公式配信第16回

 8月は小説執筆の関係上でお休み、みたいなことがインフォメーションにあった。


 一方で、小説コンテスト関係も落ち着いたようだが、7月は例の古戦場もあって時間が取れなかった様子。


 その中で8月の配信となるのだが……何をやるつもりなのだろうか?


 そして、例によって配信が始まる。



『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』


 姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。


 セットの中には、扇風機が設置されており、フル回転している様子。


 かき氷とか置かれていそうな気配もするが、パソコンに水がかかっては……という事もあるのだろう。


 テンションは夏バテをしたような雰囲気ではなく、いつものテンションなのでその辺は安心か。


『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』


『皆さんにお願いがあります。アーカーシャチャンネルが観測できることは、全てが真実とは限りません。その一方で、観測した内容を炎上目的や単純なバズり、それこそ世界を混乱させるのに悪用する人はいるでしょう』


『私たちの情報はあくまでも観測、未来に起こるかもしれない出来事でも変えることはできます。安易な炎上によるバズり目当ての記事などには耳を貸さず、炎上案件に関しては拡散の阻止にもご協力ください』


 管理人の注意事項、今回に限っては簡略版だった。


 しかし、情報一つとっても色々と扱い方次第で大変なことが起こるのは、相変わらずというべきか。


 今の時代、誰もがSNSのアカウントを持って情報発信を行うような時代である。それを踏まえると、こうした注意事項も必要かもしれない。


 相変わらずのテンプレ水増し……と突っ込まれる個所かもしれないが、こちらの有無で彼女の伝えたいことは分かるかも……と。



『今回は、先月から執筆を開始した小説に関してのトークにしようと思います』


 何と、今回は執筆中の小説に関する話らしい。


 こういった配信は有料配信にして、それこそ利益をニューパソコン確保などに充てた方がよいのでは……という雰囲気もしないでもないが。



『皆さんは、現在連載中のアバターシノビブレイカーはご覧になっているでしょうか?』


『こちらの配信をしている段階では、第6話までが更新済だったりします』


『詳細は、こちらのリンクを……とかやってしまうと、宣伝になってしまうので、何を話すべきなんでしょうね』


 管理人は少し言葉を選んでいるようにも思えた。


 下手に宣伝と受け取られてしまえば、まとめの方が削除される危険性がある。


 結局、こちらに関してはあまり言及することはなかった。


 さすがにネタバレなどを話して、詳細はこっちも見てね、では非常にアレなのかもしれないが……。


 この辺りはさすがに公式切り取りでも載せられないので、この配信でもカットされるだろう。



『次は別の小説の話をしましょう。少し前に短編として発表した電動キックボードの話です』


『作品タイトルは『謎の多い電動キックボードを発見し、そこからエクストリームレースにエントリーする話』になります』


 次も小説だが、今度は短編として公開した電動キックボードの話らしい。


『中古であれば1万円台はありえるだろうが、新品で1万円台があったら……という考えで、この小説を書いていました』


『しかし、探せば中古の1万円台って現実にあるものですね。1万5千円台のレベルと思ったら、1万1千円が……』


『それを踏まえると、値段に関しては半ばあきらめています。新品で1万円は、品質などを踏まえるとありえないラインなのもあって』


 作者としては値段設定が若干甘かったかも、という認識らしい。


 さすがに1万円はボーダーラインで、それを下回る値段は考えていなかった、とのこと。


 それでも現実に1万円台で売られているのを見ると、少し設定を甘く見すぎていたかも……と。


『あとはですね、このエクストリームレース、ベースになっているレースは実在します』


『公営競技……いわゆるギャンブルなのですが、オートレースが元ネタになっているのですよ』


『埼玉県は全ての公営競技があるという事で、一部では話題ではあるのですが……』


 エクストリームレース、特に障害物が存在するようなパルクール的なレースを予想していたが、実際は違っていたようだ。


 元ネタを踏まえると、あのパワードスーツ装備なのも……納得といえるかもしれない。


 その一方で、元ネタとは若干かけ離れた要素もある。


 パワードスーツの安全性やエクストリームレースが配信者限定であることなどはフィクションだろう。


 電動キックボードなので、バイクのような騒音もほとんどない。


 オートレースの場合、消音マフラーというものはあるが基本的には防音対策の施されたレース場で行われる。


 それを踏まえると、周囲にマンションなどがあるようなエリアでレースが行われるのは、さすがに厳しいものもあるだろう。


『本作はギャンブルとしてのレースを題材にしているわけではないので、その辺りの要素もありません』


『読者的にギャンブルの部分は……というのもありますし』


 オートレースを含め、公営競技は基本的にギャンブルの要素もある。


 一方で、そうしたギャンブルの側面をピックアップせずに書かれたような公営競技を題材にした作品だって、ゼロではない。


 だからと言って、エクストリームレースが利益の出ないレースかというと、そうではないだろう。


『エクストリームレースは、いわゆる動画配信者のイベント的な部分が強いので、このレースからブレイクする配信者も……というのを想定しています』


『長編でやるとしたら、その辺りも煮詰めていく必要性はあるのですが』


 この作品は短編としてさっくりとは完結しているが、題材や内容としては長編としてもできるような要素は存在する。


 ライバル配信者とのレース、レース外での配信者の動向、日常など……やろうと思えば、色々と出来るかもしれない。


 一方で、電動キックボードを取り巻く情勢もあるので、それを踏まえると……難しい個所もあるのだろう。



『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』


 最後の台詞は元気よく、管理人らしくはないような表情を見せることもあった。


 本当に小説サイトで活動するバーチャル配信者なんて……という声があったかは定かではないが、色々なジャンルのバーチャル配信者は増えつつある。


 次回の配信スケジュールを見ると、予定は未定とあった。お盆休みなどもあるし、それ以外にも執筆中なのもあって、匙加減が難しいのだろう。


 安易な収益化を狙っているわけではないが、今後も配信は行うようでもある。



 この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。

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