第29話

 俺は、怪我しない程度に諸田のアホを突き飛ばす。すぐさま水瀬先輩たちとの間に立ち、諸田の胸ぐらを掴む。なんか呻いているが、誰かに通報される前にさっさとこいつの性根を叩き直してやるとしよう。我ながら良い人すぎない???


「良いか、お前の足りねえ脳みそでも分かるように1から話し直してやるよ」


 真正面から諸田を睨みつける。おぉおぉ、3年生サマが2年生のクソガキに睨まれて日和ってやんの。ほんとダセェなコイツ。


「お前みたいな、デブでブサイクで性格もゴミな下半身に脳みそがついてるゴミクズでもな、年上だったら後輩ってのは気を使うもんなんだよ。木崎さんはお前と違って、気も利くし人の気持ちが理解出来て礼儀もある女の子だ。そんな子が、1年先輩のお前に失礼な態度を取らないことは普通だろ」


「ふ、普通なわけあるかぁーーー!お、おおお、お前みたいな陽キャのサル共には分からないだろうけどなぁ!ぼ、僕たち陰キャのブサイクは、常に女の子からゴミを見るような目で見られてんだよ!!そんな中で、木崎は普通の人間に対して向けるような視線で、優しく話しかけてくれたんだよぉ!!好きになっても良いだろ!!好きな子のジャージくらい、嗅ぎたくなっても良いだろ!!」


「いや、どんな事情があってもジャージを取って良いわけねえだろ⋯⋯。人の物を盗んじゃいけませんって、小さい時に習わなかったわけ?」


 何こいつヤバ⋯⋯!絶対に自分のせいにしないじゃん!俺は悪くない、世界が悪い!って思考100%の人間じゃん!!こえーよ!

 俺が煽ったからか、ますます諸田は怒りで顔が赤くなっていく。凄いなぁ、人間ってこんなに顔赤くなるんだなぁ。でもなぁ、キモオタくんの赤面なんか見たくないんだよなぁ。み〇を。


「盗んだんじゃない!!盗んだんじゃない!!置いてあったんだ!忘れてあったんだ!!届けようと思った、思ったから預かってた!!確かに渡すのを忘れたのは申し訳なかったけど!!僕は断じて盗んでなんかいない!!それなのに、僕がブサイクだから!?キモいから!?悪者に仕立てあげて、このイケメンと仲良くなるキッカケに使われてるんだぞ!?こんな惨めな話があるか!!」


 どこに女の子のジャージを預かったまま1年近く忘れる男がいるんだよ⋯⋯。あぁ頭痛くなってきた、こんなアホが3年まで進級できちゃうの?うちの高校。ヤバくない?偏差値ある?進学できるか不安になってきたわ⋯⋯。


「水瀬さんも、僕からいっぱいプレゼントを貰ったはずだ!!僕は優しい君に嫌われたくなくて、たっくさんの気持ちを送ったんだ!!水瀬さんは僕のことが好きなはずなのに、たまに他の男と話す姿を見ては⋯⋯嫉妬で頭がおかしくなりそうだったんだ!それでも僕は、水瀬さんの助けになればと思って、尽くして尽くして尽くして尽くして⋯⋯尽くして来たのに!!」


「お前だって水瀬先輩と木崎さんの両方を好きになってたじゃん。お前に嫉妬だなんだとか言う資格は無い。後言ってやるけど、お前はただ目の前に自分のモノになりそうな女の子が居たから手放したくなかっただけだ。今までの人生の中で、たった数回投げられた釣り針にしがみついてきただけだ。

 はっきり言って、そんなのは恋心でもなんでもない。ただの薄汚い独占欲だ。やっと手元に来たチャンスを、誰にも渡したくないってだけの醜い支配欲なんだよ」


 俺は自分で言いながら、ここには居ない曽根山に思いを馳せる。ごめんな、曽根山。遠回しにお前のこともディスってるけど勘弁してくれな、謝ってるし。今シリアスな場面だから、だからその泣きそうな顔のビジョンが空に見える演出やめて?


 まぁ、そんな曽根山の事は置いといて⋯⋯っと。俺は諸田の胸ぐらをより強く掴む。諸田はデブだが、ちゃんと鍛えてる俺ならこいつを片手で持ち上げるくらい造作でも無い。なんせ俺は天使だから!あっはっはっは!


「ぼ、僕が⋯⋯恋してないとでも?」


「そうだ。お前は確かに水瀬先輩も木崎さんも好きなんだろう。⋯⋯だけど恋もしてないし、愛してもいない。べらべら言い訳ばっか並べて、木崎さんのジャージ盗んだことを素直に認められないお前は、自分が一番大好きなんだよ。自分しか愛してないんだ」


 悲しいかな、恐らく諸田は人から愛されたことが少ないのだろう。人から愛されないから、せめて自分が自分を守ろうと動いてしまう。そして愛を受けてないから、正しい愛の向け方が分からない。

 そういう奴に限って、愛される努力をしていない。何故なら、愛し方の分からないやつにどうすれば愛されるかなんて分からないからだ。


「嫌がるだろう木崎さんの気持ちを考えられてない時点で、お前に二人に対する愛情は微塵も感じられないんだよ。水瀬先輩にお前がプレゼントとかして気を惹こうとしてたのも、自分が嫌われないためだ。水瀬先輩に喜ばれたいからじゃない、自分の欲求を満たし安心感を得るためのエゴ⋯⋯。ただのオナニーだ」


「オッ⋯⋯オナッ⋯⋯!」


 ちょ、ちょっと!人の格好いい決め台詞で恥ずかしがんないでよ!オナニー、って別にすっと言える程度の単語だろ!これだからクソ童貞は!

 と思っていたが、何やら後ろでも「お、おな⋯⋯」という呟きが聞こえてくる。声的に木崎かな⋯⋯?


 何ここ、みんな精神年齢中学生レベル?もっと恥ずかしい下ネタ沢山言ってやろうか!?英語の授業で「母音!ボインボイン!wwwww」とか言ってたチンパンジーレベルだぞ!話進まないから黙れ!

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