公式配信第5回
遂に配信が始まろうとしている。
今回は臨時告知というよりも、若干の宣伝枠……らしい。ナンバリング配信ではあるのだが。
内容はキャプション文にもプロットとあったが、どういう事だろうか?
そして、配信は始まろうとしていた。
『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』
姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性。メガネに関して言えば、今回はかけている様子。
『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』
『……と言いたい所なのですが、今回は告知というよりも宣伝オンリーなので前説はバッサリと省略しますわ』
またもや注意文メッセージまでバッサリと省略された。
『今回は別の意味でも、とあるプロットのコラボですね』
『プロットというか……まぁ、色々と、ね』
今回も言葉を選んでいるが、以前のアレとは事情が違う。あちらに関しては、他のサイトで名前を出すとアカウント凍結もあり得そうな一件だったからである。
これに関しては、いわゆる一次創作なので問題はない、との事。あえてワードにするならば、セルフパロディか?
『ここにあるのは、過去にとある人が書いたプロットなんですが……それをベースに観測してほしい、そういう依頼なんですよ』
『いわゆるコラボですか? この場合はセルフパロディの方が適切かな?』
『観測をするよりも、そのまま掲載して反応を見た方がいいという事で……』
まさかの展開だった。アーカーシャチャンネルの中の人が書いた没プロットを公開しようというのである。
一体、どういう風の吹きまわしなのか?
『今回公開するのは、忍者ものですね。ツィッター上で忍者と言えば、あの特有のワードを生み出したニンジャもいますが……』
『大まかな流れは以下のようになっているみたい』
そして、彼女が指をパチンと鳴らすと、どこからかCGで出来たホワイトボードが出現し、文字が表示されたのである。
1:活躍
女性コスプレイヤーがふとしたきっかけで忍者を題材としたARゲームをプレイすると、あるプレイヤーが彼女を有名プレイヤーと認識する。
どういうきっかけなのかは不明だが、とてつもない勘違いをしていると言及するが、相手は聞く耳持たず。
結局はバトルに参戦する彼女の前に、突如として謎の忍者ロボが姿を見せる。その忍者ロボは次の瞬間に変形し、彼女に装着された。
圧倒的なパワーの前に相手プレイヤーはあっという間に敗北し、その人物も「あのプレイヤーとは違う。SNSの噂は嘘だったのか」と残して倒れた。
バトルが終わると忍者ロボは消滅し、彼女も「あれは何だったのか」と思う。
そして、しばらくしてゲームのシステムやルールなどを理解し、あの忍者ロボこそがメインであったことに気づいた。
一方で、後にライバルとなる人物が一連のバトルを見ていたのだが、名前の被りに関して疑問に持ち始める。
2:挫折
有名プレイヤーに勘違いされたという事で、実際に調べてみたところ……驚愕の事実が判明する。
明らかに戦歴などが違いすぎて、どうして勘違いされたかもわからないままに戦い続けた。
その後も彼女を有名プレイヤーと勘違いする事例は存在し、そのたびに違うと否定するのだが、その原因はプレイヤーネームにあった。
そのネームは別のゲームで使用していたネームを彼女は使っている一方で、該当するARゲームでは有名プレイヤーが使っているネームだったのである。
しばらくして、該当するプレイヤーのバトルを直接見る機会があり、その動きのパターンなどは自分とは比べ物にならないと思い始めた。
それでも彼女は戦い続け、次第にランクの方も上昇していく。
その後、バトルが終わった際のライバルプレイヤーが「君は君であり、彼ではない」とアドバイスしたことで変化。
サポートメカにも変化が起き、3体合体が可能になった。
3:大活躍
新たな3体合体した姿は文字通りの最強というような存在だったが、それでも性能が上がったに過ぎない。
自分のスキルを上げなければ「チート」と言われて炎上しかねないとも考えている。
そして、実力を上げていくうちにゲームメーカー側も有名プレイヤーと主人公のマッチングを公式イベントとして……という声も出始めた。
そうした流れもあり、最後はその有名プレイヤーとバトルをすることになる。有名プレイヤー側は勘違いされた理由なども一切聞かない。
(聞いたとしても状況は変化しないし、SNS炎上勢力が更に炎上させることも考えていた)
最終的にバトルの結果は主人公が勝利、これはメーカー側も想定外と言える結果だった。
(メーカーは想定外でも、紙一重で有名プレイヤーは負けるかもしれないとも考えていた)
主人公はSNS上で有名プレイヤーの偽者、もしくはなりすましという批判もあったのだが、これによって偽者というような炎上勢力は次第に減り始め、本物のプロゲーマーとなった。
『忍者ものというよりは、見方を変えれば忍者とゲームの題材を融合させたバトルもの、とも言えなくないかもね』
『それに、主人公はあくまでも初心者プレイヤー。それがプレイスタイル的な部分でプロに見えてしまって勘違いされた、という意味でも勘違い物の要素もありそう』
『ロボット要素もあるみたいだけど、このプロットで見ると……メイン要素の一つなのかは、若干の疑問形がありそうね。メインはロボバトルなのかもしれないけど』
『初心者ゲーマーがプロゲーマーになるという成長要素もあるし、いくつかの追加要素を加えれば……やりようによっては、注目されそうな予感もするかもね』
彼女の反応を踏まえると、忍者ものとは言いつつも萌え要素や合体ロボなどの要素を詰め込み過ぎでは……と考えてもいるようだ。
その一方で、やりようによっては作品に出来なくもない、とも思っているかもしれない。
しかし、読者が集まるような作品になるかどうかまでの判断は、さすがに行っていないようである。
このプロットの提案者が、アーカーシャチャンネルの中の人というのを差し引いても……彼女なりに何かあるのかもしれないが。
『今回は、あくまでも参考事例という事にしておきますね』
『この企画自体はどうしようか悩んでいましたが、送られてきたプロットをベースにアーカーシャチャンネルとして観測記事にしよう、といういわゆるコラボ企画の仮案です』
『これが実現するかどうかは、募集があるかどうか……それに観測者たちの反応次第かもしれません』
『我こそは観測記事にふさわしいプロットをお持ちの方、一次創作限定でどしどし送ってくださいね』
まさかの募集枠である。採用されると賞金が出る、もしくは粗品プレゼンというわけではない。
マニアックな部類に入りそうな小説サイトのVTuberが、まさかの賞金が出るような募集をするわけもないだろう。
あくまでも実際に募集するかは不明であり、企画原案に過ぎないという注意書きはあったが。
『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』
最後の台詞は元気よく、管理人らしくはないような表情を見せることもあった。
彼女も言っていたが、重要なのはポジティブ精神であり、ネガティブの配信は炎上しやすいとの事である。
次回の配信スケジュールを見ると、10月のスケジュールは未定らしい。
安易な収益化を狙っているわけではないが、今後も急なスケジュール変更がない限りは配信を行うようでもある。
目指すべき収益化の道は、まだ遠いのだろう。
この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。
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