はおらず、ただぽつんと血に塗れた少女が立っていた。
アメリアにとっての魔物は自分から師匠を奪った魔王の分身みたいなものだ。憎くて憎くて仕方ない。
(もっと早く倒さなければ)
魔王を倒すために一刻も早く魔物を殲滅しなければならない。アメリアは次の殲滅戦までに、魔王のいる場所へ少しでも近づけるように多くの魔物を倒すつもりだ。
「今日はここまでだ!!全員、境界線を張り終える前に戻ってこい!!!」
しばらく突っ立っていたアメリアだったが、ロストの指示を聞くとすぐさま後方に下がった。
白い膜のようなものが、高原を覆っていく。天辺の空までを覆うと、一瞬強く光り透明になった。境界線が張られた合図だ。
「今日はご苦労だった!予定より前進出来そうだ。ゆっくり休んでくれ!!」
全員いるか、なんてことをロストは言わない。今は無事、殲滅戦が終わったことを喜ぶべきだ。たとえ、涙を流しながら笑っている者や魔物のいる方を見つめて、悲しそうに目を伏せている者がいたとしても。
「アメリアーお疲れ!!すっごい強かったよ!」
「ララ.....ですが、私は...わっ!」
アメリアが何かを言おうとしたところで、ララはアメリアの頬を両手で包んだ。その先は言わせないとばかりに。
「あんたが気にすることじゃないの!全員、それを覚悟してここにいるんだから!!私だってそう!!」
ララの言葉がアメリアの胸に染みていく。いつだってこの友人はこうして励ましてくれるのだ。本当に感謝しかない。
「はい...ありがとうございます」
アメリアの表情は、先程の死神のような様相とは異なって、穏やかな顔付きになっている。
もう大丈夫だろうと思ったララはアメリアの頬から手を離した。
「そういえばアメリア、あんた『鮮血の乙女』なんて呼ばれたわよ」
「.....分かった方がいたのですか...」
「ん?どういうこと?」
「いえ、それが...」
アメリアが話したことは、ララが初めて聞くものだった。
▼▽▼▽▼▽
「アメリア!今日は魔物を狩りに行くぞ!!」
この日、アメリアは師匠に連れられて初めての魔物狩りをする予定だった。
「師匠...魔物を狩るのは騎士団に入ってからって、教えられたんだけど.....」
「大丈夫、大丈夫!バレなきゃいいって!!」
「何が大丈夫なの...」
この師匠は1度何かを言い始めたら、滅多に人の言う事を聞かない。アメリアは折れる方が早いと判断した。
「分かった。何か言われたら師匠のせいにする」
「ああ!任せとけ!!」
(....いいの?)
アメリアは疑問に思ったものの、言質はとったのでこれで心置き無く、魔物を狩れると考えた。
「そうだ、アメリア!お前にこの剣をやる」
「え?ちょっ!」
アメリアは投げてよこされた剣を慌ててキャッチする。危うくもう少しで落とすところだった。
渡されたのは、ベージュ色の鞘に入った白銀に輝く剣だった。
「まあ、弟子への日頃のご褒美だと思ってくれ!!それに、魔物を倒すには武器が必要だからな」
「ありがとう...」
くれると言うので、有難くいただくことにする。2人は準備をすると転移屋の所へ向かった。
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