公式配信第13回


 今回の配信は不定期らしい。ロケハンも行っている中で、過密スケジュールなのでは……と不安もある。


 内容に関しては深刻な内容というわけではないので、問題はなさそうだが。


 そして、配信は始まろうとしている。



『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』


 姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。


 それとは別にセットの中には、フィギュアが飾られているのだが……見覚えのあるような作品物ではない。


 前回の配信とあまり変わらない事もあるのだが、気づく視聴者はいるのだろうか?


『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』


『皆さんにお願いがあります。アーカーシャチャンネルが観測できることは、全てが真実とは限りません。その一方で、観測した内容を炎上目的や単純なバズり、それこそ世界を混乱させるのに悪用する人はいるでしょう』


 様式美と言えるようなお願いもあったが、ダイジェスト版ではカットの様子。



『先ほどまでNHKマイルカップを観戦していたのですよ、テレビで』


『競馬自体は、それこそ長い付き合いになりますからねぇ……』


 冒頭、いきなり雑談に入る。それも、5月7日に行われたNHKマイルカップの話だった。


 管理人が競馬に興味ある事には意外だが、切り取りの際にどうするかが気になる所である。


 配信当時は当日だった一方で、ダイジェスト版では……カットされなかった様子。



『今回も、いわゆる雑談ですね』


『配信の傾向に関して、色々と疑問を持った人もいるかもしれないのでざっくりと説明します』


『何故、いわゆるネガティブキャンペーンを行わないのか、ですね』


 そういえば、切り取り配信でもネガティブキャンペーンに思わしきような内容はなかった。


 該当箇所を切り取ってしまう、アーカイブも残さないでリアル配信限定にする……という方式を取る配信者もいるだろう。


 その中で、アーカーシャチャンネルはネガティブキャンペーンを一切行っていないのだ。


 カットされても、そのほとんどはとあるソシャゲに絡むもの。掲載サイトの事情でカットせざるを得ないパートのみである。


 もしかすると、カットされた部分にネガティブ発言があるのでは……と思うかもしれないが、存在はしないのだ。


 小説サイトによっては、いわゆる不適切発言などで警告が出るような個所はあるだろう。


 動画サイトや配信サイト以上に、この辺りに神経は使わないといけないのだ。


『ポジティブよりもネガティブの方が残りやすい、それこそアフィリエイト系まとめサイトで転載されたり、その文章をコピーしてサイトが量産されるとか……』


『そういった箇所で炎上したら、それこそ小説サイトでブイチューバ―活動も出来なくなってしまうので、それを踏まえてそういった発言はしておりません』


『とある有名ツィッタラーの発言でネガティブツイートは永遠に掘り起こされる、という趣旨の発言があったのですが……まさにその通りなのです』


『そういった事情もあって、アーカーシャチャンネルではネガティブキャンペーンは一切行っておりません』


『下手に発信場所がバレてしまう危険性もあるので、いわゆる『地震大丈夫?』のようなものも発信していません』


『一方で、普通に管理人アカウントで何かしらの情報発信されていれば心配はない、という風に察していただければ、と』


 今回は、いわゆるネガティブキャンペーンが散見されている現状を変えようと、配信を行ったようだ。


 彼女の反応を見ると、深刻そうな表情はしていないのだが、何かを察していそうな発言でもある。


 ネガティブキャンペーンをやって有名になったとして、そこから更に過激な発言が続き、それこそ迷惑系動画配信者と同じようになったら、それこそ小説サイトではアカウント凍結もあり得るだろう。


 アーカーシャチャンネルがそうした情報を観測しないのは、こういった事情もあるのかもしれない。仮に情報自体は手にしても、下手に拡散しないのもこのため……なのだろうか。


 このほかにも色々と言及したようだが、その詳細は覚えていない。競馬の雑談が続いたのかもしれないし、ソシャゲの開催予定のイベントに言及したのかもしれないだろう。


 さすがに他ソシャゲのネタは切り取りでは諸事情で掲載不能な事もあり、カットされるオチだが。



『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』


 最後の台詞は元気よく、管理人らしくはないような表情を見せることもあった。これが、お約束になっていくかは定かではない。


 次回の配信スケジュールを見ると、不定期配信という形で行っていくようだ。ロケハンもあるので、この辺りは……という事だろう。


 安易な収益化を狙っているわけではないが、配信を行うようでもある。例によって、あの期間は休みになるだろうが。


 この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。

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