03.苦痛耐性

03.苦痛耐性

 これじゃよ、と言って神様が見せてくれたスキルは、“苦痛耐性” だった。ん?苦痛耐性?なんか超微妙だなぁ〜

「神様、一つ聞いていいですか?」

「うむ、よいぞ」

「この苦痛耐性ってどんなスキルなんですか?」

「うーん、まぁ簡単に言えばどんな精神異常も引き起こさない、つまりネガティブになりにくいということじゃ!あちらの世界ではみんな持ってるがのう……」

 え、みんなが持ってるコモンスキルだけかよぉぉぉ………

 俺の異世界生活終わった―――こんなのモンスターに一瞬で出会って、すぐにぶっ殺されてまたここに戻ってくるやつじゃん!と落ち込んでいると、ふと「あれ、なんでこんなことで悩んでるんだ?きっと今は少ない代わりに、あっちに行ったらものすごい勢いでスキルなんて付くさ!」と思ってしまった。あぁ、これが “苦痛耐性” の力か………元いた世界では味わえないスキルの力の凄さを実感した。

「じゃあ、異世界に行く準備はいいか?」神様が笑っている。

 一つだけいいですか?と俺が神様にたずねると神様はなんじゃ?と聞き返してきた。「向こうの世界の言葉を理解できるようにしてください。」

「何じゃそんなことか。それならもう大丈夫じゃぞ。それはスキルではなく、『加護』に当たるからのう。でもやはりこれも一個しかつけられなかったわい。」

「ありがとうございます!あと…できればいい場所に送ってください!」

「それは保証できん!フォッフォッフォッ!」

 えぇ〜マジですか?できればいい場所に………と願って俺は神様に身を任せた。

 あれ?そういえば俺、神様に行く国の名前とか何も聞いてないじゃん!やらかしたぁ〜!と思ったときにはもうすでに遅かった。

〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 〜 

『ご主人様、ご主人様、起きて下さーい!』

 明るい声が聞こえて俺はハッと気がついた。あ、そうか。俺は一度死んで、こっちの世界に自分の体のまま転生したのか。ん?待てよ、俺は一人でこの世界にやってきたんだよな………じゃあなんで他の人の声が聞こえたんだ?誰か助けに来てくれたのか?周りを見回すとそこはうっそうと木が茂っている森の中で、人など誰もいなかった。

 えぇ、もしかしてお化けっすか?いきなりモンスターなの?と思うと、

『失礼ですね!私はモンスターなどではありません!ご主人様の誠実なナビゲーターですっ!』

 そう可愛らしい声が聞こえてきた。ナビゲーター?俺にそんなものあったっけ?

『私はご主人様のユニークスキルです』

と頭の中に声が響いてきた。

『奇妙だと思うなら、“ステータス”と念じてみてください』

 『ステータス』と念じると、本格的なゲームのような表示が出てきた。ステータスには、種族:人族、名前:サカイ・リュート、Lv1、HP:100、MP:100、スキル:苦痛耐性、ユニークスキル:ナビゲート、称号:異世界人、苦痛に耐えし者、不運の象徴と表示された。試しにLv、HP、MP、称号の表示を押してみると、『Lv:自分のレベル。獲得経験値によって上がる。』『HP:生命力。0になると命を失う。』『MP:魔力。魔法を使用するときに必要なエネルギー。』『称号:世間一般的に見て、自分がどのように見られているのかを示すもの。』次に苦痛耐性を押すと、『苦痛耐性:スキル使用時の精神的、肉体的な苦痛を緩和する。』と表示された。

「あぁ、お前のこと信じるよ、ありがとなナビゲーターさん。ところで俺のユニークスキルはどこでできたんだ?神様には俺には苦痛耐性しかつかなかったと言われたんだが………」

『ご主人様は神の間からこちらの世界に来るときに、神にこちらの世界のことについて何も聞かなかったことを後悔していたのを私が見つけましたので、勝手にご主人様にくっついてきました!テヘペロ!』

 テヘペロって………顔が見えないのに言われてもなぁ……

「あぁ、そうだ!これからお前のこと『ナビ』って呼んでいいか?」

『ご主人様が私に名前をつけてくれるなんて!あぁ、嬉しくてナビ故障しちゃいそうですっ!』

 あ、あぁそれはどーもです。

「そういえばここってどこなんだ?」

『通称『龍殺しの森』というところですね。人間界において最強を謳う生命体である龍ですら、この森に一度入れば二度と生きては出てくることができないと言われています』

 おい、ちょっと待った。人間界において最強を謳う生命体である龍?そもそもこの世界ってそんなやばい生き物がいる世界なの?そして今この場所がその最強生命体である龍ですら生きて帰ってこられない『龍殺しの森』 ⁉ 早く抜け出さないとマズくないですか ⁉ あぁ、やっぱ俺不運だわぁ………

『抜け出すには、ボスを倒す必要があります』

 人の心読むなよ〜。しかもどう考えたってここのボスってことは相当やばいヤツじゃん!おぉ、神様よ。なぜ俺にこんな試練を与えたんだっ!後で絶対ぶっ飛ばしてやるからな?

 すると突然、ガサガサッ、と背後から音がした。





リュートのステータス

Lv:1

HP:100

MP:100

獲得スキル一覧:苦痛耐性

ユニークスキル一覧:ナビゲート

称号:異世界人、苦痛に耐えし者、不運の象徴

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