05.体に良くない修行(前編)
05.体に良くない修行(前編)
修行二日目―――俺は魔法が使いたかった。だって魔法ってかっこいいじゃん?やっぱり男子なら憧れるでしょ!
「なぁ、ナビさん、俺も魔法って使えたりするのか?」
『えぇ、もちろんですよ!転生神様がご主人様をこちらの世界にお呼びになられた際に、ご主人様の体を魔法が使える仕様に組み替えましたからね』
転生神?俺を神の間に連れて行ったおじいさんのことか。
「いいじゃん!早速やってみようぜ!」
「まず初めに昨日獲得した『生活魔法』から試してみるか」
生活魔法って言えばおそらくこの世界の人々が日常的に使う魔法のことだろうな。
「具体的にどんな魔法が使えるんだ?この生活魔法で」
『色々使えますよ!例えば…………料理用の小さな火をお起こせたり、水を出せたり、服の汚れを落としたりとか』
「随分便利なもんだなぁ………そんな魔法、元いた世界だったらどれだけ重宝されただろうか」
しかし困ったことにこの魔法を使うにはどうすればいいのか分からない。確かアニメや漫画ではこういう時には大抵、頭の中で火をイメージすれば魔法が発動できていたよな………
とりあえず火をイメージして意識を手に集中させると、手のひらに小さな魔法陣(?)的なものが現れて、その上にレモンサイズの火が灯った。
「やった、できたぜ!このまま行けばどんどん上手くなれるかもしれないな!」
しかし、それを15分ほど出し続けるとなんだか、だんだんと息が苦しくなってきた。
―――苦しくなってきたな………あっ!俺にはあのスキルがあるじゃないか!
ここで『苦痛耐性』を発動してみたところ、その苦しさが全くなくなった。
―――もしやこの火を出したまま走れば、体力(HP)も付くし、魔法も楽しめるのでは ⁉ これはやるしかないでしょ!
更に1時間ほど火をつけっぱなしで走っていると、急に目まいがして倒れてしまった。
「ご主人様、ご主人様、起きてください!」
とナビさんの声が聞こえた。ゆっくり目を開けると、ナビさんが頭の中で言った。
「ご主人様はバカなんですか ⁉ 魔法を一時間使いっぱなしで走り続けるなんて!」
ご主人に向かって、バカとはなんだ、バカとは。ひどいじゃないか。ついつい魔法が自分にもできるって知って、調子こいて使っちゃっただけなのに。
「ご自分のステータスをしっかり確認してください!」
うん?HP:300/500、MP:0/500………え?MP:0 ⁉ もうじゃあ今日俺、魔法使えないの?やっちまったぁ〜!しかも頭もズキンズキンするし、最悪だぁ〜!もう今日は拠点に戻って昨日の残り物の飯食って寝るしかないか…………
修行三日目―――朝一番にステータスを確認してみると、俺はめちゃくちゃ驚いた。なんとMPが昨日0だったのが、1000まで上昇していたのだ!
「ナビさん、俺の魔力、なんでマックスが500だったのに1000まで上がってるんだ?」
『なんででしょうね?普通は魔力をすべて空になるまで使って倒れるアホは見たことがありませんから』
アホとはなんだ、アホとは!
「私は、別にご主人様がアホと言ってないのにどうしたんですか?プークスクスw!」
くっそうぅ!ナビのやつ俺の日本で生きていたときの記憶を盗み見やがったな!そうでなければ「プークスクスw!」なんて知らないだろうし。
俺はふと思った。一昨日作った薬草汁を飲んだら体力が回復することは実証済みだが、もしかしたら魔力も一緒に回復するのではないかと。昨日またあれを飲んで寝たら、今日の朝にHP、MP数値がともに上がっているわけだしな。ひとまず試してみるか。
―――三時間後
やりすぎた〜!頭いてぇーっ!また魔力をスッカラカンにすることができたが、頭が痛すぎる。そこで、『苦痛耐性』を使ったところ、やはり全く痛くなくなった。しかし痛くなくなっただけでステータスを見てもHP、MPの数値は変わっていない。ならば…………飲んでようか、薬草汁!
俺が薬草汁を飲み干すと体の中から温かいエネルギーがグワァ―――ッと込み上げてきた。改めてステータスを確認すると、HP、MP共にマックスまで回復していた。
そうして俺は、素晴らしい修行メニューを思いついてしまったのだ。魔力が0になるまで魔法を使い、苦痛耐性で痛みを無くして、薬草汁で全回復!…………最高じゃん!
そう思ったときに、ピロン!と頭の中で例の音が鳴った。
《称号『修行バカ』『ドM気質』を獲得しました》
はぁ ⁉ ドM気質?冗談じゃねぇよ〜!ふざけんなよ〜!なんだよドMって、俺は修行頑張ってただけなのにぃぃ…………!!
リュートのステータス
Lv:1
HP:500
MP:1000
獲得スキル一覧:苦痛耐性、持久力、駆け足、錬金術、生活魔法
ユニークスキル一覧:ナビゲート
称号:異世界人、苦痛に耐えし者、不運の象徴、修行バカ、ドM気質
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