第21話

「アメリア、俺を鍛えてくれ!!」

「.......」

「えっ.....」


次の殲滅戦までの束の間の休息日。アメリアとララは演習場で訓練をしていた。そこに、ラウルがアメリアに自分を鍛えて欲しいと頼んできたのだ。


「そういえば、模擬試合の時に言いましたね」

「アメリアそんな約束してたの?」

「はい」


忘れかけていたアメリアだったが、自分でしてもいいと言ったので、言ったからにはやらねばと思い、ラウルに向き合う。


「では、ラウルよろしくお願いします」

「ああ!頼むな!!」


瞳を輝かせながらアメリアを見つめるラウルだったが、その顔を見てララはふと呟いた。


「やめた方がいいと思うけどな......」


その言葉の意味はすぐに明かされることになる。



********


――― 数十分後 ――――



「分かりましたか?」

「.....あー」

「やっぱりね」


アメリアは早速ラウルに自分の動き方を教えようとしたのだが、


『こう、ビュッと動く感じです』


『違います。剣を握る時はもっとグッと』


擬音が多すぎて何をすればいいのか、ラウルには具体的に分からなかったのだ。

傍でそれを見ていたララだったが、こうなることを分かっていたのか、少しばかりラウルのことを可哀想な生き物を見る目で見ている。


そこで、自分の説明を理解出来ていないと分かったアメリアは、言葉での説明を諦めて実際に動いて真似してもらおうと考えた。しかし、


「なあ、動きが見えないんだけど」

「アメリア....」


速すぎて目で動きが追えなかった。アメリアとしては、自分の全力を見てもらわないと意味が無いと考えている。断じて、嫌がらせのような意図は無い。


「アメリア!ちょっと止まって!!」

「はい、何でしょうか?」


流石に待ったをかけるララ。このままでは教える所ではない。


「アメリアの教え方独特すぎるから、私がアメリアの動きを見て、ラウルに教えるわ」


オブラートに包んで言うララ。


「なるほど、いい案です」

「でしょ!」


アメリアの人に教える事が壊滅的に下手な理由は■■■にある。

■■■から訓練を受けていたアメリアだったが、■■■も擬音を用いて教えることが多かった。その度に、頭を悩ませていたアメリアだったが、暫く経つと慣れたのか、何を言っているのか理解出来るようになった。


その上、動きは目で見て盗むものだと教えられた。そのため、■■■の訓練では目を使うことが多く、元々の天才的な戦闘の才能もあって、アメリアはどんどん■■■の技術を身に付けていったのだ。


師匠が師匠なら、弟子も弟子である。自分が出来たのだから、他の人にも伝わるだろうとアメリアは思っている。


だからなのか、アメリアは人に教える方法は■■■を参考にすることが殆どだ。

その大半は相手に伝わらず、お互いに困る事が多い。


ララも以前、アメリアに戦闘について教わろうとしたのだが案の定、失敗していた。


(あの時は本当に何言ってるか理解出来なかった!)


思い出してもアメリアが何を言っていたのか理解出来ないララだった。


結局、アメリアは素早く動き、その動きをララがラウルに直接教えるという展開になった。


「ラウルは筋がいいです。次はもっと難易度を上げてもいいかもしれません」


何故だか、嬉しそうに言うアメリア。自分の教え方が壊滅的に下手だと気付いていないのかもしれない。


「あー、次はアメリアの動き目で追えるようにしとく!!」

「勘弁して....」


ラウルに分かりやすく説明するのは骨が折れた。次も付き合わされるのはごめんだと思うララだった。



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