第56話 鏡花の喜ばしい報告と僕たちのこれから。

 テストが終わり、卒業式が近くなると次の週から短縮授業になった。

 先生曰く、理由はいろいろとあるが一番の理由は3年生の卒業式が近いからその話し合いや打ち合わせのためらしい。

 まあ、早く帰れるので深くは聞かないが。

 そんなことを思っていると

「そういえば、鏡花ちゃんの受験はどうなったのでしょうか?宮都は何か聞いていませんか?」

 冬華が心配そうに聞いてきたので

「なら今日行ってみるか」

 そう僕が言うと冬華が「行きましょう!」と元気よく言う。

 荷物を置いて着替えてから隣の僕の家族が住む家に行くと鏡花が玄関にきて

「お兄ちゃん!私、志望校に受かったよ!」

 と言って合格通知を見せてくる。

「よく頑張ったな!すごいぞ!鏡花」

「そうですね!プレッシャーに負けずによく頑張りましたね!さすがです!」

 と言って僕と冬華が褒める。

 そのあと僕たちは冬華と住んでいる家に戻る。

 すると冬華が

「鏡花ちゃんは友達とかできるでしょうか…」

 と言って心配そうにしていたので

「鏡花なら大丈夫だ。あいつは心が強いからな」

 僕が自信満々に言うと

「宮都が言うのならそうなんですよね」

 と言って納得してくれた。

 そのあと僕たちはテレビを見ながら雑談をしているとインターホンがなったので玄関に行くと鏡花がいた。

「どうした?」

「受験が終わったから暇で来ちゃった」

「まぁいいや。上がっていいぞ」

 そう僕が言うと「お邪魔します!」と言ってリビングに行く。

 そのあとは3人で雑談をして過ごした。

 その雑談の中で鏡花が

「そういえば、お兄ちゃんが入っている部活に卒業する先輩っているの?」

 と聞いてきた。

「いるけどどうして?」

「私が授業を受けた通信制の中学校で部活に入ってる私と同じ学年の人がね、「後輩は何くれるんだろう」って言って楽しみにしてる人がいたから」

「多分だけど定番で花束と寄せ書きかなぁ?」

 そう僕が言うと

「それだけだとなんか可哀想です」

 と冬華が言う。

「なら、明日にでも由希先輩に花束と寄せ書き以外に何を送るか聞いてみる?」

「私、由希先輩とLETTERのIDを交換したので今メッセージを送って聞いてみますね」

 そう冬華が言って『綾川先輩に花束と寄せ書き以外に何を送りますか?』とメッセージを送る。

 するとすぐに由希先輩から『私は今どんなものを送るか考えてる』とメッセージが返ってきた。

 しばらく3人で考えていると

「髪結いゴムなんてどうかな?お兄ちゃんがその先輩は髪が長いって言ってたから」

 鏡花が思いついたように言う。

「髪結いゴムか…」

「髪結いゴムですか…」

 僕と冬華が少し考えて鏡花に

「「それだ!」」

 と2人同時に言う。

 決まると由希先輩に『私たちは髪結いゴムを2人であげることにしました』とメッセージを送るとすぐに『私はハンカチを送ることに決めたよ!』とメッセージが返ってきた。

 そして卒業式前日。

 僕と冬華は髪結いゴムをデパートに買いに行く。

 たくさんの色の種類の髪結いゴムがあって決めるのに苦労した。

 卒業式終了後、僕と冬華と由希先輩の3人で綾川先輩のクラスに行く。

「遅かったね。私に何か用かな?」

「まずは綾川先輩卒業おめでとうございます」

「ありがとう」

「そしてこれは僕たち後輩からの卒業祝いのプレゼントです。受け取ってください」

 僕は代表して3人分のプレゼントを綾川先輩に渡す。

 するとさっきまで悲しそうにしていた綾川先輩がいつも通りの表情になって

「私の周りの人たちは、卒業式の前日にそうゆうものを貰っていたから『もしかして私にはないんじゃないか?』と思って悲しくなったが、なんだ!私の杞憂じゃないか!今、私はとてもうれしい!最後にいい思い出ができたよ。ありがとう、後輩たち」

 そう言ったあとに

「すまない。両親を待たせているんだ。私は先に失礼するよ。」

 と言って足早に去って行く。

 綾川先輩が去ったあと、僕たちも帰ることにした。

 side綾川紗奈衣

 私は卒業式前日、周りの部活に所属していた人が後輩からプレゼントを貰っていた。

 それを見て私は『どんなプレゼントを貰えるのだろう』とドキドキしていた。

 だけどその日は私の所に後輩たちは来なかった。

 家に帰ると由希から『明日、卒業式が終わったあと、教室に残っていてください。話があります』というメッセージがきた。

 そして卒業式終了後、私は言われた通りに教室で待っていると部活の後輩たちが来てプレゼントを私にくれた。

 その時、私は嬉しさのあまり泣きそうになったがこらえて

「私の周りの人たちは、卒業式の前日にそうゆうものを貰っていたから『もしかして私にはないんじゃないか?』と思って悲しくなったが、なんだ!私の杞憂じゃないか!今、私はとてもうれしい!最後にいい思い出ができたよ。ありがとう、後輩たち」

