18.リュート VS 白髪ムキムキおっさん

18.リュート VS 白髪ムキムキおっさん

「あ、アーク兄弟戦闘不能!よって勝者はリュートッ!」

 白髪ムキムキおっさんことマスラルは俺の勝利を高らかに宣言した。

(よしっ、勝てた!ってかあいつらCランク冒険者だったのか。弱すぎる。まだ、のほうが強いぞ?)

 俺が闘技場を去ろうとすると、マスラルが

「待てっ!リュートよ!」

 と止めてきた。どうやら、氷漬けにされてしまったアーク兄弟の救出とこの氷の消滅を頼むということだった。

「ストレージ!」

 俺は愛刀、鮮変万華せんぺんばんかを取り出した。俺が火属性の魔力を鮮変万華に通すと、刀身は赤く染まっていく。

「炎刃二式、不殺の炎ころさずのほのおッ!」

 絶火と違い、不殺の炎は人を殺さずに狙った対象物だけを焼き尽くす炎だ。

「素晴らしい!リュートよ、わしと決闘せよ!」

 え、マジか………強そうだなぁ。逃げよっかなぁ………


「ご主人さま、これでもし勝てれば更に高いランクから始められるのでは?」

「確かにな!それじゃあ、やってみるか!」


「わかりました。では始めましょう!」

「お主、ポーションは飲まんのか?」

「ポーション?って何ですか?」

「お主、魔法使いなのにそんなことも知らんのか。ポーションは魔法使いの魔力が少なくなった時に飲んで魔力を回復させるアイテムだ」

「俺………あんまり魔力減らないんで平気ですよ」

「ま、まぁ、お主が良いならそれで良いが………では、始めよう!」

 マスラルの姿は一瞬で見えなくなった。が、所詮ただ速く走ってるだけの話。俺がもっと速く走れば問題ない。

「白髪ムキム――、ギルドマスター!これでいいですか?」

 俺は少しゆっくり走ったがすぐにマスラルの速度に追いついてしまった。

「何っ⁉ 儂の最高速度についてくるだと⁉」

 走っていたマスラルが止まった。これで最高速度?遅いな………

「このくらいまでならいけますよっ、と」

 俺は神速移動で闘技場内を走り回る。

「も、もうよい!お主の速さは分かった。ならば次は全力の魔法で勝負しようではないか!」

「あのー、すみません。ここじゃ狭すぎるんで、ちょっと別のところに行きましょうか」

 そう言って俺はストレージを開いた。

「行きましょう、ここならいくらぶっ放しても大丈夫ですから!」

 マスラルはとても驚いていたが、すぐに落ち着いてニヤリと笑い、

「面白い!ついて行ってみよう!」

 とノリノリでついてきてくれた。

 入ってきた入り口が閉じ、完全にストレージ内の亜空間に入った。

「おい、リュートよ。ここはどこだ?」

「ここは俺のストレージ内の亜空間です。ここは外の世界との時間軸がずれているので、何年間いても大丈夫ですよ。それじゃあ、いきますかっ!地獄の業火ッ!」

「ぬおっ!」

 マスラルはギリギリで避けた。

「面白いなお主、ならばこちらも行かせてもらおう!金剛拳こんごうけんッ!」

 そう言うとマスラルの両手が金色に輝いて硬化こうかした。

「儂の金剛拳は世界最高の硬さじゃ!これでお主を直接倒すっ!」

 世界最硬か………一体どれほどの硬さなのだろうか。

「なら来てみてください!」

「ふぅんっ!せいっ!飛空拳ひくうけんッ!」

 マスラルが拳を空中で打つとその衝撃波がこちらまで飛んでくる。これは……当たっても死ぬことはないだろうが地味にダメージが入りそうな技だな………

「リュートよ、儂の最強の技を受けてみる気はあるか?」

「ぜひぜひやってみて下さいっ!」

「そうか―――死ぬなよ、金剛拳・奥義ッ、金剛龍殺こんごうりゅうさつ激震拳げきしんけんッ!」

「なっ!」

 一瞬で俺との距離を詰めたマスラルは俺の腹に拳を当ててほんの少しだけ動かした。

(この技はマズいっ!)

 そう、この技は俺が地球にいた頃に何度か経験したことのある技だ。俗に言う発勁はっけいというものだ。一見ただのゼロ距離からの打撃に見えるが、全身のエネルギーを一瞬でこの拳一つに集約させた打撃の威力は半端なものではない。しかもこの技、どんなに頑丈な鎧を着ていても鎧通しみたいな内部破壊の技だから当てられたら防御は不可能だ。こうなったら後ろに跳びながら少しでも威力を減らすしかない!

「神速移動ッ!―――グハッ ?! 」

 最高速度のバックステップをしたもののやはり少し当たってしまったらしい。

「っ―――!今のは効きましたよ………」

「おいおい…………今のはドラゴンでも一撃で倒す儂の奥義だぞ?それを受けて肉体が崩壊していないとはな………」

「でも地味に痛かったんで、俺もちょっと本気でやらせてもらいますっ!」

 俺は左手の親指に「地獄の業火」、人差し指に「女神の涙」、中指に「昇龍の竜巻」、薬指に「天神の豪雷」、小指に「大地の怒り」、手のひらに「無限の闇牢」、「滅魔の十字架」の超圧縮版を出す。そして右手に鮮変万華を握り、七つの魔法をまとった左手でその刀身に触れると、刀身が金色に光りだした。

彩刃さいじん一式、輝夜の舞かぐやのまいッ!」

 俺が刀を振ると、あたり一面が一瞬、真夜中のように静まり返った。しかしその後瞬きをする間もなく、とてつもない爆発が起こった。

「グハッ―――!」

 金剛龍殺激震拳を使った後の反動で動きがゆっくりになっていたところでの輝夜の舞は流石さすがに効いただろう。

「ハァハァハァ…………リュート!儂の負けだ」

 そこには地面に仰向けに倒れているマスラルの姿があった。

(おいおい、あの爆発を防いだっていうのかよ。流石だな金剛拳………)

「だが、これは人前で無闇にやってはいかん。死人が出るぞ」

「わ、わかりました。では、外の世界に戻りましょうか!転移ッ!」

 頭の中で、闘技場をはっきりとイメージする。すると頭の中がぐるんと回転したように感じ、気づくと俺たちは闘技場のど真ん中に立っていた。

 そしてその後俺はマスラルにギルドマスター室に呼び出された。




リュートのステータス

Lv:46497

HP:測定不能エラー

MP:測定不能エラー

装備:ローブ(等級:測定不能)、剣(等級:測定不能)、指輪(等級:測定不能)

獲得スキル一覧:(剣術系)縮地、絶対切断、次元切り、持久力、駆け足、神速移動

(魔法系)苦痛耐性、錬金術、生活魔法、火魔法、水魔法、風魔法、土魔法、雷魔法、聖魔法、闇魔法、時空魔法、空間魔法、ストレージ、ダストボックス、転移魔法、創造魔法、テイム、魔物意思疎通、魔物召喚、付与魔法

(その他)手加減、自動解体

ユニークスキル一覧:ナビゲート、神眼、成長加速

称号:異世界人、苦痛に耐えし者、不運の象徴、修行バカ、ドM気質、ドMを極めしもの、剣神、魔帝、鬼殺し、神を模倣する者、神龍の友

加護:神龍の加護

鮮変万華の技:

『炎刃』一式「絶火」二式「不殺の炎」

『風刃』一式「殺爪」

『炎風刃』一式「炎嵐」

『氷風刃』二式「凍龍」

『吸魔の太刀』滅光斬

『彩刃』一式「輝夜の舞」

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