第31話
あれから。諸田は水瀬先輩と木崎に土下座をした。とりあえず土下座しろ、という俺の命令を素直に聞いた形になる。
しかし水瀬先輩も木崎も、こんな事では許せないのだろう。かなり複雑な表情を浮かべていた。一度全員の好感度を確認してみるか。
『
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
水瀬絢香 → 諸田平二
好感度:-88
諸田平二 → 水瀬絢香
好感度:+23
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
木崎姫華 → 諸田平二
好感度:-76
諸田平二 → 木崎姫華
好感度:+14
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
水瀬先輩も木崎も、より一層諸田が嫌いになったらしい。まああんな態度見せられれば、そりゃそうだろう。今まで見た中でぶっちぎりで嫌われているのは、逆にレアで凄いと思った。
同じように、諸田から二人への感情もかなり沈んでいる。これは今回で嫌われていることが分かり、ワンチャン感じなくなったからだろう。現金なヤツだ。
とぼとぼと帰っていく諸田の背中を見送ると、水瀬先輩と木崎が凄い勢いで頭を下げてきた。
「助けてくれてありがとう、巻き込んでごめんなさい⋯⋯。折角、アニメリーゴーランドで親睦を深めよう、って話だったのに⋯⋯」
「ははは、気にしないでください。木崎さんもごめんね、思い出したくないことを思い出させて」
「い、いえいえ!天城くんのおかげで⋯⋯け、決着が着けられたから良かった⋯⋯です」
二人とも申し訳なさそうな顔を俺に向けてくる。俺にキレたり(白澤)馬鹿にしてきたり(黒崎)する女とばかり会話してきたので、こうもしおらしい態度を取られるとむず痒くて仕方ない。や、やめいやめい!
「あ、あの⋯⋯!お礼に、な、何か奢らせてください⋯⋯!」
「いいよいいよ!それより、アニメリーゴーランドに戻る?」
「ちょっとした騒ぎ起こしちゃったから、行きにくいなぁ〜⋯⋯」
過剰なお礼をしようとする木崎を制し、再度アニメリーゴーランドに向かおうとするが、水瀬先輩の言葉で先ほどの件を思い出す俺。そういえば、隠し撮り犯を晒しあげようと脅したんでしたね、はい。
天城家家訓、売られた喧嘩は1億倍にして返せ。俺は家訓を守っただけなのだ。そんな家訓はないけど。
三人で話し合った結果、アニメショップはまた今度という事になった。今日はとりあえず、軽くランチでも食べて帰るとしよう。
俺たちは、アニメコンセプトカフェという店にやって来た。何やら、アニメのコラボメニューなるものが食べられるらしい。今日は『惨劇の超人』コラボだ。
「いらっしゃいませ!3名様ですね、こちらへどうぞ!」
店内には、惨劇の超人OPテーマが流れている。あんまり落ち着く感じの歌ではないが、店内の禍々しい装飾にあっていて良い感じに聴こえる。
俺たちは、店内の奥の方へ案内された。
「へぇ、初めてこういう所来たけど、結構趣あるね」
気になるのは女の子が多いことか。こういう所、あんまり男は来ないのだろうか。不思議である。
「天城くんは惨劇の超人も見たことあるんだっけ」
「はい。兄が好きなんですよ、こういう血とか肉とかが巻き上がるアニメ」
「そ、そうなんだ⋯⋯。グロ系が好きなんだね」
いやぁ、あれはグロも好きだと思うけど⋯⋯たぶん、人が苦しんだり悩んだりするものが好きなんだろう。性格ゴミだもん、うちの兄貴。
「あ、天城くん見てください⋯⋯!ジョージの脊椎液入りワイン風ぶどうジュース、美味しそうじゃないですか?」
「う、うーん⋯⋯脊椎液入りのワインってあんまり想像したくないなぁ⋯⋯。この、自由の翼ホワイトソーダとかの方が美味しそうじゃない?」
ジョージの脊椎液入りワインってあれだよな、結構後半の方で出てきた飲んだらあれがあれになる(ネタバレ防止のため割愛)飲み物だよな。木崎のセンスはたまに人とズレていて見ていて飽きない。
「やっぱこれでしょ、サーニャの蒸かし芋!」
「サーニャ・ブロンズ⋯⋯貴様が右手に持っている物はなんだ?」
「蒸かした芋です!調理場にちょうど頃合いの物があったので、つい!」
『ぷっ⋯⋯あははは!』
教官とサーニャの蒸かし芋コントを水瀬先輩に振ると、すぐ求めていた答えが返ってきた。こういう時、オタクの友人がいると楽しいな。
「むっ⋯⋯なんか絢香先輩、もう天城くんと打ち解けてますね⋯⋯」
「そう?姫華も打ち解けてると思うけど」
「うん、俺はもう木崎さんのこと友達だと思ってるよ⋯⋯あれっ、もしかして俺のひとりよがり!?」
「い、いえいえいえいえ!あ、天城くんが友達だと思ってくれてるなら⋯⋯よ、良かったです。私だけ仲良くなりたいって思ってたら、ど、どうしようかなって⋯⋯」
そう言って、恥ずかしそうにモジモジする木崎。う〜ん、可愛い!
丁度いい機会なので、ここぞとばかりに俺の要求を伝えておこう。
「ならさ、木崎さん敬語やめない?」
「ふ、ふえっ!?」
「俺も『木崎』って呼ぶからさ、木崎さんも敬語やめてくれたらもっと仲良くなれると思うんだよね」
秘技、『ただしイケメンに限る』!俺がイケメンだから許される、呼び捨て要望&敬語禁止令。これを諸田が言ったとなれば、即通報案件だろう。⋯⋯可哀想だなぁ、そりゃ諸田も荒むわ。
1人、悲しき男諸田に思いを馳せていると、モジモジしたままだった木崎から、ぼそりと声が聞こえてきた。
「あ、ああ、天城、くん⋯⋯。これから、よ、よろしく⋯⋯ね?」
「ああ、これからも宜しく、木崎」
俺が差し出した手を、木崎は恐る恐る握った。男慣れしていない木崎だが、いつか男に慣れて好きな男が出来ると嬉しい。その時は、俺の持てる全身全霊を持って彼氏を作ってあげたい。
水瀬先輩は、ニコニコと俺たちを見ている。まだ会って一週間と経っていないが、この人は良い人だと一発で分かった。そもそも白澤が守りたいほどの居場所にいる人たちが、悪い人間なわけが無いのだ。白澤のそういう所は信頼している。ただ、俺を見る目だけフィルターが掛かっていることが玉に瑕ではあるが。
「うんうん、天城くんなら任せても大丈夫そうだね!これで私も、安心して引越し出来るよ〜!」
「うわ、忘れてましたその設定⋯⋯。そういえば水瀬先輩って、ぼちぼち転校するんでしたね」
「設定ってなに?」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます