第22話 人によっては自分を守るために偽の性格を作っていたりする
運び終わり、教室に戻って来ると、
「あの、ここに手が届かないので、宮都君ここにクワガタの折り紙を貼ってください!」
海藤さんが「ありがとうございます!」とお礼を言うと作業に戻った。
「宮都様が海藤さんに好意を持ってないのはわかるんですが、なんか変な気持ちがします」
冬華が戻ってきた僕に言ったので、安心させるために椅子に座り、冬華を膝の上にのせて頭を撫でた。
「あ、安心しました!なんか、恥ずかしいです」
と言ったので膝の上からおろす。
「あ…」
と声を出して寂しそうな顔になった。だが、僕もやっていて恥ずかしかったので、頭を撫でるだけにした。すると、嬉しそうな顔になった。この時僕は冬華にケモしっぽをぶんぶん降って、ケモ耳をぴこぴこ動かしている幻覚が見えた。
そんな感じで冬華と過ごしていると、綾川先輩が鬼気迫るような顔で
「なぁ、鷲野さんを見なかったか?」
「由希先輩ですか?見てないですよ?どうしてですか?」
「文化祭で出す小説をまだ受け取っていないんだ!」
「なら僕も探します。手分けして探した方が早いですし」
「ありがとう。私は女子トイレとか宮都君が入れない場所を探すからそれ以外の場所を探してくれ」
「わかりました」
と言って由希先輩を探す。
だが、体育館倉庫や、部室、空き教室にもいなかった。綾川先輩は女子トイレや女子更衣室、保健室にもいなかったらしい。
考えを巡らせていると
「そういえばなんだけどさ宮都、なんか黒髪の顔にほくろがある女の人が屋上の方に行ったぞ」
と
「ナイス!昴!今度何かおごる!」
と言うと走って屋上に向かう。教室から「あそこのラーメンをおごってもらお!」と嬉しそうな声が聞こえた。
走って屋上に向かうと、泣いている
僕が近づくと由希先輩が気が付いて話しかけた。
「あ、宮都くん。どうしたの?」
「由希先輩がどこにもいないと綾川先輩が言っていて、心配したから探していたんです。」
「心配かぁ。噓でしょ。私がいなくたってクラスメイトは誰も私のことを気にかけていなかったでしょ?宮都くんもめんどくさいとか、邪魔とか思っているんでしょ?」
「そんなこと思ってないぞ?」
「嘘つき!」
「嘘なんかじゃない!だったら僕は由希先輩とご飯も食べてないし、部活なんて入部して4日でやめてるよ!なあ、由希先輩。あなたのことを聞かせてください。全部受け止めますから。」
僕が言うと、由希先輩が
「長くなるから、隣に座って」
そう言ったので隣に座る。するとぽつりぽつりと話し始めた。
「私ね、クラスではぶられてるんだ。理由はわからないけど。1年生の夏休み明けからかな?私を無視したり、いない存在のように扱ったり。でも、耐えられた。友達がいたから。でも、その友達は文化祭前日に「あなたと友達と思われたくないから、今日から友達止めるね?」って言われてから、私は耐えられなくなった。でも、親には迷惑をかけたくなかった。だから、文化祭の時、学校に行ってトイレに隠れてた。そして、家では無理して笑ってた。もちろん、宮都くんと過ごしてた時の性格は素ではないよ。自分で作ったの。そして、話は変わるけどさ高校2年生ってさ修学旅行あるの知ってるよね?その班を作っている時にさ私、あぶれたんだよね。まあ、理由はわかるよね。そして先生に無理やり班に入れさせられたんだ。その時にさ、「鷲野さん、休んでね?邪魔だから」って言われてさ。必死に我慢したよ。泣くのを。そして、思ったよ。「私はいらないんだ。私は邪魔な存在なんだ。」って。ねえ、宮都くん、私どうしたらいい?」
僕は由希先輩に体を向けて話す。
「なんで親に話さなかったんですか?」
「迷惑をかけたくないって…」
「その認識が間違っています。親には迷惑をかけてもいいんですよ。特に由希先輩のような迷惑は。僕の妹もいじめの被害にあった1人なんだけどさ、『なんで話してくれなかったの?』って聞いたらさ『迷惑をかけたくない』って言ったんだよ。それを聞いたとき僕の両親はね、怒ってた。なんで早く言わないんだって。だから、由希先輩の親に話してみてください。あと、辛かったらすぐに逃げてください。その現実から全速力で逃げてください。いじめの勝利条件は逃げることだと僕は思います。そして、素の由希先輩を僕に見せてください。僕は由希先輩のことはいらないとも、邪魔だとも思いませんから」
僕が言い終わると
「少しこのままにさせて」
と言って僕の胸で声をあげて泣いた。辛かった日々の思いを吐き出すかのように。
そして「頑張ったな」という思いを込めて頭を撫でると、泣き声が大きくなった。
泣き終わると、
「ごめん。宮都くんの大切な時間を…」
と謝ろうとしたので
「いえ、いいんです。素の
と言うと
「そっか…えへへ」
と笑った。
教室に僕たちは戻る。
教室に帰ると、
「今日は許してあげます。次やったら、1日買い物に付き合ってもらいます」
と言ってきたので「了解した」と僕は言う。
そのあとすぐに昼ご飯の時間になり、由希先輩がきた。
「宮都く~ん、ご飯一緒に食べよ?」
と誘ってきたので「いいぞ、今行く」と由希先輩に言おうとすると
「宮都様?!由希さんに何をしたんですか!いつもと言い方がちがうじゃないですか!」
と言って取り乱していたので
「それも説明するから、一緒にたべるぞ。冬華」
と僕が言うと
「説明してくださいね?」
と念を押すような感じで言ってきた。
今日は食堂に行って昼ご飯を3人で食べることに。
冬華に由希先輩のことを説明すると
「よく今まで頑張りましたね。でも、もう無理はしない方が良いと思います」
冬華が優しい声で由希先輩に言うと
「安心して。もう無理しないよ」
と由希先輩が言った。
ご飯を食べ終わると唐突に冬華が
「宮都様はかっこいいですよね。私のことを命を懸けて助けてくれたり、由希さんのことを救ったり。なんでそんなことができるんですか?」
と聞いてきたため
「冬華を助けたのは、冬華を見捨てて助かったとしても僕は後悔をしていたと思うから。そしてその後悔は一生残ると思ったから。由希先輩を助けたのは、僕の妹みたくなってほしくなかったから。楽しい学生生活を送ってほしかったから。まあ、僕のエゴだけどね」
僕はそう答えると、
「宮都様は優しすぎるんですよ。全く。まあ、そこにも惚れたのですが」
「そうだよね!そこがいいよね!」
そう冬華と由希先輩がいうと2人は同時に
「「LETTERのID交換してください」」
と言う。すると
「「あははは!」」
と2人して笑ってた。
そして
「暇なときは宮都様の話をして盛り上がりましょう!」
と冬華が言うと
「うん!いいよ!毎日でもいいよ!」
由希先輩が言う。
「僕の何の話をするの?」
気になったので聞いてみると
「秘密です!」
「教えないよ!」
と冬華と由希先輩が言う。
冬華と由希先輩はチャイムが鳴るまで主に僕の話で盛り上がっていた。
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