【公式切り取り】アーカーシャチャンネルの日々
アーカーシャチャンネル
トライアル枠
モデル披露枠
『色々とあって遅れてしまったけど、遂にモデル披露となりました』
モニター越しに表示されているのは、ショートヘアでメガネをかけた、アレンジされた白を基調としたメイド服姿という女性アバターである。それに加えて、若干の巨乳に見えなくない。
身長はモニター越しからは確認しづらいのだが、そこまで長身ではないように見える。声もイメージしづらいし、他にも色々とぼやけているように見えるだろうか。
『モデル紹介だけをとっても、ここまで試行錯誤するとは予想外ですね』
一体、今回のVTuberはどんな配信をしてくれるのだろうか……と視聴者は楽しみにしているだろう。
しかし、これは小説であり、文章である。では、どうやってVTuber配信を行っているのか?
モデルに関しても、文章ではどのようにでもなってしまう。下手をすれば、それこそ二次創作とも受け取られそうな衣装でさえ、文章ならば不可能ではない、と。
今回の配信に関しての真相は、こうだ。
まずは小説サイトのアカウントを取る。これに関しては個別のサイトでもいいらしい。
ただし、個別サイトの場合はレンタル料金が発生するサイトも存在するため、ふとした料金未払いでサイトの更新が止まってしまう恐れがある。
可能であれば個別サイトを作っての運営は収益化が出来てからが望ましい。
映像でVTuberをやるとすれば独自にモデルを作るとしても、有償で依頼するにしてもお金はかかるかもしれないが、文章で書けば……という具合だ。
確かに文章でならば、二人組や複数グループのVTuberも容易に準備できてしまう。ある程度の設定を準備すれば、即興小説の感覚で投稿することだってできなくはない。
中には1時間という限られた時間で短編を作るという企画だってあるのだから、即興でVTuber配信を思わせる短編だって不可能ではないだろう。
『本日は、あくまでもモデル紹介の枠ですので、そこまで時間はとっていないのです。手早く済ませてしまいましょうか』
だからと言って、配信風小説をこういう形でやろうとするとは……別の意味でも予想の斜め上なアイディアと言える。
最初からVTuber題材の小説を書けば済む話なのに、中の人は小説という媒体でVTuberの配信をしようというのだ。
『まさか、ここまでの反響を得るとは予想外でしたね。あの小説と言えるかどうか不明なものでも、反応が日を追う事に増えています』
モニター越しの彼女は、汎用アバターなどをカスタマイズしたようなものではなく、中の人自身が独自にモデリングしたように見えた。
クオリティの方は別の意味でも高いようには見えるかもしれないが、個人勢としては比較的に高いが企業勢と比べると……なのかもしれない。
彼女の言う反響とは、今まで投稿していた自身のエッセイのようなもの『SS(ショートストーリー)VTuberのすすめ』の事だろう。
最初の内には『文章系』としていたが、調べていく内に別の活動中であるVTuberと被ってしまい、変更したらしい。
『自分としては動画サイトのアカウントもあったりしますが、生配信自体はあまりやったことがないので、こういう形にしました』
配信内の話を聞く限りでは、文章でVTuber活動を考えていたという話らしいが……どういう流れで中の人は文章のVTuber活動をしようとしていたのか?
色々な意味でもこちらの考えが同じものばかりになってしまうのは、実際の文章VTuberを見て目に見えるようなわかりやすい実例が非常に少ないから。と言えるのかもしれない。
文章でラジオ番組をやろうという取り組みも存在し、それをVTuberでやろう……というのが、今回の試みのようだ。
『皆さん、今回のモデル紹介はどうでしたか?』
中の人も若干困惑しているが、ビジュアル面は小説という媒体なので挿絵のようなものがあれば、そこでビジュアルは伝えられる。
小説という媒体では、文字でインパクトなどを与えなくてはいけないのだ。中の人も反応がどうなっているのか、投稿するまではわからないという状態だろう。
これではまるで公式配信の切り抜きにも見えなくもないが、まったくもってその通り。文章でやると、どうしても配信中の感想などを書いている感覚になるのかもしれない。
『これから色々と調整を行って、配信を行っていきたいと思います』
今回の配信がスルーされてしまっても、次につなげられれば良い。彼女が配信中に色々とテンションが左右されたりしたのは、こういう事かもしれない。
コメントには文章VTuberに批判的なものもあるだろう。それでも彼女はそういったコメントも踏まえて、徐々に成長していく、そう視聴者は考えている。
この場合は読者、なのかもしれないが。
『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』
これが、おそらく彼女の配信終了の決まり台詞なのだろう。そして、今回の短時間とも言えるだろう配信は幕を閉じた。
文章VTuberという無謀ともいえる挑戦に、悪戦苦闘しつつも中の人は書き続けてくれることを願うばかりだ。
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