公式配信第9回(特別版)

 遂に配信が始まろうとしている。今回の配信は臨時配信らしい。


 今年の配信スケジュールは執筆関係で未確定という話だったが……どういう事だろうか。


 深刻な内容というわけではない、とキャプション文には書いてあった。


 むしろ、例のアレだろう。

 

 そして、配信は始まろうとしている。



『皆さん、お待たせしました。アーカーシャチャンネルの管理人です』


 姿を見せたのは、ショートヘアにメガネ、若干巨乳なメイド服姿の女性である。


 それとは別にセットの中には、何か別の人物と示唆できるような写真立てもあるが、他にも色々と増えているように見えた。


 一連のセットが出来上がったのか、と言われると疑問も残るが。これだけの為に配信が不定期になっていたわけでもないだろう。


『……と言いたい所なのですが、今回は臨時告知もあるので前説はバッサリと省略しますわ』


 注意文メッセージまでバッサリと省略され、ある意味で臨時告知だが深刻なものを思わせる。


 一体、どういうことなのだろうか?



 話によると、1月15日まではゲームのイベントに参加するために配信お休みをするという事らしい。


 それに加えて執筆などのスケジュールの関係で、いわゆる「おはようVTuber」もお休みという事だ。


 アーカーシャチャンネルは『スマホ』と呼ばれるものを所持していないというのもあるのかもしれないが……。


『今回の告知だけではアレかもしれないので、少しお話をしましょうか』


 まさかの延長雑談枠か? それにしては、話のトーンが……という気配もする。


 一体、管理人は何を話すというのか。もしかして、ゲームの方で……と思われたが、そうではなかった。



『その昔にですね、あまり調べ物をしない状態で特殊なワードを題材にした作品を書いたことがありました』


『これは観測としても、さすがにまずいですよね。そのワードはデイトレーダーというのですが』


 デイトレーダーとは、金融商品の売買を一日で完結させるデイトレードを行う人、それを指す言葉らしい。


 管理人が書いた小説とは、そのデイトレーダーが魔法で投資を行い、日本の経済を回す的な……物のようだ。


 かなりざっくりとした内容だが、株式投資を妨害するライバルも魔法で投資を行い、株の値段を変えたり……ここまで聞いて、察するものがあったが、案の定というべきか。


『この当時は話を思いついたら執筆する方式だったので、プロットのようなものとか詳細を調べたりもしていなかったのです』


『株式に関しては、株式ニュースなどを見ていた関係もあって、知識ゼロや突発ネタで書き始めた……のレベルではないのですが、お察しですよね』


『面白く書けるか……に比重を置いていた時代ではなかったので、そういう事なんです。結局、この作品は特に小説サイトへ出すこともなく、没となりました』


『今ならば何とか書けるのか、と言われるとそれも微妙なんですよね。異世界物が色々と書籍化している昨今であれば、もしかすると異世界投資家のような作品もあるかもしれませんし……』


『結局、このアイディアならば行けるだろう、と考えてもそれを実現できるかは、スキルなども伴わないといけない。それを別の意味でも思い知ったのです』


 このほかにも色々とあったようだが、管理人がエンドレスで話していてもアレなので稀に流れるコメントを元に話も行った。


 最終的にどれほどの閲覧者がいるかどうかは不明だが、雑談メインだった配信も終わりに近づいていく。



『皆さんも、可能であればレッツVTuber、なのですよ』


 最後の台詞は元気よく、管理人らしくはないような表情を見せることもあった。これが、お約束になっていくかは定かではない。


 次回の配信スケジュールを見ると、やはりというか不定期スケジュールになっていた。


 安易な収益化を狙っているわけではないが、今後も急なスケジュール変更がない限りは配信を行うようでもある。


 この配信をきっかけに、アーカーシャチャンネルが話題になる事を信じて。

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