 そう言ったあとに

「すまない。両親を待たせているんだ。私は先に失礼するよ」

 と後輩たちに言って私は教室を出る。

 廊下を歩いていると私の目から涙があふれてきたが後輩たちに泣き顔を見られたくなかったので私は廊下をいそいで歩いて両親の元に向かう。

 両親は私が泣いていたのでびっくりしていたが、私の手に持っていたものを見ると

「いい後輩たちを持ったね」

 と言うだけで泣いている理由を聞いてこなかった。

 家に帰ると私は自分の部屋に行って後輩たちがくれた色紙と花束の他にくれたプレゼントを見るため包装を丁寧に開ける。

 中身は私の髪の色と同じ色の髪結いゴムが2つとハンカチが2枚だった。

 色紙を見てみると『卒業おめでとう!これからも頑張ってね!』という内容がそれぞれ書かれていた。

 私はそれをいつでも見ることのできる場所に飾っておくことにした。





 卒業式が終わるとすぐ春休みになる。

 でも、春休みだからといって特別なことはしないでいつも通り冬華と買い物に行ったり、イチャイチャしたりして過ごす。そうしているといつの間にか春休みが終わり新学期になって2年生になる。

 2年生になり、初めての部活動勧誘。

 この時、生徒会に「部員が集まらなかったら廃部にする」と宣言されたが、無事に部員が集まり廃部の危機を免れたのでほっとした。だけど入部したのが全員女子だったので部活のある日は冬華が僕のそばを離れなくなった。

 体育祭は去年は昴が彼女と過ごしたため1人で過ごしたが、今年は冬華と2人で過ごした。2人で二人三脚に出場して断トツの速さを見せたり、一緒に弁当を食べたりしていい思い出ができた。だけど、借り物競争の時に部活の後輩に呼ばれ、自分の席に帰ってくると冬華が怒っていて、それをなだめるのに苦労した。

 そして2年生初の定期テスト。

 結果は冬華が全教科90点を超えるというミラクルを起こした。

 嬉しがっている冬華に僕は「ご褒美なにがいい?」と聞く。

「急にどうしたんですか?」

「冬華、三学期の定期テストの結果が返ってきた時に言ったじゃないか『次のテストで90点以上の科目があったらご褒美をください!』って。忘れたのか?」

 僕が言うと思い出したのか冬華が「あ…」と言って持っていたテストの答案を床に落落として俯いて僕に聞く。

「なんで、覚えてたんですか?私、宮都に言われるまで忘れてたのに…」

「そりゃ覚えてるだろ。彼女が言ったことなんだから」

 僕が冬華に答えると冬華が顔をあげる。

「なんで泣いてるんだ?!僕、何か冬華が嫌なことしたのか?!ならあや「違います!」」

「違うんです。嬉しんです。覚えていてくれて」

 そう言うと続けて

「私が欲しいご褒美は今じゃ無理なんです。だから、その時になったら宮都から言ってください」

 と言われた。

 そのあとのテストも冬華は全教科90点以上をとり続けた。


 そんな1年もすぐに時間が過ぎて由希先輩の卒業の日。由希先輩は『大学に行く』と言っていたので部員たちと相談して色紙と花束の他に『大学でも勉強頑張ってね』という意味を込めて勉強グッズをプレゼントした。

 由希先輩は綾川先輩とは違ってその場で泣いていた。

 由希先輩の卒業から1年があっという間に過ぎ、僕と冬華が卒業する日になった。

 卒業式が終わり、みんなが帰ったあとの教室で僕は冬華と2人きりになる。

「なあ、冬華。僕さ、あの時冬華が僕に言った『私が欲しいご褒美は今じゃ無理なんです。だから、その時になったら宮都から言ってください』の意味を自分なりに考えてみたんだ。そうしたら、1つの答えを思いついたんだ。それは間違ってるかもしれない。けれど言うね」

 僕は1度深呼吸してから

「冬華、僕と結婚してくれ」

 と僕が言うと冬華が涙を浮かべて

「宮都、正解です。私の欲しかったご褒美は宮都からそう言われることだったんです」

 そう言うと冬華が続けて

「宮都、不束者ですが末永くよろしくお願いします」

 と涙を浮かべながら嬉しそうに答えた。


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