第38話
俺は一旦あいつらを泳がすことに決め、木崎たちの元へと向かう。白澤と黒崎がフォローという名の足止めをしてくれたおかげで、先程の最悪な会話は聞かれていないだろう。もし聞かれていたら、木崎の心に大きな傷がついてしまっていた。
「天城くん⋯⋯決めたわ。私、さっきのヒョロチビカス男を一発殴ってくる」
「どうどう!なんでそうなんだよ!」
戻って早々、罵詈雑言と共に暴行宣言をする黒崎。袖をまくり、腕をぶんぶんと回しながら歩いているが、ほんの少しも威圧感が無いのは才能だろうか?
アホなことを言っている黒崎を落ち着かせると、この場で最も冷静でしっかりしている白澤に目を向ける。
「なんか、姫華ちゃんの話を聞いてたら黒崎さんが熱くなっちゃって⋯⋯。私もそこそこ友達からってお誘い、断られたことあるから不思議じゃないんだけどなぁ」
「私は無いわ。むしろ、どいつもこいつも泣いて喜んだくらいよ。ま、一度も友達になってあげたことなんて無いけれど。ふっ」
黒崎ってマジで性格ゴミだよなぁ⋯⋯。こんな時にマウント取ってくんなよ。
白澤の懸命なフォローの結果なのか、木崎は特になんとも思っていないようだ。ひとまず安心である。
「よし、みんなで打ち上げでもするか」
「天城くん太っ腹ね。ゴチになります!」
「一言も奢りって言ってねーだろ!あ、木崎はタダだから安心して?」
「そ、そんな訳には!」
「ふふ、天城くんにしては良い提案だね。よし、そうと決まればファミレスへGO!」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
数日後。俺は、ここ最近例のクソサッカー部男子共を監視していた。木崎をターゲットにするのは止めたようだが、またよからぬ事をしないとも限らない。
いきなりとっちめても良いのだが、証拠が無い状況では言いがかりだなんだと文句言ってくるに決まっている。それに、ああいう輩は個人からの攻撃では決して折れない。無駄な強固さだ。
調べたところ、柏田はサッカー部男子たちにこき使われているパシリだ。柏田を寄って集って馬鹿にすることで楽しんでいるようである。最低だな。
このカス共は合計4人いる。
ただでさえ雑魚の弱小サッカー部で、レギュラーメンバーに選ばれていない真の雑魚共だ。3年生が卒業すれば繰り上がりでレギュラーになるのだろうが、結果はお察しだよな。
「ぎゃははは!PikPok撮ろうぜー!」
「いいね〜!やりらふぃー!やりらふぃー!」
「ぐは!お、お前それは古いって!」
「草超えて森!」
えぇ⋯⋯知能指数低すぎない?今は昼休み、食堂でバカ騒ぎしている四馬鹿を飯食いながら観察している。
「あ、天城くぅん⋯⋯!や、やめようよ陽キャを敵に回すの⋯⋯!」
「は?俺も陽キャだから問題ねーだろ。だいたい、陽キャとか陰キャとかくだらない事言うな。お前はそれ以前の問題だぞ曽根山」
「流れるような罵倒!」
一人で監視するのも暇なので、俺は曽根山を強制的に巻き込んでいる。罪悪感?無い。あんなやつらが何かしようとしたところで、俺一人で十分対処できるから問題ないからな。曽根山に何かしようとするなら、とりあえず俺が潰してやろう。
俺の男気溢れる気持ちなぞ知らない曽根山は、不満という顔を隠そうともしない。隠せや。
ちなみに、曽根山は食堂で俺の作った弁当を食べている。最近は、ヘルシーながらも母親が作った料理より美味いと、一生飯を作ってくれないかと曽根山に要求された。もちろん断ったが。
校内で堂々とPikPokを撮り始めたバカどもを尻目に、俺は目の前に広がる野菜炒め定食を口にする。うむ、可もなく不可もなく。値段相応の安い味付けである。ディスってないよ?
「そういえば次はどうするよー?」
「来週、林間学校あんだろ?あそこでさぁ⋯⋯」
「うわ!伊藤鬼!鬼だー!ぎゃははは!」
聞き耳を立てていたところ、気になる情報をポロッとこぼしたカスCこと伊藤。ふむ、あの柏田がやったような何かを林間学校で仕掛けるつもりのようだ。
決めたぞ。そこで必ず証拠を掴み取り、林間学校で晒しあげ断罪する。こいつら、卒業するまで一生女子に後ろ指を刺されて過ごさせてやるからな!!
俺は恋愛斡旋人だ。恋愛感情を利用して悪事を働くやつらを、決して許さない!まあ恋愛感情を利用して10万円稼いでるんですけどね!てへっ!
■■■■■ あとがき ■■■■■
急で申し訳ありませんが、私用のため1週間ほど更新をお休みさせていただきます。
また来週の土曜日(6月25日)から、よろしくお願いします。
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