公式配信第12回


 唐突だが、小説サイトで配信が始まろうとしている。


 今回は、ガチャ配信と書かれている。小説サイトでガチャ配信とは……?


 特定のゲーム作品だと小説サイトでは二次創作扱いを受け、作品自体が削除される危険性がある。


 許諾済み二次創作のみ受け付けの場所だとなおさらだ。一体、管理人は何を考えて配信をするのか?


 そして、配信は始まろうとしている。




『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』


 姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。


 それとは別にセットの中には、ポスターも数点ほど見えるのだが、ファンアートというわけでもAIアートの部類でもない。


 その他には何かフィギュアっぽいものも飾られているが、前の配信ではなかったような気がする。


 それでも前回及び前々回の配信とあまり変わらない事もあるのだが、気づく視聴者はいるのだろうか?


『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』


『皆さんにお願いがあります。アーカーシャチャンネルが観測できることは、全てが真実とは限りません。その一方で、観測した内容を炎上目的や単純なバズり、それこそ世界を混乱させるのに悪用する人はいるでしょう』


『私たちの情報はあくまでも観測、未来に起こるかもしれない出来事でも変えることはできます。安易な炎上によるバズり目当ての記事などには耳を貸さず、炎上案件に関しては拡散の阻止にもご協力ください』


 管理人の注意事項、それは情報を扱うユーザーにとっては色々と課題が多い。


 今の時代、誰もがSNSのアカウントを持って情報発信を行うような時代である。それを踏まえると、こうした注意事項も必要かもしれない。


 ご無沙汰の配信の場合、定型文は欠かせない……というかは不明だが、新規ユーザーを取り込むにはある程度の事を知ってもらうのは重要だろう。


 特に彼女の場合は動画サイトなどで活動しているブイチューバ―ではないのも、それに拍車をかけている。



『今回は、唐突ですがガチャ配信です』


『どの作品のガチャなのかは、あえてここでは書かない方向で』


『特定作品の物だと、どうしてもカクヨム及びノベプラで許諾外作品の二次創作で引っかかってしまうのですよ』


『今回の話自体、ふとグラブルの方で神引きしたのがきっかけですから』


 前々回はブッコローのコンテストの告知、前回はKACの小説配信、地味に切り取りも難しいものが連続している。


 これらに関しては唐突な配信という事で、一部の公式切り取りで扱っているのみという状況になっていた。


 それだけに今回のソシャゲのガチャ配信とは、どういうことなのか? 疑問は深まるばかりである。


 そういえば、しれっとだがグラブルに触れているが……この場合は大丈夫なのだろうか?


 アーカーシャチャンネル自体、活動するブイチューバ―もノンフィクションではあるが、内容はフィクションという変則な小説というのもあるかもしれない。


『という訳で、こういうものを用意しました』


『アーカーシャチャンネルお得意の、別次元観測ですよ』


『これで、様々なソシャゲを観測して……その作品のガチャ配信をしようかと』


『さすがに、別次元で使用されているお金はないので、あくまでも無料キャンペーンをやっている作品の範囲ですが』


 予想の斜め上の配信だったのは言うまでもない。


 まさか、別次元でサービスされているソシャゲの無料ガチャを回す配信だったとは。


 確かにこのパターンであれば、許諾外二次創作で削除される危険性は少ないし、配信場面はカットして公式切り取りを行う事もないだろう。


『それにしても、思いますよね。十二星座占いでは順位が下の方でモチベも下がった状態で出かけるのは……』


『こうした占いに左右される、別の意味でも占い依存症と言われそうですが』


『最近だと、無料の十二星座占いも減っていますよね。継続はしているものの、別サイトのアカウント必須とか』


『検索をすれば、いくつかのサイトは引っかかるのですが……インターネットが今のような状態ではない時期には、朝のテレビ番組に十二星座占いがあった位なので』


 管理人のいう事も一理ある。占いはあくまでも占いであり、それに依存するのは……というのもあるかもしれない。


 あくまでも占いの結果は結果でしかすぎないので、それにばかり依存して行動するのは危険という警鐘を鳴らしているのだろう。


 その結果が、一連のガチャにおける神引きといえる。


 管理人が訴えたいことがSNSの情報を調べもせずに鵜呑みするのは危険だ、という個所は共通しているかもしれないが。



『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』


 最後の台詞は元気よく、管理人らしくはないような表情を見せることもあった。これが、お約束になっていくかは定かではないが固定されつつはある。


 次回の配信スケジュールを見ると、不定期配信という形で行っていくようだ。ここ最近は唐突な配信が多く、スケジュールが未記載という事も多い。


 安易な収益化を狙っているわけではないが、今後も急なスケジュール変更がない限りは配信を行うようでもある。


 この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。

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