公式配信第21回
本日は2月3日、大安ではあるのだが……それ以上に節分の印象が強い。
豆まきをするというような家庭は減っているらしい、というテレビ報道などもあるが……場所によっては豆まきをしている場所もあるので、個人差があるのだろう。
アーカーシャチャンネルの本職はWEB小説を書いている小説家である。小説家がVTuberをやっているケースは他にも事例があるが、そちらは動画サイトであることがほとんどだ。
小説サイトでVTuber活動するのは、アーカーシャチャンネル位しかいないだろう。
そんな中で、配信が始まる。
『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』
姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。
セットに暖房器具は置かれていないが、ここ最近の天気を踏まえると心配と見る人はいるだろう。
『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』
『この辺りはコピペ&テンプレになるので、ざっくりと割愛します。気になる方はアーカイブの配信を見てくださいね』
管理人の注意事項はざっくりカット。この辺りが気になる人は2023年辺りのアーカイブを見れば確実か。
どちらにしても定例文であることには変わりない。
『2月と言えば、1日から始まった例の春のパン祭りがあります』
2月最初の配信、まさかのスタートだった。
『中にはシールだけが目的でパンの方は……と言う人も出ているらしいのですが、自分としてはパンとシールの両方が目的と言うのはありますね』
『それだけに、他社のパンが見向きもされないのか、と言うのは間違いだったりします。しれっと新商品や期間限定のパンを、このタイミングで出すことは多いのです』
『パン祭りはあくまでもイベントのひとつと考え、様々なパンを食べていきたいですね』
1日から始まった、あの会社のパン祭りにがっつりと言及しているではないか。
一体、どういうことなのか?
『アーカーシャチャンネルの観測は原則としてフィクション、架空のものですが、場合によって現実にあったのでは……というか、パン祭りは現実にありますね』
SNSのトレンドを見れば、様々な炎上しているような案件を見かけることはある。しかし、アーカーシャチャンネルとしてはそちらで閲覧数を稼ぐようなことはしない。
ジャンル外の案件であれば明らかにアフィリエイト目的と言われることはあるし、それが理由でニワカと指摘されて炎上することだってある、と言うかほぼ確実だ。
だからこそ、彼女の場合は話題を厳選するのである。
『本日は節分という事で、こういうことに挑戦しようと思います』
彼女が手に持っているのは、豆ではなくキャンディだ。まさか、この時期にハロウィン……ではないだろう。
豆のCGモデルを用意していなかったというわけでもない。これは小説サイトでのVTuber配信であり、動画サイト経由ではないからだ。
『何故に豆ではなく飴なのか? 色々と諸事情はありますが……小銭を投げる、いわゆる銭投げにするわけにもいかなかったので』
そして、彼女はおもむろに左側を向いて飴を投げ始めた。飴と言っても棒付きではなく、いわゆる袋に包んである系統のものである。
ここで食べ物を粗末にしては……と言う指摘コメントも飛ぶかもしれないが、飴の形状をしたCGであるため、実際に食べられるものではない。念のため。
『福は内! 鬼も内! 福は内! 鬼も内!』
掛け声を聞いて、ふと疑問に思ったことはある。普通は「鬼は外! 福は内!」が一般的で、稀に「福は内!」だけで鬼に言及しない、中には「鬼は内!」というようなケースだってある。
それこそ地方によっていろいろと呼び方はあるのだろう。
場合によっては「鬼は外!」で「何故に鬼だけ追い払うのですか?」的なリプで炎上することだって確実だ。
それに配慮した形で「鬼も内!」にしたのだろうか?
数分後、飴を投げ終わった管理人はコメントを確認し、案の定のコメントを発見した。
『何故に「鬼も内なのですか? 鬼は外なのでは?」と言う系統のコメントもありますね』
『あくまでもアーカーシャチャンネルは架空の目撃事例を配信する場所なので、そこで深く突っ込んだら負けです。そういう方向で』
管理人は、そっち系統で炎上したタイムラインも目撃しているので、そこまで多くは語らない。
アーカーシャチャンネルの視聴者、いわゆる観測者もその辺りは把握しているので、このコメントを投稿したのは初見の人物と言う可能性もあるだろう。
その一方で、実際に存在するパン祭りに言及したのは、どういうことなのか? その辺りも織り交ぜての配信が、逆にこうしたコメント投稿が出てくるきっかけになったといえるかもしれない。
その後も、雑談枠となり、深夜に放送された某ロボットアニメに関しても言及された。前回と一緒である。
さすがに公式の切り抜きをやっているサイトでは該当作品の二次創作と認識されそうなので、相変わらずこのくだりはカットだが。
『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』
最後の台詞は元気よく、いつものワンパターンではありつつも、ポジティブを強調して配信は終わった。
相変わらずであるが、ワンパターンではあっても決めのセリフなどがあると、一安心するのは……気のせいではないはずだ。
SNS上でもおはようVTuberでいいねをしてくれている同業者などは以前よりも増えており、それがモチベーションになっているのは事実と言える。
その一方で、いわゆるインプレスパム的なアカウントも存在するため、そういったアカウントも見極めて……と言う気配もある様子。
次回の配信スケジュールを見ると、予定は未定とあった。
2月に月一度の配信はノルマ回収したといえるが、どうなるかは不明と言うべきか。
この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。
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