メイン配信枠
公式配信第1回(前編)
遂に配信が始まろうとしている。予告の方は一切していない。状況的に、そろそろ配信を行わないと文章VTuber自体がネタだったのでは、と言われかねない状況もあるからだ。
いわゆるBGMのようなものは存在しない。小説サイトでBGMという概念自体、ないに等しいだろう。せいぜい、読者が自前で用意して流すレベルだ。
様々な事が言われ、不安要素があるという中で開始される、文章VTuber、それは一体どんな存在なのだろうか?
この配信に開始時間という概念は存在しないだろう。本当に、そういう概念があるのかどうかも疑問に思う。
そして、配信は始まろうとしていた。
『皆さん、本当にお待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』
姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。バ美肉かどうかは判断できないが、ボイスチェンジャーを使っているかと言われると……そういう感じはしない。
アバターの名前は未決定のままの見切り発車を思わせるが、チャンネル名だけでも正式に『アーカーシャチャンネル』と決まったのは大きいかもしれない。
名前に関しては、キャプション文によると『様々な観測結果から、管理人の名前が明らかになってくるかもしれません』との事だった。
同時接続者はどのくらいだろう、と思ったがデータとしては確認できないというべきか。実際、これは小説だからである。
『様々な時間、過去、未来、それこそ別次元……そうした様々なものに存在する時間の出来事、それらを観測するのがアーカーシャチャンネルです』
『皆さんにお願いがあります。アーカーシャチャンネルが観測できることは、全てが真実とは限りません。その一方で、観測した内容を炎上目的や単純なバズり、それこそ世界を混乱させるのに悪用する人はいるでしょう』
『私たちの情報はあくまでも観測、未来に起こるかもしれない出来事でも変えることはできます。安易な炎上によるバズり目当ての記事などには耳を貸さず、炎上案件に関しては拡散の阻止にもご協力ください』
『我々の観測した情報を生かすも殺すも、皆さんの情報に対する向き合い方ひとつで変わるのです。見たくない話題にミュートをかけているような状態のユーザーにも、観測した内容を無理やり見せるような行為は……我々も望んではいません』
『皆さんにも、この辺りに関してご理解とご協力をお願いします』
管理人の注意事項、それは情報を扱うユーザーにとっては色々と課題が多いだろう。今の時代、誰もがSNSのアカウントを持って情報発信を行うような時代である。
果たして、彼女はどのような配信を行うのか? アーカーシャチャンネルとはいったい何者が生み出したのか?
もしかすると、いわゆるフェイクニュース拡散を目的とした存在という可能性も否定できないが、キャプション文などを見てもその心配はないようだ。
【アーカーシャチャンネルは、ほぼフィクションです。配信活動自体はフィクションではありませんが、観測内容は基本的にフィクションとなります】
【仮に観測内容が現実となった際は、その際に改めて再観測を行い、そこで改めて真実かどうかの告知を行います】
いわゆる、とある虚構しか配信していないようなあの新聞サイトのようなもの、という認識でいた方が良いらしい。
そして、アーカーシャチャンネルの配信は始まろうとしていた。
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