第19話
「うわ〜!どれも美味しそうだね、天城くん!」
「は?なんでダイエット中の曽根山がラーメンを美味しく食べられると思ってんの?お前はこれ、『ラーメン屋が作る本気の味噌汁』」
「味噌汁!?ラーメン屋で、僕味噌汁しか食べられないの!?」
「なんてな、ジョーダンジョーダン。今日はチートデイって事にしとくから好きに食え。つーか、目の前で泣きながら味噌汁しか食わない奴がいたら、ラーメンが不味くなるだろ。そんくらい考えろ」
「理不尽!存在が理不尽!!」
ラーメン屋のメニューを見ながら目を輝かせる曽根山を、俺は楽しく、それは楽しく弄っていた。やっぱこいつ面白いわ、弄りがいだけなら白澤より才能あるよホント。うんうん。
俺と曽根山のやり取りにまるで興味を示さない黒崎は、メニュー表をまじまじと見ている。白澤は、曽根山を少し心配しているようだ。可愛いヤツめ。
なお、ボックス席に同性同士で隣合って座った。俺の前が黒崎で、曽根山の前が白澤だ。目の前に座る黒崎が、メニュー表を俺に見せながら口を開いた。
「天城くんのオススメってどれなの?」
「この『極味噌ラーメン』ってやつ。麺硬め脂少なめ味普通が黄金比だ。そしてここに味玉をトッピングして食ってみな、飛ぶぞ」
「じゃあそれで。白澤さんと曽根山くんは決まった?」
「僕は、この『濃厚こってりとんこつ超チャーシュー麺』にしちゃおうかな!麺硬め脂多め味濃いめ!味玉海苔トッピング、チャーシューブースト!」
「そういう所、お前がデブたる
「私は塩ラーメンにしようかなぁ。麺も脂も味も普通で」
ラーメンひとつ取っても人柄が出る。俺のオススメをそのまま頼む黒崎、この店のスタンダードをまず食べようとする白澤、いきなりメガ盛りの邪道を突き進む曽根山。今から予想しとくけど、たぶん曽根山いきなり味変用の調味料入れると思う。そういう奴だろ、こいつ。
まず店が考えるスタンダードの味を食ってから、味変の調味料って使うもんだと思うんだよな。つまり、曽根山は存在が邪道なのである。
閑話休題。
俺は、お気に入りで黒崎にオススメしたメニューを注文用紙に書く。すると、目の前に座る黒崎がすっと注文用紙を俺に見せてきた。そこには、こんな文字が書かれている。
『おそろいね、天城くん』
え〜?何こいつ、どう考えても俺の事好きだよね?こんなことしないよね、普通。でもなぁ、今は誰かと付き合う気無いから⋯⋯。ここは丁寧に。
俺も黒崎を見習って、注文用紙の端に返答メッセージを書いた。
『ごめん、黒崎の気持ちは嬉しいけど、今は付き合おうとかって気持ちが無いんだ』
「ぷっ!あははははは!」
その紙を見せると、黒崎は突如吹き出して大笑いした。今までならブチ切れていたと思うが、なんか今は大笑いしている。情緒不安定なのか?
ああいや、あれは多分あれだな⋯⋯。顔に「予想通りのリアクションで草」って書いてるわ。前言撤回、あいつ多分俺の事嫌いだよ。うん。
白澤と曽根山は、突如大笑いしている黒崎に驚いている。いや分かる、分かるよ。怖いよね、いきなり大笑いしてる人、それも脈絡なく。
唯一マシなのは、黒崎の笑い声が鈴の鳴るような音で、可愛らしいことくらいだろう。マジで可愛いこと以外の取り柄が無いよなぁ、こいつ⋯⋯。
ひとまず全員が注文用紙を書き終えたことを確認した俺は、店員呼び出しボタンを押した。
■■■■■ あとがき ■■■■■
キリが良かったので、かなり短いところで今回は終わらせてあります。代わりに、もう1話今日中に上げます。
また、今まで間違って『恋愛』カテゴリーになっていましたが、『ラブコメ』カテゴリーに改めました。よろしくお願いします。
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